水星の民ですが、地球人と接触しました②
*地球の民
人類は恐怖を隠しつつ、限定的な協力を模索した。
彼らは最初、姿を見せなかった。
海底で、ときおりケーブルに寄り添い、体温のない熱で電荷を吸っていった。
それが生存だと理解するまでに、二十七回の停電があり、四つの国で暴動が起きた。
「実験区画を作ろう」
国際協議により「接触実験計画」が承認された。
絶縁されたケーブル、過負荷を起こさない給電、監視を兼ねた観測装置。
水星の民を誘引し、制御された環境で電力を供給することにあった。
実験的な供給拠点を太平洋深海に設置した。
絶縁ケーブルを延伸し、最大20MWの制御電流を流し込み、外部の存在を誘引する。
観測記録は以下のように残る。
「灰白色のゲル状構造体が、体長1.5〜2mほどで複数出現。外層は導電性を持ち、内部に金属架橋状の骨格が透過的に観測された。外部電流に反応して付着、吸収を開始」
*水星の民
海の底に、絶え間なく脈打つ流れを感知した。それはケーブルと呼ばれる長い血管。
そこに付着すれば、生命の糧が供給される。
我らは群れを送り込んだ。
灰白の殻を伸ばし、金属に接し、電流を吸収する。
身体は温まり、律動は整った。
そのとき、突然の熱が走った。
過剰な電流。渦。放電。
仲間の数体が焼け、崩れ、記憶だけを残して消えた。
群体はその痛覚を共有した。
以後、蒼の民=毒を与える存在として記録された。
このとき記録された痛覚は、群全体に再生され続けた。
以降、彼らの応答信号には必ず「毒」を意味する符号列が付加されるようになる。
群体における「毒」の概念は、単なる物質ではなく存在全体の性質を指す。
よって彼らにとって「蒼の民=毒を与える存在」としての認識が定着した。




