表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

003 天才

「……なんだよ急に生意気になりやがって! ぶん殴られてぇのか!?」

クロウが怒鳴り、赤い顔で呪文を唱え始めた。すると、彼の掌に水の球体が集まり、光を放ちながら形を成していく。


「ちっ……!」

アキラは思わず目を見開いた。

(やばい……! 俺には魔法なんてない。勉強すらしてないんだぞ……。この水弾をくらったら絶対に痛い!)


だが、その顔はあくまで冷笑を崩さなかった。アキラは咄嗟にアミの体を引き寄せ、自分の盾にしたのだ。


「きゃっ……!」

アミの悲鳴と共に、水弾が彼女に直撃し、全身をびしょ濡れにした。


「この野郎っ……!!」

クロウが逆上しかけたその時――

「そこまでだ。」

低く重い声が響き、父親が姿を現した。


空気が一瞬で凍りつく。クロウは拳を握りしめて震えていたが、父の威圧に押され、動くことができない。アキラは平然とアミを突き放し、まるで何事もなかったかのように肩をすくめた。


「解散しろ。」

父の一言で場は収まり、皆が散っていった。


アミが濡れ鼠のようになって立ち尽くす中、アキラは例の紙を投げつけ、冷たい声で命じた。

「読め。大声でな。」


「……っ」

アミは悔しさに唇を噛んだが、従うしかなかった。朗々と読み上げられる文章が大広間に響く。


(くそっ……! 俺には字なんて読めないんだよ。あのクソ親父、わかってて紙を渡しやがったな……!)

アキラは奥歯を噛み締めながらも、驚くことに――アミが読む一字一句が、鮮明に頭の中に刻み込まれていった。


部屋に戻ると、殺風景な家具しかない光景にアキラは舌打ちした。

「なるほどな……。今まで俺をこんなふうに扱ってきたってわけか。」


そしてアミに命じる。

「家の図書館から魔法書を持ってこい。」


ほどなくして戻ったアミは、分厚い本を数冊抱えてきた。アキラは一冊を指差し、低く言った。

「今日からお前が俺に字を教えろ。今すぐだ。」


「……はい。」

アミはわずかに怯えつつも、逆らえなかった。こうして、奇妙な学習が始まる。


二時間後。

アミは疲労で肩で息をしていたが、アキラの目はまだ冴え渡っていた。

(俺……こんなに早く覚えられるのか? もう基本は読めるぞ……!)


しかも、手に取ったのは「魔法入門」の本だった。


アキラは口角を上げ、手を差し出す。頭の中で呪文を思い出し――


「……現れろ。」


「――ブシュッ!」

次の瞬間、彼の掌に透明な水球が出現した。


「なっ……!?」

アミは息を呑み、後ずさった。普通なら数週間、数ヶ月かかる基礎魔法。それをアキラはたった一度の試行で成功させたのだ。


「うそ……。あなた、一体……何者なの……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ