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白の魔法師と堕ちた俊英  作者: 夏目潤
第3章 蠢動するモノ
13/20

12:玉座の天秤

お久しぶりです、夏目潤です。テスト3日前です☆←おい!

進行状況は最悪です。数学以外の7教科、何も手をつけていません!

おまけに提出しなければいけない課題が山積みです。どうしましょう。

というかこうして投稿している時点でどうしましょうもへったくれもない気がしますが…

……*・*……


ぼんやりとした蝋燭の明かりが結露で白く曇った窓ガラスを照らす。


夜の帳が下りたため、室内は吐く息が白くなるほど気温が低い。

春近くになろうとしても、やはり夜の冷え込みだけは一向に回復の兆しを見せなかった。


暖炉の炎がささやかに自己主張をする。薪が音を立てて燃えた。

目を落とした書類にペンを走らせるが、どうしても作業が進まない。嘆息し、手を止めた。


と、そこでタイミングを見計らったかのようにドアが開く。


「失礼します、陛下」


一礼して室内に足を踏み入れた長身の女は、部屋の寒さに少し眉を顰めると、暖炉に近づいた。


金髪を高い位置で結い上げているその女性が着こんでいるのは、王の近衛兵として傍らにつく魔法師しか纏うことを許されない、緻密な紋章が描かれたマント。


「職務熱心なのは大いに関心しますが、お体を大事になさって下さい」


女が消えかけている暖炉に向かって手をかざし、呪文を唱えると、パチ、と新たに炎が生まれた。女はそれを確認すると魔法陣を消す。

出来た近衛兵に苦笑しつつ、一言。


「…それで、お前は私の部屋を暖めるためだけにここに来たのか?」


女が「まさか」と笑う。机の前に来ると、原稿を読むかのような口調で言った。


「本日夕刻頃、魔法騎士団第二部隊がフィルミーノ・デゥランテ、及びローレッタ・ジュディットの痕跡を確認、彼らはユーフォレア帝国に向かったとの報告です」


椅子に腰掛けている男――マウリオ・エンベリーは、さほど面白味もないというような表情で言い捨てる。


「不毛だな」


鋭い瞳が輝いた。しわを刻んで藍色の髪にも白いものが混ざりつつあるマウリオだが、王としての気迫だけは微塵も薄れることはない。


「――と、おっしゃいますと」


マウリオは鷹揚な仕草で指を組んだ。


「我が国を毛嫌いしているユーフォレアに入れば追跡を撒けると思ったのだろうが、甘い」


本当は何の考えもなく二人はユーフォレアに入国したのだが、そんなことなど知る余地もなく。


マウリオは自分が発したユーフォレアという単語に眉を顰める。


「過去などもう過ぎたことだ、そんなものは結果の過程にすぎん。それをいつまでも騒ぎ立てるなど愚者のすることよ」


二年前のエンベリー内乱、そこでマウリオはユーフォレアの民たちを使い捨ての道具として使った。

だが、その程度のことでこの男は別に何の感慨も沸かないのだろう。実際、過ぎたことだと言って割り切ってしまうのだから。


玉座に座るためには、妥協など許さない。それが、このマウリオ・エンベリーという男の考えだった。


「思えば、先王も愚かな奴だった。いつも敵国の人間相手に情けをかけ、怯え、結果的に国を崩壊寸前まで追い込んだのだから」


女はただ、その口から漏れる言葉を静かに聴いていた。


「ジェイク・ヴォルモントとて同じことだ。絵空事のような馬鹿げた話をいつまでも説いたところで何が変わる。綺麗ごとだけでは世は回らん」


平和。他国は事あるごとにその言葉を口にする。

平和のために――、平和を目指して――、その陳腐な理想のために裏でどれだけの人間を犠牲にしているのか。「平和」という名のジレンマに囚われれば、結果的に選べる道の選択しが減るばかりだ。この男から見れば、馬鹿げたお遊戯そのものでしかないのだろう。


「だが、ジェイクは死の間際に予想外のことをやらかしてくれた」


小さな少女の体にその魔力を滑り込ませ、16歳の少年の魔力を奪った。


最も重要なのはローレッタ・ジュディットだ。もしも今、彼女がジェイクの魔力を駆使して国を落としにかかれば、マウリオでは歯が立たない。それに、あの最年少天才魔法師と謳われたフィルミーノ・デゥランテもついていればなおさらだ。

唯一最悪の事態を免れるためにできそうなことといえば、失われたはずのフィルミーノの魔力が定着した『魔具』を奪うこと、及びローレッタの監視。


「……全く、先ほどはああ言ったがこれではどちらが不毛なのか分からんな」


くつくつと低い声で笑うマウリオに、女は何も答えようとしなかった。

いつのまにか、部屋の寒さも大分和らいでいた。暗い中、うねるように暖炉の火が燃える。


「だが、私はローレッタ・ジュディットが何故ジェイクの魔力を取り込めたのか、薄々分かっている」


初めて、女の顔に表情という表情が浮かんだ。無言で先を促す近衛兵に、マウリオは「そう急くな」と声をかける。


「考えてみれば、単純なことだ」


笑みとともにそう言い残し、王は席を立ち扉に向かう。女は慌てて一礼した。今日の職務は終わらせることにしたらしい。

扉が閉まり、足音が遠のく気配がすると、女はようやく顔を上げた。


喚くように燻っている炎を魔法で消すと、再び部屋の温度が下がった。

淡い蝋燭の光が、陽炎を作り出す。今にも消えそうなそれは、頼りなく揺れていた。


あの王は、どこか自分自身に虚勢を張っている節がある。共に王を支えたジェイク・ヴォルモントも亡き今、マウリオ・エンベリーという人間は何を思っているのだろう。


だが、『王』に余計な感情は必要ない。王の感情は、時に国をも左右する。――二年前のように。

『王』は国の道具に過ぎない。だから心などという副産物はいらない。


女は窓辺に立ち、曇ったガラスを指でなぞった。


国がエンベリー王国へと名を変えてまだ2年。今度の王は、持ちこたえることができるだろうか。

もしも破滅の道を進んだら、その時は自分がマウリオ・エンベリーという人間を殺せばいいだけだ。代わりの王などいくらでもいる。


――それは皮肉にも、かつて先王を手にかけた『青の魔法師』と同じ考えだった。


女は笑みを浮かべて窓から視線を外す。数歩先の机の蝋燭を消した。

月明かりが窓ガラスをたどって室内に落ちた。振り向くと、窓の外では白濁しきった満月が、じっとこちらを伺っている。


近衛兵はしばしその光と睨み合い、王の書斎を後にした。


誰もいなくなった室内。この書斎は『青の魔法師』が先王を殺害した場でもあった。


今、この状況を比喩するなら、そう。――一滴のインクを白い布地に垂らしたかのような黒い染み。


その黒は止める間もなく広がり、大きな白い布地を飲み込もうとしている。



……*・*……



さすがに北の帝国ユーフォレアだけあり、明け方になっても肌寒さが和らぐことはなかった。


窓の外では蕾を孕んだ木の枝にとまった鳥たちが、かしましくお喋りをしている。

開け放たれた窓からは、冷たい風に乗って市場の喧騒が響いてきた。


朝の日差しは眩しい。まだ夢心地だった意識を徐々に目覚めさせていく。

だが、フィルは徐々にではなく、急にその意識を覚醒させられることになる。


理由は明白。


「……鶏肉豚肉牛肉…むぅ…」


何故か隣のフィルのベットに潜り込んで、気持ちよさそうに眠っているローレ。

しかもその寝相は恐ろしいほどに悪い。


フィルの首筋は彼女の両手によって締め上げられており、軽いラリアット状態だった。


(な……なぜ、こんなことに…グアッ…好きな子と一緒のベッドに寝ているというのに、何故か生命の危機を感じる……)


起き上がろうとしても、彼女が上に乗っているためどうにもできない。あちこちもがいてみたフィルだったが、彼が動くと余計にローレの首を絞める力が強まった。

仕方なくフィルは、なんとか両手を伸ばしてその頬に触れた。


「おい…ローレッタ…頼む、から、起きて……」


ぺちぺちと頬を叩くと、彼女の眉間にしわが寄った。


「五月蠅い…万年昼寝野郎……貴様はそこらでお得意の昼寝でもしてろ…」

「本当に俺永遠の眠りにつきそうなんですけどーッ!?」


かなり切実に絶叫すると、パチ、とその目が開いた。近距離でオールドブルーの瞳と目が合う。


「ああ、よかった、ちょっとローレッタこの腕どけてくんない?」


目が覚めても当のローレは、まだ寝ぼけているのか、虚ろな瞳で目の前の男を映していた。しかし、急に何かに気付いたようにピクンと体を動かすと、あっという間にその白い頬はピンク色に染まった。瞳は潤んで今にも涙が溢れそうだ。


「…お…まえ……」

「へ?」

「…この…変態野郎があああああああああああ!!」


バチーンと小気味よい音でローレの平手が炸裂する。まともにくらったフィルはしばし悶絶していた。


「わ、私に何をした!?」

「いやいやそれ完全無欠に誤解のごっちゃんですよローレッタさん!!」

「黙れこの不埒男!お前はそういう奴だったのか!?」

「何で朝からこんな修羅場全開の会話しなきゃいけないのおおお」


ずりずりとベットの端ににじり寄るローレ。フィルは頭を抱えた。


(マズい、このままじゃ俺の要素に変態もプラスされて『元天才魔法師万年昼寝野郎変態不埒男』になってしまう!というかそれ以前に長すぎる!)


なんとか誤解を解こうと必死のフィルはローレの両肩を掴んで揺さぶった。


「だからとりあえず信じてローレッタあああ、違うからホントに!!」


だが、そこで史上最悪の出来事が起こる。

偶然とは何とも皮肉なものだ。フィルは、この時それを身を持って感じた。


「ローレさん、朝ですよ!僕の特性ベーコントマトサンドで朝食を―――」


前触れもなくいきなり宿の扉が開かれた。大きなバスケットを持ってにこにこ笑顔を浮かべる金髪の男。その男――パルの言葉がぶつりと途切れた。

新緑の緑色を秘めたその瞳に映る光景。


同じベッドに座ったローレとフィル。ローレは今にも泣きだしそうな顔で自身の体を抱き、フィルがその両肩を無理矢理掴んでいるといった構図。


なにも知らないパルは、その光景を見てどう感じただろう。笑顔は氷のように固まり、手からバスケットが滑り落ちた。


訪れる一瞬の静寂。フィルの思考が完全に遮断された。自分の血の気が引く音を聞く、なんて人生でそうそう体験できることではない。


「……貴様……」

「え、えーと、パル君?…あの、これは――」

「ブッ殺してやるうううううううううううううううううう!!」

「ちょちょ待て待て待て待て、そんなタックルされたらグゴオ!?」


フィルは弧を描いて投げ出され、壁に激突した。棒を用意して衝撃緩和魔法を発動する暇もなく、彼は見事に後頭部を打ちつけ二回目の悶絶を果たした。


「ローレさんッ!大丈夫ですかぁぁあああああ」

「私にも…よく分からない……どうすれば…」

「だから待てっていってんだろおおおおおおおおお!」


フィルは幼い子供のように二人の前で泣き崩れた。


その後、誤解を解くまでやたら時間がかかった。同じ説明を数十回と繰り返し、しっかりと首筋に残るローレの手の跡という物的証拠(?)をも駆使して説明したのに、二人が頑として信じてくれなかったためだ。

ようやく二人がフィルの言い分を聞き入れてくれた時には、もうすっかり日はてっぺんまで登っていた。


腹が減ったフィルに、ローレがとても可哀そうな人を相手にするかのような動作でパルお手製のサンドイッチを差し出してきた。


「パル君……俺、初めて君の作ったサンドイッチが上手いと感じたよ…」

「ゴキブリフィルミーノ君に褒められても嬉しさ半減ですけどね」


もぐもぐと三人で軽食をとる。こんがりと焼きあがったベーコンと、新鮮で甘いトマトをはさんでマスタードで味をつけたサンドイッチは確かに美味しかった。



ローレも『食べる』ことによっていつもの調子を取り戻したようだ。



またしても新キャラがいないということなので、私がかってに話そうかと思います。作者の独り言なんてアイスのふたほどの価値もないぜー、なんて読者様は戻るボタンをポチッとです。

いやー…前書きで触れた通り、テスト3日前です。困りました。

数学の問題集をやったら2ページ中2問しかあっていなかったこの気持ち…

号泣ものです。

そういえば大昔に読んだド●えもんで『暗記パン』というのがありました。名前の通りパンに暗記したいことを書けばそれがあっという間に覚えられるというスグレモノ。私も今から学習机の引き出しを開けてド●えもんに会いにいこうかと思います。

……なんていう冗談をいっても誰も楽しくありませんね、スミマセン、ハイ。


作「誰か助けてヘルプミー!私はどうすればいいんでしょう」

ロ「寝ろ」

作「ローレさん、登場がいきなりだな…そういえばローレさんって頭いいの?」

ロ「私は学校と名のつくところに通ったことはない」

作「…でも読み書きはできるんですよね?」

ロ「昔のことはあまり覚えていないが…人買いに売られるずっと前に、誰かに教わった気がする」

作「なんか本編に支障が出そうなことサラッと言ったね」

フ「というかこの後書き書いてる時間を少しでも勉強に回せば…」

作「おお我が心の友フィル君ではないか」

フ「君…なんか話し方パルみたいだからやめてくんない?」

作「まあそれはおいといて、フィル君は頭いいんだよね」

フ「うん。多分君の500倍くらいは頭いいよ」

作「地味にグサっとくること言うな…」


…なんか読み返したらえらく長くなってしまった、まあいいか。

と、いうことで今度はテスト明けの週末にお会いしましょう。

玉砕覚悟で突撃して粉砕していなければ投稿します。

では~


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