パンプアップの快楽、現実からの逃避
投稿者:みつる 2026年4月3日
作ったぜ。
今日はジムで、徹底的に自分を追い込んできた。
ベンチプレスのバーベルを押し上げるたび、大胸筋に血流がなだれ込み、皮膚がはち切れんばかりに膨らむ。この「パンパンに張った」感覚……これこそが、おれが生きている実感を与えてくれる唯一の瞬間だ。
鏡を見れば、そこには紛れもない強者のシルエットがある。あぁ、これが、これこそが最高に気持ちいい。
そんな至福のシャワータイム、筋トレ仲間のレンと出くわした。
「おぉ、みつるじゃん。今日は何やったの?」
「今日はベンチプレスだ。完璧に追い込んだぜ」
「またかよ。お前、相変わらず下半身がだらしないんだから、少しはスクワットとかの下半身トレしろよ。アンバランスすぎて、見てるこっちが不安になるぜ」
レンの真っ当な指摘が、タイルに跳ね返るシャワーの音よりも耳障りに響く。おれは自慢の逆三角形を誇示するように、わざと大げさに肩をすくめて言ってやった。
「めんどくさいんだよ。おれは波を待つ男だぜ? 上半身が仕上がってりゃ、それでいいんだ」
嘘だ。本当は、あの小鹿のように震える脚で、重いバーベルを支える恐怖に耐えられないだけだ。おれは温かいシャワーを浴びながら、パンプアップした胸をなで、今日という一日の「見せかけの勝利」に浸ることにした。
【コメント欄】
匿名サーファーA: ベンチプレスで波に乗れると思ってるなら、お前の脳みそもパンプアップしすぎて破裂してんじゃないか?
琴音(?): 「めんどくさい」の一言につき、来月の生活費から一万円マイナス。あ、今夜はちゃんと自分の足で帰ってこいよ。タクシー禁止。




