第一花 出会い
高槻中学漫画研究部のKaminomiWorldとZ_P;(TwitterID)のリレー小説(合作?)です。異世界ハーレムバトルとのことで…ちなみに後者の方はこのサイト内で一位を取った折り紙つきの者です。前者は初音ミク動画(イラスト・作詞作曲)をやっています
成人の儀の日。
『敷田光助』それが俺の名前だ。そしてそれを呼ぶ、冴えない男・川早智則。
「お前ぇ、成人したけどやっぱハンターになんの?そんなら一緒に行こーぜぇ」
相変わらず鬱陶しい。しかし、ここで無視するといつものごとく髪を引っ張ってきて、こんな大事な日に恥を晒すことになるので素直に返答した。
「まあな、貴族に与えられた教育義務だからな。多分ソロでやると思うよ」
「そうか、俺はお前の父さんの下へ就くよ。何かあったときは連絡くれよ」
別れ際のような会話だ。
よく思い返すと、この選択が俺をバッドe(ry もとい、死亡(重傷)フラグだったのかもしれない。なんせ一人立ちしてすぐに財布すられるは、袋叩きにされるは散々だった。そんな俺を見かねた父は、
「お前も智則君みたいに諦めて俺の下に就け」
「あんな退屈な事する位ならまだハンターやるよ」
死亡グラフだ。分かっていた、自分が何にも出来ないということを。でもどこかで思っていることがある。
「自分を変えたい」
そんな思いが死亡フラグと分かっていながらも、分岐点を探す自分が居た。
だから口答えた。
「俺はもう一つの未来を探すことにしたんだ」
と。中二病みたいだ。
ハンターギルドに登録し、親に貰った金5万フレッシュレンドを手に装備を買いに幼馴染みの女友達の父の下へ。彼は鍛冶屋であったが年なので既存の作成した武器を売っている、という訳だ。
彼が作る武器は…一流だ。
「ねぇ光助、これ持っていきなよ」
那美がテーブル越しに差し出してきた。反射的に受け取った剣の柄に『nami』と刻まれてあった。
「手作りなのか」
と問うと、
「だって今日は光助の誕生日でしょ。私からのプレゼントだよ、光助」
とほのかに赤く染めて微笑んだ。
「光助、その…あの…たまには帰ってきてね」
「はっ?拠点ここなんだけど…」
「!!!っ…バァかぁ~!」
陸上選手にも劣らないスピードで走っていった(パンチラ付きで)。
「っ…なんだかなぁ~。しっかり者なんだけどなぁ…」
俺の拠点はここ、アミカビリティ・ゲートから程近い町「ダムディスト・アルバンスプロール」である。唯一俺が住んでいた地球との接続が為される所である。
「ディッフェレント・フロム・ザ・ワールド」つまり研究チームはこの異世界「オデュッセイア」の生態に合わせるように人間を簡易改造出来るシステムを開発した。
まずは環境の適応。異世界というのは言ってしまえば宇宙服なしで月に行くようなものだ。
もう一つはオデュッセイアで言う「バトル・アビリティ」である。それはざっと言うと、ぶっちゃけゲームのスキルのような物である。これは任意で発動する物と、パブシックスキル、いわゆる自動発動スキルがある。また、ある系統の武器の使用値を一定以上上回ると、アーティファクトが武器に宿る。
俺の家系は短い期間の間に敷田流という流派を作り出した。全系統の武器を使い、メイン武器を決定するというもの。
しかしソロでやる上、那美がプレゼントしてくれたので、俺はnamiを使おうと思う。父の反対を押し切ったのが決め手だったのだが。
「さて、次は防具か」
那美の家の扉を開け、俺が外に出た時痛切な声が聴こえた。
「待って光助、防具もあるの…!」
全力で走って、家の裏に全力で戻って隠れていたのだろう。
「これ使って、私が作ったの。私を…私で一杯にしてほしいから…だって私は…!」
「待て!それ以上言うと俺が出れなくなる…とにかくありがとう」
全力の微笑みを那美に振った。その後、無言状態が少しの間続いた。
「異世界か…」
俺は拠点から出発し、練習をハートヒルで三時間済ませた後、父から命じられた未開拓地「レフト・アフター・ビフォー」への道中に居た。ネトゲ「テイルズシリーズ」とさほど変わらない景色。
区別のつく道が敷かれ、回りに広がる草原と青い空。先には見たことのない建物等が見えている。たまにモンスターに遭遇し、その度に斬る。今居る世界「オデュッセイア」の仕様で腕のブレスレットからウィンドウが出て、経験値が貯まる。
今日も同じことを繰り返していた。
が、突然警告音が鳴り響く。
「どうしたんだ、これ…」
状況が把握できず、慌てふためく。
ウィンドウはブラックアウトされ、表示されたメッセージは、
「EEROR MASSAGE:Clue to the mystery of the world which the person has――」
「一体何なんだよ…何が起こっているというんだ…」
一言言えたのはそれだった。心底驚き、本当は怖かった。
ソロは本当に怖い。恐ろしい。何があっても頼れる人がいないことが。
(うっ…!)
ある一点から四方八方に光が反射されるのが辛うじて見えた。しかしオデュッセイアでの光は、地球人にとって強烈らしく、DFWでの対処が遅れていたため俺は意識が遠のいた。
声が聞こえた。
甘くて、女の子のような。
「ねぇ、起きてよ光助!」
俺の…名前?
思わず目を開けると、彼女の顔が、息遣いを感じ取れる位置にあった。
逃げたかったが、思うようにいかない。そう戸惑いを泳がせていると、周りの景色は止まったままなのに、彼女の輪郭の影だけが濃くなっていった。
気づいたときにはもう唇を奪われていた。
「ふふ、可愛い~!うぶだね、君。もしかして初めて、だった?」
俺は口を開けたままで、舌を回せなかった。
「ははは!そうか初めてだったのか、ごめんね~。あ、名乗ってなかったね。私はリリー、さっきのキスは挨拶代わりだからね」
どうして俺の名前を知っているのか疑問だった。
(ひょっとしたら俺以外にも被験者がいるのかもしれない…)
「あれ、もしかして顔赤い?」
「い、いや、顔を赤くしたのは男のさがだ」
「あれ、刺激的過ぎた?もう一回…する?」
「っ…!」
「冗談だよ、ははは、か~わ~い~い!!」
くっ、ちょっと期待してしまった。見知らぬ相手…。何故か頭に引っかかるな…。
「あっ、そうか。私のこと名前しか紹介していなかったね。え…っと、二流ハンターって言ったらいいのかな? それよりこんな辺境にどうしたの?まさかソロ攻略??」
「さぁな。助けてもらったお礼はする。ありがとう。それじゃあな」
「ちょっと待ってよっ、お礼するんでしょ? 私を連れてって!」
うわ、しまった。言質取られた…。
「あ、おはようとお休みのキスはしてあげるよ」
「しゃーなし、ソロは心細い。俺より上の二流なら何かと助かる。でも今日は遅いから野宿の準備」
「それじゃあよろしくね。お姫様は寝て待つものなの!」
お、お前…パーティー組んだ理由は面倒だっただけか…。
「なんだか姉を思い出すな…」
「いま何か失礼なこと言わなかった?」
「いや、別に。こんな媚びてくるお色気むんむんの女性は俺の姉にいた気がするなぁと思っただけだ」
「もうひどいよ~まぁ君のお姉には負ける気しないけどね」
お姉…独特な言い方だな。あいつにも姉妹いるのか…?
「あ、いま『姉妹いるのか?』って思ったでしょ、顔で分かるよ、光助。うん、そうだよ。私には姉のミルルがいるの私とは正反対だけどね」
「なら姉ゆずりじゃないのか。ああよかったよかった」
「また失礼な! どうしてそんなんなのかなぁ」
「俺の性格上い方が無い事だろ」
ああ寝たい。そろそろうざったい。そろそろ切り上げるとするか。
「俺はそろそろ寝るぞ。ソロだから寝袋は一つしかないんだから頑張れ」
俺はバックから寝袋を取り出し、木陰へと行きセットした。
「私はどうしたらいいのよ」
「分かるだろ、一人で寝ろ」
「…ちょっと貸して」
俺の前に立ち、両手を前に出し、呪文を唱え始めた。寝袋がオーラに包まれた否や、大きさが二倍になった。
「今のは私のMS、便利系スキルに属する『プラクティカル』なの。私はアビリティの他に便利スキルも習得してるの。つまり君は私といたほうがいいってことなの。という訳でお休み…」
すでに布団に入られ、寝息を立て始めていた。寝言を漏らし、口を開けていたが、そんな様子は幸せそうだ。
そろそろ体力の限界が来ていた。眠気が襲う。女性と共にベッドに入るということを気にする間もなく、俺も自分だけの夢の世界へと旅立った。
生まれつき体が弱かった…とかそう言う訳ではない。しかしデュ○ラの世界一負けしている人みたいなことになってしまった。要は、筋肉が活性化しまくった。
そんなときに父が心配してあるゲームを勧めた。それが異世界の発見の元になった。しかしそのゲームが政府が実験していた、VRMMO的なもの、つまりβテスターだった。つまり、異世界発見も政府に漏れ、必然的に父である敷田正人になったのも必然である。
これがそう、幼少期のトラウマである。
父・正人が思いやりがいくらいいとしても、捨て子であるのには変わりはない。だから九歳・小学三年生の頃、VR「イマジネーション・デイドリーム」にアカウントを作り、投入された。
以下IaD(Imagenation and Daydream)と呼ぶが、これは最新技術の結晶、「ファンシーカンパニー」社が世界中の関係性を保つ、取り戻すために作られた非現実的仮想世界で、つまりは死者が出ないという最大の長所を持つ。分かるだろうが、戦争が激しくなる世界でIaDは大きな成果を残した。
詳しくここでは語れないが、DFWの総帥に日本人がなっている時点で、平和が保たれているのは確実だということだ。
IaDそのものは仮想現実で、五感をサーバー上に送り込み現実と変わらないような生活を送れる場所。一つ違うのは、そこでは何でも出来てしまう事。
俺がIaDでのゲーム「クルエル」で、元々の精神力が強いせいか、マキシミムクエストへと踏み入れる機会を得た。
最強と呼ばれるモンスターが待つとされるもう一つのクエスト。ファイナルクエストの先にあるからマキシミムと呼ばれている。
俺は受注し、その場所へと向かった。
相手・アナザーボスの名は「ノー」、特攻は「クリア」で、すべての存在する物体の透明化を図れる。そのときの俺のスキルは「無効化」で、自分のレベルに併せて強化されていくタイプで相手のスキルの無効化が出来る。
相手のレベルは俺のよりの上なのは分かっていたので、伸ばしていた俊敏性を主として、音で判断し、斬った。そして、辛勝。
残りHPも危険値へと踏み入れていた状態だった。そしてドロップアイテム、戦利品の中でひときわ輝く正八面体があった。詳細を開くと、
「Congratulations! Thank you for playing the game. Also you have a light to know. But it will be know all your world___massage by Endymion」
と書かれてあった。
気になったのはエンデュミオンという言葉と「your world」である。エンデュミオンという語はそもそも存在しないし、「your world」という表現はしないはずなのだ。普通は冠詞の「the」である。
俺は考えた。「この仮想世界は地球人のみが利用しているわけではないのではないか。即ち、このクエストは後付けられたもので、地球外生命体によって作られたものである」という理論。
それが確信できたのはログアウト後のテレビのニュースであった。
日本の農耕地に隕石が落下、しかし被害はなく異次元空間と思しき風景が見えるゲートが開かれていた…というニュース。これが異世界発見の第一歩となる事件であった。
俺が子供の頃に思い描いた空想、そのもの。それからDFWが結成。今にあたる。
「…光…」
声が…聞こえる?
「…光助! 起きろ、光助!!」
「っ! 知らない天井!?…いや天井はないか…」
「水汲んで、ご飯作って」
(ガサゴソ…)
光助はカンパンを取り出し、それを差し出すように見せた。飯を作るのが面倒なときに役立つ一人旅のお供なので、ある。
「…レディに食べさせる気?」
怒った表情でこちらに顔を向けてくる。
「すいません…」
決して可愛かったからではない、うん、ない。
「ふぅ、水くらい作れよ…」
やっぱり怒った顔のままだ。
「飯くらい作れよ、女の子なんだろ?」
不機嫌に不機嫌で返すしかないため、そのまま返した。
「要らないのなら一人で食べるからな」
言い過ぎたかな…すると、
「ねぇ作って、光助。光助の作った料理食べたいな~」
「何がいい…?」
うん、姉に似て女子力低いが、可愛い。危うくテイクアウトしかけた。気を引き締めよう…。
鍋に水を入れて、刻んだ野菜を煮込む。それにビーフジャーキー(?)と塩、コショウを入れる。
その他の調味料が無いため、シンプルなものとなったが、まぁ食べられるだろう。
今度味噌でも買おう。
ふと気になったので、女性には禁句のあることを聞いてしまった。
「リリー、歳いくつ?」
(ガシャン:皿の割れる音)
「あーあ、貴重な皿を…」
「光助、それ禁句」
「あはは、すまんすまん」
「本当に気をつけてよね、失礼しちゃうんだから」
本当にいくつなんだろう…。
「死にたいの?」
「…すいませんでした」
女は怖い。
普段より幾分かはましな料理はリリーに好評だったらしく、
「おいしぃ!」
と一人で半分以上食べましたと。
「リリー、近くに町とかないか?」
「う~ん…町? 集落的なものなら近くにあると思う」
「まぁとりあえず東の端『ゲートクリフ』を目指そう」
当分の目標は決まった。
「電気」たる「エネルギー」を発生させる発展都市「ゲートクリフ」。俺達(俺とリリー)はその場所へと向かっていた。
「リリー、後ろ」
俺は後ろに注意を促すように言った。
「ああ…」
木の陰に隠れていた、さっき出てきたモンスターを何の感情もなく斬り捨てる。体力と食料はもう限界なのだ。
「光助…カンパンない…?」
「お前が要らないって言うから俺が全部食べたよ」
「意地悪~…」
あのリリーが怒る気力もないなんてそれは相当危険な状態だった。
「やべーな、二人の共通ストレージにも食料アイテムがゼロに近い状態だぞ。塩しかない」
「それじゃあもっと喉が渇くよ…」
どっかにねぇかな、と周りを見渡していると、
「光…助…」
バタン、と人が倒れる音がした。
「リリー!」
栄養失調のサインが体に出ている。ハンターになる前に貴族学校で医学の端くれは学んだから一応知っていた。
「くそ、どうしたら…」
「何かお困りのようですか?」
「…君は?」
頭から足まで全体にマントを被った女性と思われる人が話しかけてきた。こういうパターンは高額請求とかが多いのでいつもは相手にしていないのだが、今回はリリーの安全を最優先に考えているため、応答した。
「こいつ…リリーが栄養失調で…」
「どれ、ちょっと貸してみなさい」
お姫様抱っこの状態から地面にリリーをゆっくりと降ろし、少し離れた。
「無効化系統の気は発していないようですね。大丈夫、安心してください。もう少し離れてください」
その人の言うとおりにしてリリーからさらに離れた。
「草の精霊よ、我に力を託したまえ。時の精霊よ、流れを読みたまえ。二つが交差するとき、治癒の道はいざ来たらん」
リリーとよく似た呪文を唱えて、また同じように両手を出していた。
「はい、治癒完了です。しばらくして目を覚ますでしょう」
「ありがとうございます、本当に助かりました。あの、お礼をしたいのですが…」
少し早口になってしまったが、言いたいことは言えた。
「いえ、お礼など私は称賛される立場にはございませんゆえ」
「いえでも…」
「大人の女性の言うことは絶対ですよ、光助君」
「どうして俺の名前をしっているんですか?」
「…あ、しまった。どうしよう…」
もしかするとで尋ねてみた。
「もしかしてあなたはミルル・キュリアさんではございませんか?」
心当たりはあった。しかし確信と呼べる段階まで踏み込んでいなかったため、不安はあった。
「ばれてしまっては仕方がないですね…」
彼女はフードを脱いだ。
ピンクの髪、しゅっとしたスタイル。リリーと少し違うのは青い目ではなく紫色の、おっとりとした優しそうな気品のよい女性だった。
「ではあなたはやっぱり…」
「はい、私がリリーの姉、ミルルです。君の事は妹から聞いていますよ。どうやらゲートクリフへ向かっているとのことで」
いつの間に連絡していたのだろう。少なくとも俺はそういった彼女の行動を見ていない。一瞬たりとも離れていないというのに。
「そうなんです。あの、町まであとどれくらいで着くんでしょうか」
「ここからさらに一時間はかかりますよ」
どうしようか。
「なんなら私の家に泊まっていきます? ていっても妹にとっては実家みたいなものですがね」
そうか、だからあの時…
「光助」
「なんだ」
「実は私、ここへ来たことが何回もあるの」
「どうして?」
「それはひ・み・つ。でも私にとってここら辺は故郷とも言えるかもしれない」
「そうなのか」
「だから道に迷ったときは私に聞いてね」
「ていうか、この自動追跡地図があるから迷うことなんて一パーセントもないよ」
「ゼロパーセントじゃないじゃん」
「…お前はそこまでして迷いたいのか、逸れたいのか?」
「私が詳しいってことを信じてもらうためだよ!」
「はいはい分かった分かった…。信じるよ」
そういうことだったのか。
「ではお言葉に甘えて。あ、でも背負っていかないといけないのか…」
そう、リリーは寝たままなので背負っていかなければならないのだ。
「それなら問題無用です」
ミルルは無詠唱でリリーを浮遊させ、体の傍へとつけた。
「では行きましょうか」