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水星から来ました④

 宇宙は苛烈だ。水星から直接飛び立つには、太陽重力井戸を越えねばならない。彼らはロケットを使わなかった。


 代わりに彼らは、電磁帆マグネティック・セイルを作り上げた。水星の鉱物で編んだ超伝導格子を展開し、太陽風の流れに乗って宇宙へと押し出されたのだ。


 最初の探査機は無人の「金属の種子」だった。それは数千年の航海を経て、地球の軌道に達した。



 やがて、彼ら自身がその旅に乗り出した。金属とゲルで構成された人型の生命は、電磁帆の内部で群体ごと眠りにつき、数百年の旅を耐えた。


 そしてある夜明け、蒼く光る惑星の大気圏に、彼らの船影が差し込んだ。


 地球の海を初めて見たとき、彼らは長き夢が現実となったことを悟った。


 その姿は、人のようでいて、人ではなかった。灰白の皮膚は半透明に光を透かし、眼のように見える結節は電場を感じ取る。


 だが、立ち姿は人間に酷似し、「遠い親類の幻影」のように見えただろう。


 彼らは言った。声ではなく、電磁の震えとして──


「われらは蒼を夢見、蒼に至った」


 水星の灼熱と闇に生まれた生命は、科学を紡ぎ、群体の記憶を積み上げ、ついに蒼き地球へ到達したのだった。


(終)

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