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白の魔法師と堕ちた俊英  作者: 夏目潤
第3章 蠢動するモノ
15/20

14:歪な歯車は回りだす

またしても一週間ぶりの投稿です。お久しぶりです。

テストが全教科返ってまいりました。泣きたくなりました。

しかも一週間後には模試があります。日本の学力社会は間違っていると思います。(唐突)

誰か私に知力と文才を授けてえええええ(ハイスンマセン)


※以下、前回までのあらすじ的なものです。

ローレとフィルがユーフォレア帝国に入国して二日目の昼、同じくエンベリー王国の魔法騎士団四人組(アルノルト、マーリ、リベ、ラミロ)も二人を追ってユーフォレア帝国に来ていました。いよいよ、魔法騎士団チームとローレ達が激突(?)します。


「おい、やばいってローレ、パル、逃げるぞ!」


瞬間的に踵を返し、人込みをかき分けて逃げようとするフィルを、ローレとパルは急いで追いかけた。


いつもへらへら笑っている彼の必死の表情は珍しい。ローレは通行人に足を引っ掛けてしまった。軽くあやまってその漆黒の髪を追う。


「どうしたんだフィル!一体向こうの通りに何があった」

「アルト君――エンベリーの魔法騎士団に見つかった」


エンベリー魔法騎士団。自分達を追っている者の名前が出たとたん、ローレは思わず上ずった声を上げてしまった。

ローレとフィルの深刻そうな様子から事態を悟ったのか、走ることに慣れていないパルが二人の少し後ろで息を切らせながら言った。


「まさか、見つかったん、ですか!?相手は、何人…」

「ざっと見たとこ4人、俺とローレの魔法で対抗すれば、なんとかならないこともないけど……くそっ、多分向こうに光ノ眼アンセルミンを持ってるやつがいる。ちょっと厄介な状況だ」


聞いたことがある単語だ。光ノ眼アンセルミン――確か昔魔法を教えてもらった際にフィルが言っていたはず。『魔力を肉眼で見ることができる特殊な魔法師のことだ』と。

ローレは必死に記憶を呼び戻す。そうだ、光ノ眼アンセルミンを持つ魔法師から追跡で逃げ切ることができるのはまず不可能、一番敵に回したくない相手だ、とも彼はぼやいていた。


その一番敵に回したくない相手が追手。これはとても最悪な状況なのではないか。ローレは改めて事の重要さを自覚した。


ようやくフィルに追いつくと、その横に並んで走り歩幅を合わせる。


「どこに逃げる」

「逃げることに囚われるなローレ、奴らの視界から少しの間でも消えてしまえばいい。そうしてじっくり策を練ろう」


フィルは焦燥の色を滲ませながら背後を振り返った。パルの少し後ろ――赤いテントの横にエンベリー魔法騎士団の鎧が見えた。「フィルミーノおおおお」という叫び声まで聞こえる。


「うわーもうしつこいなぁアルト君も…やっぱりあの時しっかり決着つけとくべきだったなー」

「知り合いか?」


フィルはローレと出会う前、王宮で魔法の研究をしていた。魔法騎士団の一人や二人、知り合いでもなんら不思議はない。


「ちょっと昔色々あってねー悲しいことに知り合いになっちゃったんだよ、まぁ根は良いヤツなんだけどね」


言っている間にも、そのフィルの知り合いと思しき男の叫びは近づいてくる。フィルは口の中でぶつくさ文句を言うと、背後を走っているはずのパルに声をかけた。


「パル、お前は俺達と別方向に逃げろ。奴らに顔を見られたらマズい」


急に話しかけられたからなのか、はたまたその内容に驚いたのか、パルは丸い目をさらにまんまるくすると、何か言いたげな表情を作ったが諦めたかのように頷いた。


「…わかりました。僕は、あそこの路地を左に曲がって、普通の通行人のフリします」


幸い、魔法騎士団らはまだ人混みのせいで顔を判別できるほど近くまで来ていない。パルを逃がすなら、今しかないと思ったのだろう。


パル・ファルトナーはエンベリー王国の商人だ。エンベリー王国から逃亡したローレとフィルに加担していることがばれればファルトナー家は被害を被る。今のように国を代表して堂々と商人の仕事をするのが困難になるかもしれない。彼自身にだってそのことは誰よりもよく分かっていた。商人は頭の回転がよくなければ務まらない。


パルは素早く路地に飛び込むと、走り去る二人に向かって微笑んだ。


「ローレさん無事を祈ります、後でまたお会いしましょう。フィル、捕まったりなんかしたら承知しませんよ」

「パルも、気をつけろ」

「分かってるよ、パル君」


必要最低限の会話だけを交わすと、ローレとフィルは再び前だけを見て全力疾走した。もう周囲に人はほとんどいない。いつの間にか市場のカラフルなテントは消えていた。ただ、こげ茶色に沈んだ無機質なレンガ造りの建物が静かに両側にそびえ立っているのみだ。


遠くから、罵声と絶叫が風に乗って響いてきた。罵声は、ユーフォレアの一般人だろう。エンベリー王国を非難する言葉が聞こえてきた。そしてそれをかき消すかのような絶叫。叫ばれる名前の主は隣にいるこの男――。


「あの男、よっぽどお前に執着しているのか?さっきからお前のことばかり呼んでいるぞ」


フィルは薄く笑って走る速度を速めた。ローレもそれに合わせる。景色が後ろに吹っ飛んでいく。


「逆だよ。アルト君はね、俺のことが気に入らないんだ。昔も今も口出しばかりしてきて…本当に呆れるくらい変わっていない」


やれやれと笑うフィルだが、彼からはどこか楽しんでいるような雰囲気が垣間見える。ひょっとしたら『アルト君』とやらは数少ない彼の理解者だったのだろうか。

と、急に視界で何かが光った。何かただならぬものを感じて流れる魔力で魔法陣を描き、急いで呪文を唱える。


防御ベルデ!」


ローレが呪文と唱え終わって結界を完成させるのと、すぐそばで小規模な爆発が起きたのはほぼ同時だった。

魔法自体の威力は高くない。だが、その衝撃で視界を奪うほどの粉塵が舞った。


「!」


そこに第二の攻撃が降ってくる。

それは、空からだった。


魔法で作り出された剣のごとく鋭い氷柱が、二人めがけて何本も降り注いだ。ローレは魔法陣に意識を集中させて結界を保つ。結界を張っていなければ、今頃はあれに貫かれていた。

ローレは攻撃が止むと結界を解いた。粉塵はもう晴れている。


彼女達が先ほど曲がってきた道から、新たに複数の気配が近づいてきた。

それを確認するとさらに細い通りを選んで疾走する。

前を走るフィルが、振り向いてその親指をつき立てた。


「ローレ、結界の張り方上達したね。ちょっと前までぐにゃぐにゃだったのに」

「私だって今のような場面では必死になる」


本当にこの男には緊張感というものが欠落している。もしもローレの結界魔法が失敗することを考えなかったのだろうか。結界魔法は、彼女の苦手分野なのに。


「それはよかった――うおっとぉ!?」


細い迷路のような道の曲がり角で、フィルは突然態勢を崩した。「どうした」そう言おうとした瞬間、彼女も同じくなにかにつまずいて大きく体が傾く。

ローレはなんとか態勢は立て直したものの、フィルは盛大に転んだ。頭を押さえて痛そうに立ち上がる。


「まったく何だったんだろう、赤くなっちゃっ――」


ごしごしと額の傷を乱暴に撫でる動作も、その言葉も、途中で停止した。

ローレも自分がつまずいた物を確認しようとして振り向く。――そして、凍りついた。


『ソレ』は、まるで暗い路地と一体化したかのように、そこに転がっていた。


だらりと投げ出された手足、ひゅうひゅうと風に吹かれるシャツの裾、虚空を見つめるかのように見開かれた目。大柄な体。


――一人の男が、路地に倒れていた。


ローレはふと、昔炭工場で働かされていた時のことを思い出した。


日に日に細くなっていった仲間も、ああやって最後は動かなくなったのだ。


目の前に倒れている男のように、最後は死んでしまったのだ。


そして、彼女達はその死体の顔に見覚えがあった。なにせ一日前会ったばかりである。


「……デムラン…」


昼食をとった店で絡まれて、魔法勝負を申し込まれた。何故か、魔法陣を無限に出現させて、ローレとフィルを驚愕させた。


その男の名を、ローレは静かに呟く。



心の奥底で、何か歪な歯車がゆっくりと回りだす、そんな音がした気がした。




登場人物紹介13

●ジェイク・ヴォルモント

通称『白の魔法師』として王に仕えていたが、同じく王の近衛兵であった『青の魔法師』ことマウリオ・エンベリーが王を暗殺したことにより、彼と対立する。その後、亡き王を支持していた貴族たちを味方につけ、マウリオ率いる反政府側と武力衝突するものの、敗北。『悪魔』と呼ばれ処刑された。二人の戦いは後に『二大魔法師激戦』と言われ、後世に語り継がれる。

年齢…享年41

好き…?

嫌い…?


何気にジェイクさんも紹介することを忘れていました。

私の中でマウリオさんとジェイクさんは『二大影が薄い登場人物キャラクター』と言われていじられています。

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