004 父親
アキラは民族の伝統的な衣装を身にまとい、アミに向かって冷たく言い放った。
「今日からお前は俺専属の侍女だ。他の誰にも仕える必要はない。……それに、過去に俺にしたこと、忘れたとは思うなよ。ちゃんと俺は覚えているからな。」
そう告げると、アキラは堂々と階段を降り、家族が待つ本家の中庭へと歩み出た。そこには父と母、そして弟のクロが立っていた。クロは自信満々の笑みを浮かべ、上の階段からゆっくりと降りてくる。
「遅いぞ、アキラ!」
クロが声を張り上げる。
しかしアキラは片手を上げて、黙れと合図を送った。
「さあ、行こうじゃないか。皆の者。」
父と共に馬車に乗り込むと、馬が大きく嘶き、一瞬にして空へと駆け上がった。
その途端、アキラの視界には広大な世界が広がる。
果てしなく続く緑の草原、輝くように整った村々、そして遠くまで続く青空。
胸が高鳴り、思わず息を呑んだ。
隣に座る父はじっとアキラを見つめ、低く呟く。
「……やはり変わったな。お前はもう、かつてのアキラではない。」
アキラは父を憎んではいなかった。
父は決して彼に悪意を持って接したことはなかった。
ただ、過去のアキラに対して無関心であっただけだ。
沈黙の中、二人は互いに視線を交わす。
天空を駆ける馬車の上で――。