生まれたての小鹿
投稿者:みつる 2026年3月24日
作ったぜ。
おれはみつる。神戸の海を愛し、波を待つ(という体裁で、家で彼女の帰りを待つ)サーファー系の男だ。三十五歳、身長百六十七センチ、体重五十四キロ。
鏡の前に立てば、上半身だけはギリシャ彫刻のような逆三角形を作ったぜ。……が、視線を下に落とすと、そこには中学生のようなひょろひょろの脚が二本、頼りなく生えている。人はおれを「アンバランスの化身」と呼ぶ。
今日はおれにとって、生存をかけた魔の「足トレ」の日だ。大企業でバリバリ稼ぐ彼女、琴音の高級プロテインをこっそり拝借し、おれは鉄の塊に挑んだ。
だが、筋力というやつは、おれの情熱とは裏腹に一向に宿らん。十回三セット。たったそれだけのノルマに、おれの貧弱な下半身は悲鳴を上げ、視界には火花が散り始めた。
「あぁーもう、めちゃくちゃや!」
結局、ジムの帰り道。おれは自分の脚で歩くことすらできなくなり、タクシーを呼ぶ羽目になった。琴音に「ヒモの分際でタクシー代を使うな」と詰められる未来を、おれは今、自慢の上半身だけで全力で受け止めようとしている。
【コメント欄】
匿名サーファーA: その細い脚じゃ、ボードの上に立てる前に波にさらわれるぞ。
琴音(?): プロテインの減りが異常に早いんだけど、まさか飲んだ?




