表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
青鬼の女帝  作者: ぽつ
32/37

32話

 何だか最近疲れているかもしれない。でも、俺は丈夫な体だから"体の疲れ"というより心が疲れているのかもしれない。でも、初めてまともな職に就いた奴って皆疲れるよな?寧ろ良い職に付けてもらえた俺は幸福な方だよな?…こんなのは普通だよな。当たり前のこと。俺は何も大変な方じゃない、とても幸せ者で。

 …じゃあ、疲れることが、これが当たり前なら、俺はまだ頑張れていないのか?もっと頑張れるんじゃないか?でも、疲れた。いやでも、俺の丈夫な体なら、まだ動けるはず。でも、疲れているのは体じゃなくて心で。いや、心が疲れる事なんて当たり前だ。そんなの全人類が経験している。俺より不幸で、俺より大変な奴なんて山ほどいる。それこそレオンなんて、ラディシャが表に出れないから代わりに貴族たちの相手をしていて、とても大変そうだ。ザックだって、ずっと奴隷で虐待されてて、今は14歳で働いている。ラディシャだって、人間関係に悩んでいて、しかも1000年も生きている。俺だったら1000年も人生を生きるなんてとても耐えられない。そう、俺は今まで親の仕事の八百屋を継いで。その裏で嫌いな貴族を殺して金をもらって。その罪を人助けをすることで許されて。人助けも親友に付いていくだけでできて。今は色々な過程を飛ばして騎士団長だ!どう考えても幸せだ。だから俺が病んだりなんかしてはいけないんだ。そんなの俺じゃない。

 ……もっと頑張ろう。俺は頑張れていないのかもしれないから。"普通"も"当たり前"も何もわからないから。だからもう、頑張るしかない。


「…なんか。頭、痛ぇな。俺頭痛持ちじゃねぇのに…何でだ?」




――――――――――




「ヴァルド様、何か今日静かじゃないですか?いつもはもっと笑うというか…」

「ああ?そうか?俺はいつも通りだぜ?ザック」

「そうですか?まあ、訓練中に笑うって少しおかしいですしね」

「いや、戦いは楽しいだろ。お前もいつも笑ってるじゃねぇか。「カハハハハッ!」って。気持ち悪い笑い方で」

「俺そんなに笑い方気持ち悪いですかね?」

「うーん、何か殺人鬼みたいな笑い方だよな」

「まあ、そうですけど。今日、俺がギロチンで死刑にした人がいたんですけど。刃下すってなった時、俺思わず笑っちゃったんです!そしたらその人がとんでもないものを見る目で俺を見てきて、もう楽しくて高笑いしながら執行しました!」

「何で嬉しそうに報告するんだよ!」

「カハハハハッ!」

「ハハハハ!」

 何だか最近、今まで楽しかったことが楽しくなくなった。好きだった戦闘でさえ楽しくない、何をやっても楽しく感じないのだ。ザックとの会話なんていつも神経使っていたのに、こうなってからは余計関わり方がわからなくなった。今までの俺がわからない。今までどうしていたのか、どんな時笑っていたのかがわからなくて。自分がいま不自然じゃないかも、よくわからない。ザックにも指摘されてしまった。

 ……一番怖いのは、ラディシャにバレること。俺はなぜかラディシャにはカッコつけたかったりするのだ。あいつが女だからか?情けないところを見せたくないし、心配もかけたくない。迷惑もかけたくない。あいつから見える俺は、明るくて口の悪い親友に見えていたい。もちろん信頼はしているが、相談はしずらい。

 …相談してどうする?騎士団長をやめるのか?それは嫌だ。ザックを俺とあまり関わらないようにするのか?どうやって?"ヴァルドは自分より強いザックが気に入らないので距離を取ります"って騎士達に言うのか?アズベルに言うのか?…ラディシャに、言うのか?


「……嫌だ。それは、嫌なんだ」


 …じゃあ、頑張らないと。…どうやって頑張るのかも、なにもかも、全然わからないけれど。


「…俺は、今、幸せなのか…?」


「ヴァルド様!休憩もう終わりですよ!何サボってるんですか!」

「!ザック、すまん。直ぐ行く!」

 ああ、訓練に遅れてしまった。こんな場合じゃない、早く働こう。もっと、頑張ろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ