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天王星の衛星ミランダから来ました④

 ミランダの海に散らばる魚型生物は、単独で生きるよりも群れを作る方が生存に有利だった。群れの中では、前方を泳ぐ個体が敏感に化学勾配を探り、後方に合図を送る。仲間たちはその信号を受け取って進路を変える。


 光の届かない暗闇で、彼らは発光分子を利用して合図を送り合った。点滅のリズム、色の違い、強弱の組み合わせ。それは単なる「光」ではなく、やがて言葉に似た信号となった。


 獲物を狙うとき、群れは一つの意志のように動いた。先頭が発光信号を点滅させると、側面の個体が広がり、後方が囲い込む。小さな生物は逃げ場を失い、群れ全体で分け合うように捕食された。


 次第に「協力して狩りをする群れ」が優勢となり、仲間同士の合図や約束が発達していった。


 発光信号は、やがて「危険」「餌」だけでなく、「ここに留まれ」「分かれろ」「また会おう」という複雑な意味を持つようになった。


 それを処理するために、前方の神経網はますます大きくなり、仲間の合図を覚え、過去の経験を結びつける力が生まれた。


 記憶と学習。

 これが知性の始まりだった。


 そして群れは単なる一時的な集団ではなくなった。


 生まれた個体は、親の群れの光の合図を見て育ち、その合図の意味を学ぶ。合図の「文法」が受け継がれていった。


 それはまるで文化の萌芽のようだった。


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