仁義なき語らい
『マスター、お疲れ様でした。 町に被害はありません。
動力機関を停止します』
「アリス、稼動は続けて。 ……どうも嫌な予感がする。 現在の出力は?」
『是。 ただいまの出力は40%。
30%を切ると魔力放出型飛翔翼他の起動が困難となります』
かなりきつい。
これでもし他の魔物が発生でもしたら、戦いの最中にも動けなくなる可能性がある。
といって、動力機関を停止すれば再起動すら出来なくなる以上、このまま限界まで稼動させておく方が良いだろう。
「アリス、周囲に魔物の反応は?」
『否。 周囲の魔力反応はそちらの2機のドラグーンのみ』
「了解。 取りあえず安心だね。
っと、そちらの2機は無事かな?」
そこには、どことなく懐かしい2機のドラグーンがいた。
先ほどまで森林竜と戦い、満身創痍となっている赤いドラグーン。
かなりボロボロで立ち上がる事すらできないくらいに各部が原型を留めていない上に装甲もかなり交換されてしまっているが、特徴的な胸部装甲のデザインと地面に突き刺さっている大剣を見る限り、近接特化のクレイモア系列ドラグーンのように見える。
また、もう1機の白いドラグーン。
こちらは、とにかく目立つ魔導兵装、「賢者の外套」を装備している。
防御力がないものの、発動時のエフェクトがやたらカッコいい厨向けの装備として有名な魔導兵装だ。
作成にレア素材がかなり必要であるため存在数自体が少ない希少装備だ。
むぅ、コレクションとして手に入れたかったんだよなぁ……。
こちらのベースはナナツサヤ系列と推測。 重火力の魔導特化だから、今回は出番がなかったという感じだろう。
と、2機それぞれのコクピットハッチが開き、中から騎士が出てくる。
「おぉい! 助かったよ! 良かったら顔を出してくれない?
直接礼を言いたい!」
赤いドラグーンから出てきたのは20台後半の赤い髪をした女性だ。
背が高く、そしてタンクトップがはちきれそうな、そのお胸がちょっとうらやましい。
……いや別に、ボクは小さくてもいいんだよ? このボクの姿をキャラメイクしたの自分だし。
ただ実際、自分で揉んでみると大きい方が揉み応えがあったかな、とか思ったりしたくらいなもので。
あと別に、エステルに抜かれそうで危機感を覚えてるとか、そんなんじゃない。
もう一機の白いドラグーンから出てきたのは青白い顔をした魔法使い風の男の人だ。
長い金髪で、ドラグーンと同様に白いローブを着ている。
「赤と白。 この2機がドランさんの言ってた仲間のたちかな?」
『是。 恐らくそうでしょう。 如何致しますか? 敵意はなさそうですが』
「ハッチを開けて。 礼には応えよう」
『是。 念のためお気をつけを』
ゆっくりとハッチが開き、目の前に夜の草原が現れる。
アリスが胸元まで手を寄せてきたので、そちらに身を乗り出してコクピットの外へ身を晒した。
「お疲れさまー、中の人は無事で良かったですー!
時間稼いでくれたおかげで間に合いましたよー!」
笑顔で手をブンブン振りながら、少し声を張って二人に挨拶をする。
ふふ、年相応に可愛らしいしぐさだってできるのですよ。
人付き合いは初対面時の印象から始まるという。
あざとすぎない程度の媚びと萌えで好印象ゲットです!
「な……! こ、子供!?」
警戒されました。
世の中はうまくいかないようです。
「いやぁ、命の恩人に対して失礼したね。 ナリは小っこくてもエルフなら納得だ。
アタイはリリアナ。 改めて礼を言うよ」
「……コルネリオだ。 感謝する」
「ユーリです。 リリアナさん、あなたの時間稼ぎのおかげで母と妹を守れました。
こちらこそ改めてお礼を言わせて下さい」
ペコリと頭を下げる。
実際の所、リリアナさんがいなければ森林竜は町まで到達し、少なくとも外壁付近にはかなりの被害が出ていたことが予想される。
「ところで、お二人はドランさんの仲間ですか?」
出撃間近にドランさんにお願いされた、赤と白の変なドラグーン。
ボクには見慣れたものだけど、確かにこの世界の基準で言えば変なドラグーンに相当するだろう。
ロボットなのにローブ着ているとか、ね。
「ユーリはドランの知り合いかい? アタイたちは、元々ドランと同じPTだったのさ。
……例のお触れで、アタイたち3人が騎士団に徴兵されて解散しちまったけどね」
「3人?」
「あぁ。 この前一人は死んじまった……それもみんな、あのベルファウスの野郎が!」
「……リリィ。 初対面の子供の前だぞ」
「っと、悪い悪い! まぁ、そんな感じさね!
ユーリはあいつに色々構われてんだろ? アイツ、子供が好きだったからねぇ!」
そりゃドランさんが騎士団を嫌いなのもうなづける。
しかし、ドランさん子供好きなのか。 色々教えてくれたりして、面倒見の良いおっさんだとは思っていたが。
……まさかとは思うが、ロリコンではないよね?
と、ボクの表情を読んだのか、リリアナさんが豪快に笑い出した。
「アッハハ、大丈夫大丈夫! アイツに幼女趣味はないよ!
文字通り子供が好きって意味さ。
ま、ドランが気に入るってことはユーリは悪い子じゃないってことだ。
アイツの人を見る眼は節穴じゃないからねぇ」
一旦言葉を切ると、リリアナさんの表情が硬くなる。
「……ユーリ、あんたのドラグーンはエルフの秘蔵品かい?
アタイのゲゼルも発掘品でね、そこらのドラグーンよりよっぽど強いんだけど……
正直、アンタのドラグーンほどのものは見た事がない。
今そんなのを作れるとしたら、長い寿命で魔神戦争以前の技術を伝えているエルフかドワーフくらいなもんだ」
どうやら、魔神戦争以後技術レベルの衰退が起きたということらしい。
今の汎用機が現実世界に比べスペックダウンしているのも、恐らくその辺りが原因なのだろう。
となると、エルフの隠れ里に向かうのを目的としたのは正解だったかもしれない。
恐らくは、王国専属の技師でもセラサスの整備を行うことは出来ないのだろうから。
「ボクはエルフですが、記憶喪失なんです。
セラサス……ボクのドラグーンは気付いたら一緒にいました」
「そうかい、そりゃ苦労しただろうね。
さて、出来ればこのまま町に戻ってアンタたちと朝まで飲みたい所だけど……」
「……リリアナ、子供相手は寝るのが仕事だ」
「コリー、この子はエルフだよ? アタイよりよっぽどババァかもしれないじゃないか」
ぐ……気にしている所をつかれてズーンと来てしまった。
きっとまだ見た目どおりの年齢のはずだ!
と、再びリリアナさんの表情がまじめなものとなり、躊躇うように口を開いた。
「……助けてもらってなんだが、ユーリ。 アンタはこのまま町に帰りな。
森林竜はアタイたちが倒した事にさせてもらう」
あまりの無茶な要求に、流石のボクも唖然としてしまう。
と、背後からガシャッ! という稼動音が聞こえ振り返ると。
「アリス、やめろ!」
セラサスの右腕が展開し、リニアガンの照準をリリアナさんに向けていた。




