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猫かぶり業務日誌

作者: 猫しゃんて

11月4日(土)


 今日も店長はふざけた態度だった。お客さんが来ても構わず私との私語を続けるし、椅子に座ったままで挨拶も適当にしかしない。

 まぁ、うちに来るお客さんは常連ばかりで、それを承知で来店しているから皆苦笑いで済ませてくれているんだけど。もし新規のお客さんが来たらどうするつもりなんだろう。

 先が不安だわ。っていうか、業務日誌が私の日記代わりになってる時点でこの店の将来は不安だわ。いつも白紙だから、どうせ書いてないんだろうなぁ店長。



11月5日(日)


 店長は仕事を知らない。発注の仕方も忘れたみたいで、私が出勤するといつも嬉しそうに寄ってくる。もし私が辞めたらこの店はどうなるんだろう、と思うがその先は考えないことにする。何かこっちまで憂鬱になってくるし。

 でもなぁ。何故かこの店を辞める気にはならないんだよねぇ。別に時給が良いわけでもないし、店長働かないし、暇だし。でも続けようと思ってる。不思議だねぇ、人の心って。自分自身のことすらよくわからないや。



11月11日(土)


 保健所の人が検査にやってきた。どうやら、飲食店は定期的にチェックを受けなければならないらしい。初めて知った。

 私は内心「終わったな」と思ったけど、事実は小説よりも奇なり。何とあの店長がきびきびと保健所の人に応対していたのだ。信じられない。

 保健所の人が帰ったあとは、いつも通りの店長だった。相変わらず「仕事がわからん」って言って私に訊いてくるし、お客さんと話してばっかいるし。

 この人は不思議だ。そして、それでも辞めない私はもっと不思議だ。



11月12日(日)


 今日は風邪で休むと連絡したけど、店の状況が気になったからこっそり外から覗いてみた。

 そうしたら、店長がものすごく真面目に仕事をしていた。何か腹が立ったので重い身体をひきずりながらも店に入り、私は店長を問い詰めた。どうして普段からそんな風に働かないんですか、と。

 店長は笑いながら、だって君と話したいから。でも、何を話していいかわからないから。と言った。

 私は呆れて声も出なかったけど、とりあえず笑ってデコピンをかました。店長は地味に痛がっていた。

 本当なら業務日誌を書いている間に家に帰って寝てるべきなんだろうけど、結構衝撃的なことだったからここに記すことにした。


 追伸


 私がこの店を辞めない理由は、何となく気づいていた。ここの店長のせいだ。

 あの人は仕事はしないけど、笑顔が可愛い。重い物を運ぶ仕事やゴミ捨てなどの汚れる仕事だけは率先してやってくれる。そして、私のことを暖かい視線で見てくれている。

 それが、私を引き留めていた。

 けど、今日決心がついた。もうこの店は辞める。バイトはしない。

 私ももう高校三年生だし、良い機会だろう。先生からもせっつかれているので、就職か進学かを選ばなければならないし。

 私は、就職を選ぼうと思う。理由はむかつくから書かない。

 将来、私は不器用で面倒な人と結婚するんだろうなぁ。ふと、そう思った。

こういう淡い恋がしてみたいですね

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