21話 どうした、ザック
「そういうわけで、ルイズ・べストールには近づくなよ。ラディシャ」
「うん、わかった!というか、僕は今度から特定の人としか会わないようにしようかなって思ってたんだ。出かけたりしないで隠居生活に戻ろうかと」
「あ?どういうことだ?」
「えっと、ヴァルドとレオンとアズベル以外には姿も見せないようにしようかなって」
「…まあ、姿も見せたくないのはわかったが、使用人とかはどうするんだ?」
「身の回りのことは全部自分でするよ。今までもそうだったし、特に変わらないでしょ。どうしても表に出ないといけない時は、顔を隠して出るようにする」
「うーん…。まあ、赤鬼に出くわす可能性はめっちゃ減るし、安全ではあるんだけどな。つまんなくねえか?それじゃあ」
「僕の隠居生活歴を舐めてもらっちゃあ困るね!僕は人とトラブルがある度に家にこもって人と会わずに生活してたんだ。ヴァルドの町に行ってたのは最近のことだよ。それに、皆がいれば怖くない!まあ、信頼できる人が増えたら会える人も増えるかもだし気にしなくて良いよ!」
「仕える側からすると、常に一番安全なところで籠ってるのは楽ではあるな。安心できるし」
「じゃあ、決まりね!」
「はいはい。承りました、ラディシャ様」
「うむ、お願いした!」
――――――――――
「失礼します、ラディシャ様。ヴァルド」
「どうしたの?レオン」
「何だ?」
「実は、奴隷達のことなのですが。家族の元に帰した者達はいいのですが、身寄りがなく皇城で働く者たちにどこで働きたいかを聞いたところ、風の精霊ザックが騎士になりたいとのことでしたので騎士団に預けたのですが」
「精霊って、特に強い種族ではないよね。大丈夫かなあ?しかも14歳くらいだし」
「あいつ不健康そうだし、ほっそいもんな」
「それが、その…負けたそうです」
「えっと?」
「ザックが?そりゃそうだろ」
「いえ、……アズベルが、ザックに負けたそうです」
――――――――――
「で、お前がザックに負けただと?」
「はい、それでヴァルド様にも戦ってほしくて」
「どっちが勝つと思うんだよ?」
「…私には、予想が付きませんが……ザックかと」
「あ?何だと」
「ザックは風の力を使っているらしく、とても動きが早いんです。私では、目で捉える事もできませんでした」
「…そうか。でもよ、…勝つぜ、俺」
「へぇ、俺に勝つって言うんですか」
「「!!」」
「いつの間に!」
「誰も気配感じ取れてねえじゃん。良いんですか、騎士様たち。こんな子供に背後を取られて。そんなだと……殺されちゃいますよ、俺に」
ザックが何処からか取り出したナイフで、ヴァルドの首に斬りかかる
――やっべぇ!こいつ早すぎる!精霊は別に強くはねえはずだろうが!!ってそれどころじゃねぇ、何だこの殺気!!こいつ、このナイフの勢い的にも寸止めする気ねぇな、本当に殺す気か!?俺は今武器を持ってねえから避けるしかねえが、間に合わねぇ!!やばい、死――
―ザクッ
「「!?」」
「ラディシャ!!」
「青鬼!?」
ラディシャが手の平でナイフを受け止めた。手から血が滴る、が
バキッ
「はあ!?ナイフを握り潰したぁ!??」
馬乗りになり、首に手を掛ける
「ザック君、ヴァルドに何しようとしたの」
「何って、殺そうとしたに決まってるだろぉ!!放せぇ!!!」
「ちょ、暴れないで!!」
風の刃がラディシャに向かって吹き荒れる
「はあ?こんなこともできるのかよ、イッテェなぁ!!ってラディシャ、大丈夫か!!?」
そこには服も髪もボロボロで血だらけのラディシャが、それでも何とかザックを抑えていた
「ラディシャ!!クソ、ラディシャに近づくほど刃が多くなって近づけねぇ!!!」
「ラディシャ様!!!」
「アズベル、お前は逃げろ!!お前程度じゃどうしようもねぇ、早く人を呼んで来い!!!」
「!!はい!!急いで!!」




