24話
「何でここに!?おい!ラディシャから離れろ!!」
「力ずくで来ないってことは、負けるってわかってるから?駄犬」
「…犬じゃねぇ、狼だ。それもそうだが、ラディシャがお前に殺されることはないからかな。…で、何でここにいる?地下牢じゃないのか」
「力封じの手枷なんだけど、あれ、俺が奴隷の時よりも力が弱い。ラディシャさんが壊した奴、俺でさえも封じれるほどの最高級品だったんだよ。でもそんな品質の物はもう無いから手枷は俺に壊せてしまった。で、地下牢なんか脱出してラディシャさんのところまで来たんだ」
「…なぜ僕のところへ?」
「もう、わかってますよね。…惚れたんです、ラディシャさんに」
「…離れて」
「その前に一つ、話があるんですけど」
「…何?」
「レビーゲルが言っていたんですけど、最高級品の枷は作れる職人がもういなくて全員亡くなってしまったらしいんです。で、俺の枷は世界で唯一残っていた物だとも。…あの枷でしか俺の力は封じれません。俺を拘束する手段はあなた達には無いんです」
「だから何だ。お前を殺せばいいだろ」
「ラディシャさんしか殺せないですよね。あなたに人を殺す勇気がありますか?」
「…無い。し、そもそも君は殺されるほど悪いことはしていないよ。…何であの時、ヴァルドを殺そうとしたの?」
「…俺は頭がおかしいんです。多分俺には、言語化するなら"殺人衝動"があります。特に、強い人を殺すのが好きなんです。でも、奴隷になってからはずっと人を殺していなくて、自分から流れる血を見ることでその衝動を何とか抑えようとしながら生きていました。でも、もう限界だったんです!だから、恩人であってももう構わないと、隊長であるヴァルドを殺そうとしました」
「…その衝動は前からあったの?奴隷になってからじゃなくて?」
「残念ながら心神喪失ではありませんよ。元々こういう者です。人も奴隷になる前は大勢殺しました」
「ラディシャ、こいつ殺せよ!もういいだろ?こんなに罪を自白してくれてるんだから」
「だめだよ。そもそも、人殺しの罪はヴァルドも同じでしょ?」
「チッ!」
「え?」
「うん?」
「お、隊長もか」
「俺は革命軍に入る前は殺し屋だったんだよ。でラディシャに説得されて贖罪のために人を助けようって訳だ。…って、あ」
「あんた今言ったな?そうか、ラディシャさんは人を殺しても反省して人を助ければ許してくれるのか」
「あ?」
「ラディシャさん、ヴァルドにチャンスをあげたように、俺にも贖罪のチャンスをくださいよ」
「…ど、どうするの?」
「騎士団で働きます。できれば殺人衝動のために人を良く殺す仕事とかがいいんですけど、ありますか?」
「まあ、死刑囚の処刑とか…?でも、君を騎士たちのところに野放しはできないよ」
「いえ、俺は誰も傷つけません。ある条件を飲んでくれれば、俺はラディシャさんのために全力で働きますし、不利益になるようなことはしません。俺の力はとても有用でしょう?敵にまわしても困りますよね?」
「条件ってなに?」
「簡単です。一週間に一度、女性の姿で素顔のあなたと合わせてください」
「ああ?んなの受け入れるわけねえだろ」
「その間は絶対にラディシャさんに触れません」
「その間じゃなくて一生触れるな」
「じゃあ、それで」
「だとしても無理だ!!」
「…じゃあ、さらにその間は護衛としてヴァルドとアズベルは傍にいていいし、一応手枷も付けて良いですよ。これならどうですか?」
「ダメに決まって…」
「いいよ」
「ラディシャ!」
「ザック君を敵にはまわせないし、ヴァルドは許すのに彼は許さないのはおかしいよ」
「こんなサイコパスのこと信用して騎士団に置けってか!?誰か殺されたらどうするんだ!」
「大丈夫、僕に惚れた人は僕の信用や期待を裏切りたくないから大体約束は守るんだよ。処刑の仕事は嫌がる人が多くて困っていたし、丁度いいよ」
「じゃあ、これからよろしくお願いしますね?ラディシャ様、ヴァルド様」
「"様"ってなんだよ」
「そりゃあ、部下になるので」
「今更敬語でかしこまるのかよ、本当に気持ち悪いガキだな」
「カハハハッ!」
「笑い方まで気持ち悪ぃ!!」




