朝の散歩と、見えない景色
朝の空気は、ひんやりとしているけれど、どこか安心感があった。
私はいつもの道を歩きながら、木々の葉っぱに光が差し込む様子を眺めた。
通り過ぎる人々は、それぞれの世界を持っている――そう思うと、自分はどこに属しているのだろう、とふと考える。
「私は本当に一人で歩いているのだろうか?」
心の中で問いをつぶやく。
答えは見えない。けれど、道端で花を揺らす風や、遠くから聞こえる鳥の声が、静かに答えをくれている気がした。
途中、小さな公園に差し掛かる。ベンチに座っていた年配の男性がにこりと笑った。
「おはよう」と声をかけられる。短い言葉なのに、胸の奥がほっと温かくなる。
その瞬間、自分は孤独じゃない、と小さくうなずいた。
歩きながら考える――人生の中で、見えないつながりや、気づかない優しさがたくさんあるのかもしれない。
時間も、人も、すべては流れているのに、確かにここに「今」がある。
私はまた歩き出した。
足音が地面に残るように、目に映る景色や触れた空気も、静かに心に刻まれていく。
問いは消えなくても、温かさがそっと包んでくれる――そんな朝だった。