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異世界の空に桜舞う~幼女エルフのドラグーン無双伝~  作者: RULIA
第1章 穏やかな日々、そして・・・
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そのとき不思議なことが起こった

「……え?」


 戦場に似合わない、可愛らしい声がボクの口から漏れる。


 さっきまで絶望の表情を浮かべていたカレンさんも、他の村人たちも皆口を大きく開けて、茫然としている。

 恐らく、サーバントに乗っている騎士もそうだろう。


 なにより、ボク自身がそうだった。


「うわぁぁぁん! お姉ちゃんが! お姉ちゃんが死んじゃった!」


 ボクが飛び出してから号泣し始めて、こちらを見ていないエステルの泣き声が空しく響く。

 と、様子がおかしいことに気づきこちらを見ると、ボクを指さして言った。


「お姉ちゃんが化けて出た!」


「いや、死んでないし」


 可能性としてはみっつ。

 まずひとつ。 奴が光弾を外した……わけではない。

 明らかにボクを中心としてクレーターが出来ている。 ボクの足元の地面だけが無事だ。

 これは、直撃したに違いない。


 ふたつめ。 ボクは死んだ。

 だから生きてるっちゅーに。


 みつめ。そのとき不思議なことが起こった。

 うん、これだな。 ってそうじゃない。


 少し混乱していたが、ようやく理由に思い当たる。


 今のボクは、転生したエルフ幼女だ。

 魔法が使えない、エルフ幼女だ。



 魔法が使えないだけ(・・・・・・)の、ただのエルフ幼女だ。

 ということは、それ以外の能力、つまりステータスは生きているのではないか?



 ボクのエタドラでのステータスは、ドラグーン騎乗を前提として完全にフィジカルを切り捨てていた。

 アバター用の物理スキルや魔法も一切捨て、ドラグーン向けのスキルや魔法に集中して取得をしている。

 そして、大会に優勝していたことから察してもらえるように、ボクは上位プレイヤー……現レベルキャップのカンスト組である。


 ならば、レベルアップ時のステータスはどこに(・・・)行ったのか?


 その答えがこれだ。 ボクのステータスは脳筋ならぬ、逆脳筋。 INT・MND極振りだった。


 ドラグーンは、操作にプレイヤースキルが求められる代わりに魔法を極める事で性能補正が発生するからこそのステータス振りだが、エタドラも他のゲームと同じく、INTとMNDの値がアバターのMPの最大値や魔法に関わる攻撃・防御・魔法の成否判定にも影響する。


 つまり、アバターの限界に達したステータスが素でサーバントの魔法をレジストした、というのが真相である。


「と、いうことは、だ」


 戦闘中という事を思い出したサーバントが改めて攻撃態勢をとる。

 砲口が青く染まる。 どうやら、光と水、あるいは氷属性を切り替えて撃てるタイプの兵装だったようだ。


 ボクは回避行動をとらず、そのまま魔法の砲撃を受ける。

 着弾と同時に冷気が放出され、ボクの周りの空間が氷柱に包まれる。


 しかしそれも、ボクが手を振ると砕けて散り、キラキラと破片が空に舞う。

 流石に光の魔弾より威力の高い氷の魔弾は少々痛かったけれど、怪我に至るほどではないようだ。


『な……なんなんだ、なんなんだよお前はっ!?』


 混乱した騎士は、恐慌に陥ったようでボク目がけて魔法を乱射してくる。

 それに対し、ボクは砲撃の嵐の中、ゆっくりと相手に近づいていく。

 なぜなら、自分のステータスに気づくとともに、一つの勝ち筋を見出したからだ。


 もはや目の前は青と白の光に包まれ、なにも見えなくなってしまった。

 稀にレジストを抜けた魔法がボクの身体を傷つけるが、かすり傷以上のダメージを与えることはできない。


 そうした中、遂に一発の氷魔弾(アイスバレット)がレジストを抜けボクの身体に直撃した。

 本来ならば、そのままボクの身体は完全に氷漬けになってしまっていただろう。

 しかしそれはボクの身体を青く包むと、胸の前に集まって青い光球を形作る。


「……お返しだ」


 ボクの頭くらいの大きさになった光球は、突如サーバント目がけて飛び出す。

 光球に気づいたサーバントは手でそれを受け止めようとするも、大きく軌跡を歪めた光は胸の中心、コクピットへ向かってさらに加速。

 そのまま青い光がサーバントに接触すると、突如としてとてつもない冷気を発し、瞬時にサーバントを包み込んだ!


 そのままメキメキ……! という鈍い音と共に、全身を氷に包まれたサーバントの各所が潰れ、へこみ、砕けていく。


 氷のオブジェに全く動きが見えない事を確認し、ボクは後ろを振り向いた。

 そして……


 ……パキン!


 聞こえてきた音をきっかけに、巨大な氷像へ連鎖的にひび割れが走っていく。

 全体に細かなひびが入った頃、ひときわ大きな破砕音が響くとともに、サーバントごとその像は崩れ去った。




「ゆ、ユーリ! 一体、何が……」


 カレンさんが驚きながら駆け寄ってくる。


 エステルは喜んで飛び跳ねているが、他の皆は空に舞う氷のかけらを見つめながら、唖然としている。

 それはそうだろう、巨大な体躯と凶悪な破壊力を持つサーバントを、子供が一蹴してしまったのだから。


 ボクが何をしたのか。

 それは、スキルを使ったのである。


 しかし、ボクはスキルを使えない(・・・・)。 正確には、スキルを使うためのショートカットキーを使えないのだ。

 だから、ここで使った……いや、発動したのはパッシブスキル。 自動発動型のスキルであるマジックカウンターだ。


 マジックカウンターとは、相手の魔法攻撃を受けた際に確率で無効化する効果を発動する。

 そして、受けた魔法の威力に自分の魔法攻撃力を上乗せして同属性攻撃を撃ち返す必中攻撃だ。


 つまり、相手の氷魔弾(アイスバレット)は、カンストしたボクの魔法攻撃力を上乗せされた上でそのまま反射されたのだ。


 ステータスがゲームと同等だったことから、ボクはパッシブスキルもそのまま有効であると考えた。

 であれば、使い方のわからないアクティブスキルと異なり、条件を満たせば勝手に発動するパッシブスキルは使えるだろうとも。

 結果、上手くいったという事だ。



 ちなみにこのスキルはぶっちゃけゴミスキルであり、ボクが持っていたのもスキルツリーの派生先であるアクティブカウンターを取る為である。

 ゴミスキル扱いされる理由だが、発生率が低いのはさておき、同属性で攻撃を返してしまうため自分の攻撃と同じ属性に対し吸収スキルを持つモンスターの多いエタドラでは、攻撃される度に相手が回復してしまうという事故が多発したためである。


 そして、派生先のアクティブカウンターも相手の攻撃に併せ自分で対象の選択から発動指示までを回避しながら行わなければならず、当たればでかいが現実的ではないということでいわゆるロマンスキルの部類に相当するのも一つの要因だ。

 そんなわけで、そもそも取得する人が少ないのだ。


 ちなみにボクは持前の反射神経で実用出来そうだったのでアクティブカウンターまで取って切り札にしている。

 パッシブの方も、対サーバントではせいぜいが無効どまりの耐性の機体が多いのと、回避中心の戦い方なのでカウンターに伴う無効化の発生を目当てに敢えて外していなかったのだ。



「勝ったよ!」



 ピースサインをしながらカレンさんに飛びつく。

 少々ドヤ顔だったのは勘弁願いたい。



 もちろんこの後、無茶をしたことで滅茶苦茶怒られた。


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