33話
「ねえヴァルド、最近ちょっと疲れてない?」
「…っえ、な、何でだ…?ラディシャ」
「いや、最近何か楽しくなさそうというか、あんまり笑ってないなって。あと、うっすらクマできてるよ?大丈夫?」
「…いや、最近ちょっと寝付きが悪くて眠れないだけだ。だからちょっとボーっとしてるのかもしれねぇ。大丈夫、疲れてねぇよ」
「そうなの?あんまり眠れなかったら医務室とか行ってね?…何かあったの?」
「…いや、何もねぇよ。本当に大丈夫だって。…俺ちゃんと頑張るからさ!」
「そっか、でも無理はしないでね!」
「…無理って?」
「え?」
「"無理をする"って、どこからなんだ?」
「…うーん…。頑張りすぎちゃったり、とか?まあ、みんなできることも、頑張れる量も違うから、どこからが"頑張りすぎ"なのか難しいよね?」
「…"無理をする"と"頑張りすぎ"って、同じなのか?」
「まあ、似た意味じゃない?…どうしたの?やっぱりなにかあったの?」
「…これはただの質問なんだけど」
「うん、」
「…アズベルができていた事が俺にはできなかったとして。それって俺が"頑張っていない"のか?」
「…さっきと同じこと言うけど、人によって"できること"も"頑張れる量"も違うから、ヴァルドのなにがアズベルよりできなかったのかはわからないけれど。君は、絶対何とかしようと考えて努力しただろうから、できなくたってそれは"頑張っていない"とはならないよ。…君は、たくさん頑張ったんだよ。僕に聞きたくなるくらいに」
「…俺、頑張った?」
「うん、とっても頑張ったんだよ。……そっか、ヴァルドは疲れちゃったんだね。一生懸命頑張って、疲れちゃったんだ」
「……ああ、そうか。俺、頑張れてたんだ。…それで、疲れたんだ」
「うん、そうだね」
「…俺、頑張れてたのかもわからなかったし、何で疲れてたのかもよくわからなかったんだ」
「うん」
「どこからが"当たり前"になって、どこからが"努力"なのか、"頑張っている"なのか、分からなくて、」
「…うん」
「俺、騎士達にあんまり慕われてなくて。」
「…アズベルは、良く慕ってるって言ってたけど…?」
「アズベルの前では猫かぶってるんだよ、あいつら」
「…そっか、」
「だから訓練とか、見回りとか、俺の指示だとあんまりやる気出してくれなくて。」
「…うん、」
「俺が変なこと言ったり、間違ったこと言ったら笑われるんだ」
「…そっ、か…。」
「でも俺、あいつらの気持ちもわかるんだ。慕ってたやつじゃなくて、一回も騎士団に入ってなかった奴がいきなり騎士団長になって。そりゃあ言うこと聞かないよなって。でも別に、暴言とか言われたことはないし、別にそんなに酷くなんてないんだ」
「…そうなの…?」
「でも言うこと聞いてくれないのは、ラディシャの為にも良くないだろ?でも俺はアズベルほど人間性に優れてないから、人柄で慕われるのは無理だなって」
「そんなことないよ!」
「あるんだよ。…で、俺が騎士団長になれた理由は強さだろ?だから強さを見せて、騎士達に「強いからしょうがないか」とか「強いから尊敬できる」とか思ってくれないかなって考えて、強さを見せてたんだよ。騎士達と模擬戦したり、体力測定ですげぇ記録出したり」
「…うん」




