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水星から来ました③

 水星の人型生命は、最初から「個体の知性」と「群体の記憶」を併せ持っていた。彼らは孤独に動き、資源を探索し、再び群れに戻って経験を共有する。その積み重ねが、集合知に基づく文明の基盤となった。


 彼らが最初に学んだ科学は、火ではなく──電流だった。


 太陽風が降り注ぐ水星の地表で、電荷の流れを感知し、模倣し、利用した。岩の中に導電性の鉱物を並べ、信号を走らせ、最初の「計算」を始めた。


 彼らの都市は石や木で作られたものではない。地下の氷と鉱物の境界に、巨大な金属格子が編み込まれ、それ自体が一つの巨大な思考装置として機能した。


 住居とは、情報を蓄える空洞。

 道路とは、電荷を運ぶ導線。

 都市全体がまるで「一つの脳」のように設計されていた。



 彼らはやがて、太陽を研究した。昇るたびに灼熱をもたらす恒星は、畏怖と同時に最大のエネルギー源だった。


 彼らは昼夜の極端な温度差を利用して、熱電発電と光子の直接捕獲を行い、昼はエネルギーを蓄え、夜に文明を動かした。


 科学は加速度的に進んだ。なぜなら、彼らの記憶は「個人の脳」ではなく「群体の全体」に刻まれていたからだ。失敗はすぐに共有され、改良は瞬時に拡散した。



 地下から氷を突き破り、外界に触れた彼らは、夜空に輝く星を観測し始めた。


 彼らにとって最大の謎は、蒼い星・地球だった。


 光のスペクトルから大気の存在を読み取り、水が豊富であることを知った。


 「蒼こそ我らの夢の象徴」

 集合知の中に、その言葉が幾千の世代を超えて残った。

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