木星のきらめき③
ここでは、セーガンの生命仮定とは別の視点から、生命の誕生について考察していく。
光は粒子(光子)であり波である。
通常、光は他の物質に作用して情報やエネルギーを伝えるが、光子自身が「構造」や「記憶」を保持することはできない。
ただし、以下の条件を満たす環境では、「光が構造を持つ」ことが理論的に可能になる:
高密度光場(photon fluid) — 光が互いに干渉して“流体”のように振る舞う状態。
重力閉じ込め(gravitational lensing cavity) — 光が空間の湾曲によって軌道を保つ領域。
プラズマ媒質内での自己トラップ(self-trapped photon soliton) — プラズマ密度勾配によって光が自己安定化する。
情報干渉パターンによる自己再生 — 干渉縞が「遺伝情報」として振る舞う。
このような環境では、
「光子群が波動干渉によって自己を保存・再構成できる」──つまり“生命的構造”を持ち得る。
木星上層では、プラズマ+磁場が豊富であり、局所的な光渦が形成され得る環境が整っていた。
木星の可視雲頂は、平均高度80〜150km、気圧0.1〜1.0 bar、温度約140K(−130℃)に位置する。
主成分は水素(H₂, 約89%)、ヘリウム(He, 約10%)、微量のメタン(CH₄)、アンモニア(NH₃)、硫化水素(H₂S)で構成される。
この層では、太陽光散乱・電離粒子嵐・磁気圏プラズマの乱流が重なり合う。すなわち「光」と「電離」の狭間に存在する中間圏である。
観測データによれば、雲頂上部では太陽からの入射光が約50 W/m²に達し、同時に、内部放射(木星内部熱)からも平均5.4 W/m²の赤外線フラックスが上昇している。
この二つの放射流が干渉する領域において、光の停滞域(Luminous Wells)が生じる。
そこでは光が単なる放射エネルギーではなく、粒子密度波として一時的に空間内に捕獲される。すなわち、光が媒質と共振し、自己安定化する条件が成立している。
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木星上層における光生命誕生の鍵は、非線形媒質中での光の自己安定化現象にある。
以下の三過程が複合的に働いたと考えられる。
1. プラズマ自己捕獲(self-trapped photon plasma)
電離ガス内で局所的な電子密度の低下が誘電率の谷を形成し、
そこに光束が閉じ込められる。いわば“光の井戸”である。
2. フォトン・ソリトン(photon soliton)
非線形光学効果により、光が自らの進行経路を安定化させ、
崩壊せずに空間内を維持する波束を形成する。
3. 定常干渉構造(stable interference lattice)
複数波長の光が干渉し、立体的な定常パターン(光格子)を生成。
これは一種の「光子結晶」であり、長期間安定する可能性がある。
これらの条件が同時に成立したとき、光の流れは散乱によって拡散せず、自らの構造を保持する。この「自己保持する光の網」こそ、生命的秩序(情報再帰)を持ちうる最初の形態である。




