39話 レオン・ハーヴェスの人生はイージーモードだった
――僕、レオンは、ヴァルドが嫌いだ。彼に何か嫌なことをされたわけではないのだが、気に入らない事がある。
……実は僕は、ラディシャ様に惚れている。何時からと言われれば、それは最初からだろうか。でも、何というか、三回惚れたのだ。…一回目は、"青い青鬼"というレッテルに惚れた。そして関りを持つことにした。二回目は関わっていくうちに、その心優しい性格に惚れた。三回目は、その素顔を見たとき。同じ者に三回も惚れてしまったのだ。
僕は、ずっと周りの者を見下していた。公爵家で生まれ育ち、子供の頃から使用人にも貴族達にも、特に女達にチヤホヤされた。頭が良いだとか、優しいだとか、かっこいいだとか。…ちょっと難しい数式でも解けば、天才だともてはやされ。ちょっと優しくしてやれば、皆僕を慕うようになり。ちょっと笑いかけてやれば、女達は皆僕に惚れて。人生が楽だった。僕は本当はそんなに優しい心は持っていないが、優しい行動をしているのは本当なので、その行動が幾ら打算的な行動であってもそれを表面に出さなければ、それは"優しい人"と言えるのではないか。僕はそう思う。…そんな優しい僕よりも、ラディシャ様がヴァルドの方を大事にしているところを見ると、どうしてもイラっとする。嫉妬とも言う。何故自分じゃないのかと。何故あいつなのかと。…好きな女が親友だと言って、男を大事にしていたら、良い感情は抱かないだろう?しかも、そいつがとんでもなく素晴らしい人物だったらまだいいが、自分より劣っている人物だったら、そいつを憎む気持ちも仕方がないと思うのだ。
…ヴァルド・アスライト。狼獣人の、戦闘の得意な男。戦闘力以外の特筆すべき点は無い。元殺し屋の犯罪者。でも、僕は公爵で、頭も良くて、優しくて、顔もいい。やはり僕の方が優れた人間だと思う。…いや、ヴァルドのすごい所は、あのラディシャ様相手に惚れずにいられることかな?まあ、アズベルもそうだが、あいつは敬愛だからな。ヴァルドのように友愛を抱くのは中々無いだろう。…僕は、勿論恋人になるのが一番嬉しいが、あの方はそういうのが今までの人生で苦手なようだから、せめてそれ以外の感情でいいからあの方の一番になりたかった。…傍に、いたかった。…こんなに誰かに惚れたのも、必死になったのも初めてなのに。今までの人生はずっと、上手くいっていたのに。
「……思い通りには、行かないなぁ」




