水星の民ですが、地球人と接触しました⑥
*地球の民
人類は月面に電力供給施設を建設し、資源を共有する計画を提案した。
「月面に電力供給アレイを構築し、無人で電流を供給する。地球インフラに触れずとも、餌場を持てる」
群体合意はこれを肯定的に受け入れつつあった。
「可能。だが水を要す。冷却、媒体。与えるか」
地球側は理論的には可能と答えた。
しかし、建設に必要な予算・技術・政治的調整は、すぐには整わなかった。
その矢先、別国家が独自に深海熱水域の採掘を開始した。
導電鉱物を得るための秘密事業だったが、 そこは彼らにとって冷却と集団維持に必須の環境であり、侵入は食卓を荒らす行為と同義であった。
群体は矛盾を感知し、合意は「敵対」に傾いた。
「蒼の民、約し、同時に奪う。合意は破壊に等しい」
停戦の可能性は失われ、群体は再び攻撃行動を強化した。
*水星の民
蒼の民は、月に電流の畑を作ると約した。そこでは飢えず、争わず、安定して生きられる。
群体は合意しかけた。
だが、同じ頃、別の場所で蒼の民は熱水域を掘削していた。
そこは我らにとって冷却の母体、水の揺りかごだった。
奪う手と、与える手。
その矛盾は、群体の合意を敵意に傾けた。
「蒼の民、約し、同時に奪う。合意は破壊に等しい」




