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天王星の衛星ミランダから来ました⑥

 氷を破り宇宙を見上げたその夜、彼らは一斉に静止した。

 そこに広がる点の群れは、彼らがかつて水中で光信号で描いた「星座」に似ていた。だが、今目にする星々は仲間の合図ではなく、宇宙の言葉だった。


 彼らは悟る。

 ──「外の宇宙にも仲間がいるはずだ」


 その想いが、文明を次の段階へと押し上げた。


 魚型生物たちはすでに機械と融合していた。殻を強化し、内部に電流と熱を循環させる。やがて彼ら自身が「宇宙船」となった。


 一体一体は小さな生命であっても、群れ全体で設計し、組み上げた船は数百メートルを超えた。外殻はミランダの鉱物と氷を基盤とし、内部に生体を格納する。推進には電磁帆──天王星磁場を利用した電磁場航行。それは風を持たぬ海で帆を広げるような旅立ちだった。


 天王星の巨大な青緑の円盤が、彼らの空を覆っていた。その衛星群の間を抜け、彼らは初めて「母なる惑星の重力」から解き放たれる。


 長い間、彼らは天王星の影で生きてきた。だが今、電磁帆は太陽風を受け、ゆっくりと外縁から内側へと進む。


 彼らにとって旅は数年ではなく、数千年に及ぶものであった。だが集合知でつながる彼らにとって、時間の長さは恐怖ではなく「物語」であった。



 旅の途上、彼らは数多の観測を行った。

 木星圏で強大な磁場を測り、イオの火山を目にした。

 土星の環を越え、タイタンの橙色の大気を観測した。


 そして気づいた。

「この太陽系には、我らと異なる形の生命の可能性がいくつもある」


 だが、彼らの視線はただ一つの方向に釘付けだった。青く輝く星──地球。

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