木星の衛星エウロパから来ました②
「エウロパ」の 表面は平均 厚さ10〜30 km に及ぶ分厚い氷殻に閉ざされていた。その氷は木星の重力による潮汐力で常にひび割れ、裂け目は数百kmの長さに達し、内部の応力を示すように複雑な模様を刻んでいた。
だがその下には、深さ 100 km以上、体積にして 地球の海の2〜3倍 に相当する液体の海が広がっていた。
そこは太陽光がまったく届かない、完全な暗黒である。
表層温度は−160℃前後だが、潮汐加熱による摩擦熱と海底火山の活動によって、海水は −20℃から0℃程度 で液体のまま保たれている。
海水はNaClやMgSO₄などの塩分を含み、地球の海と同等の濃度である。つまり、エウロパの海は 地球の海と同じくらい“しょっぱい” と考えられる。
また、地下マントルからは火山活動によって 硫黄化合物 や メタンが供給される。
さらに、宇宙からの隕石・彗星衝突によって、アミノ酸や単純な有機分子が絶えず運び込まれていた。その濃度はわずかであったが、熱水噴出孔付近では反応を繰り返すのに十分な量であった。
こうして、氷の下の暗黒の海は、「光のない地球の深海」に似た環境を持ち、水、塩、硫黄、そして有機分子のかけらが満ちていた。