ママチャリ・サーファーと見栄の二頭筋
投稿者:みつる 2026年4月5日
作ったぜ。
今日もおれはジムへ向かう。愛車は、琴音が独身時代から使い倒している、カゴが少し歪んだママチャリだ。神戸の潮風を感じるには少々ギアが重いが、これも一種の「下半身強化」だと言い聞かせれば、情けなさは少しだけ和らぐ。
本日のメニューは、まずエアロバイクを十分。
ペダルを回しながら、おれは遠いバリの波を想像する。だが、現実に視線を落とせば、そこにあるのはジムのテレビに映るワイドショーと、必死に回るおれの細い脚だけだ。十分経つ頃には、おれの「生存本能」がこれ以上の有酸素運動を拒絶し始めた。
仕上げは、本命のアームカールだ。
二頭筋をパンパンに腫らし、タンクトップから覗く腕のラインを完成させる。脚の疲労など、この腕の「張り」があれば忘れられるというものだ。鏡の中のおれは、腕だけなら間違いなく一流の海男に見える。
「あぁ、このカーブ、たまらんぜ……」
パンプアップした腕を誇示するようにハンドルを握り、おれは再びママチャリに跨った。
帰り道、緩やかな坂道に差し掛かった瞬間、おれの脚は「十分のエアロバイク」がもたらした限界を迎えようとしていた。腕の筋肉は、残念ながら自転車を漕ぐ役には立たないらしい。
【コメント欄】
匿名サーファーA: ママチャリでジム……。お前、そのうち「補助輪」が必要になるんじゃないか?
琴音(?): エアロバイク十分の電気代、お前の腕の筋肉で発電して返してね。あと、帰りにトイレットペーパー買ってきて。特売のやつ。




