38話 ヴァルドよりもレオンの方が
「ラディシャ様と、ヴァルド?業務はどうされたのですか?」
「あ、レオン!丁度いいところに!そのことで話さなきゃいけないことがあって」
「どうされました?」
「えっと、ヴァルドと僕は今日から一週間仕事を休もうかなって。あ、その、ずる休みってわけじゃなくて!いや、でも僕はずる休みかも…?」
「いや。何つーか俺、ちょっと最近疲れちまって。それで一週間休むってなったら、ラディシャがほっとけねえってなって一緒に休んでるんだよ。俺がラディシャに付き合わせてるだけだ。ズル休みは俺だな」
「…そうだったの。いきなり騎士団長は疲れるよね、ゆっくり休みな、ヴァルド。ラディシャ様もこの機会にゆっくりお休みください、業務は僕にお任せを」
「ごめんね、迷惑かけて」
「いえ、迷惑などではございませんよ。
…ラディシャ様はお優しいですね。我々にもですけど、ヴァルドには特に」
「え、そうなの?もしかして僕、えこひいきしちゃってる?」
「いえ、何というか…。例えば私が疲れて休むことになった時、ラディシャ様はヴァルドと同じように一緒に休んでくれそうにないといいますか…」
「ああ、なるほど。…やっぱりヴァルドは友達だからさ。"僕も一緒にいた方がヴァルドは楽しいだろう"っていう自信があるんだよね。君たちにも好かれているのはわかるけど、何というか…。上下関係があるせいで、あんまり親しくはなれてないというか。僕が、上司が一緒にいても落ち着けないだろうなって思っちゃうんだよね」
「…まあ、確かに。一人で休みたい人もいるかもしれませんが、僕は嬉しいですよ?」
「そう?じゃあ、もしレオンが疲れて休みたくなった時は僕も一緒に休むね?」
「はい、とても嬉しいです!」
「おい、ラディシャと一緒にいたいからって、ズル休みはするんじゃねえぞ?」
「するわけないでしょ、ヴァルド!」
「ええー?どうだか」
「そんなに信頼ないかな、僕!」
「冗談だよ、お前は良い奴だと思ってるぜ?レオン」
「…僕も、ヴァルドは魅力のある人だと思っているよ」
「ああ?何だそれ、本当かぁ?」
「勿論、本当だよ」
―――そんな事、思った事もないよ、ヴァルド。
「君はとても良い人だ。ラディシャ様が君のことを大好きなのも頷けるよ」
―――こんな奴の何処が良いって言うんですか?ラディシャ様。
「僕なんかよりも、ずっと良い人だ」
―――……僕の方が、良いに決まってます。人当たりが良くて、仕事もできて、おまけに顔もいい。仕事に疲れて迷惑をかける人殺しの犯罪者こいつよりも、ずっと。…何で、こんな奴が大事なんですか?ラディシャ様。
「…ふふん、お前みたいな優秀な人間に褒められて、悪い気はしねぇなあ!」
―――偶々、青鬼であることを隠している時にラディシャ様に会えただけの、仲良くなれただけの、強いだけの、男。運が良かっただけ。僕が先に会って大事にしていたら、ラディシャ様の親友は僕だったかもしれないのに。
…ああ、本当に。
「―――憎たらしい奴」
「ん?何つった?俺の耳ですら聞こえなかったぞ」
「…ああ、すみません。ちょっと考え事をしていて声に出てしまいました。気にしないでください」
「お前、考えてる事が声に出るタイプか。気を付けろよ?何言いだすかわかったもんじゃねぇ」
「…はい、気を付けます」
――こんな考え、ラディシャ様にバレてはいけないから
「…本当に、気を付けますよ」




