48、アレクシスの前世③
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次の日の朝。いつも早めに出社しいる俺は、いつも通りの時間だったが、瑠璃はいつもより早く出社していた。
始業前に少し時間ください、と言われて昇降口だと今の時間は人が来ないはず、とそこへ向かう。
昨日の今日なので、返事か?返事なのか?!と内心は荒れて心臓も早鐘をうっていたが顔には出ていなかったと思う。
『昨日のことなのですが...今は妹が私の中では最優先で、仕事もまだ覚えることも多くて。なんというか、恋愛をするのに心身ともに余裕がないんです...』
これは断られるのでは、と焦燥感が込み上げる。しかし、まだ言葉には続きがあった。
『あの...妹が落ち着くまでは、妹を優先させていただくことになると思います。それでもよければ....こんな私でよければお付き合いさせていただきたいです』
一瞬、何を言われているか理解ができなかった。ポカンとした表情で見ていると、だんだん顔を赤くしてわたわたしだす。しかし次の瞬間何を思ったのか、一転して顔が青くなった。
『あ、すいません。そんなの失礼ですよね。図々しいですよね。やっぱりこの話はなかっ『なかったことにはしない!本当に付き合ってくれるのか!??』
驚きのあまり頭が真っ白になってしまったが、徐々に理解して食い気味で聞いてしまう。
瑠璃はその勢いに驚いたのかびっくりした顔をしている。
『はい。その...昨日一晩、城田さんに言われたこと考えてたんです。今まであまり改めて振り返ることが余裕がなくてなかったんですけど…。いつも城田さんに助けていただいていることを再認識しまして。それで…』
(感謝の印で付き合うって言うのは違う気が...。まぁでもスタートラインに立てたと言うことでいいのか...?)
そんなことを考えつつ言葉の続きを待つ。
『城田さんに感謝と共に、好意を持っている自分にも気づきまして。だいぶ、鈍いのかもしれませんが...。あと今まで私が頑張らなきゃいけない、と思って気を張っていたのですが、頼ってほしいといわれて、単純にとても嬉しかったのもあります』
少し視線を下げつつも照れくさそうに、はみかみながら気持ちを伝えてくれる。
(やばい、めっちゃ可愛いんですけど何この生き物...!!!)
内心身もだえ、思わず抱きしめたい衝動に駆られるも、話し声が聞こえてハッと会社であることを思い出し、ギリギリのところで踏みとどまる。
『じゃ、じゃあとりあえず、今日からよろしくな』
『よ、よろしくお願いします』
よっしゃー!!!!と叫びたい気持ちを抑えて、平静を装って年上ぶって、でも少し我慢が出来ずに頭をなでた。
それから会社では何かと嫉妬されて、嫌がらせのようなことをされていることも知っていたため、会社の人たちには内緒にすることにした。
妹優先ということで、デートもご飯だとかで2人でたくさん出かけたりとかは最初はできなかった。それでも幸せだったが、3か月くらいして紫苑に紹介されて、家のごはんにお呼ばれされるようになった。すると紫苑が気を効かしてデートをする時間がとれるようになり、距離を縮めることができた。
紫苑はとてもお姉ちゃん大好きで、最初はとても警戒されていた。それでも瑠璃の幸せそうな顔を見たからか、認めてくれるようになった。
最初は瑠璃のために紫苑とも仲良くならなくてはと思っていたが、ただのお姉ちゃん大好きないい子だったので、そこまで気負わなくても大丈夫だった。
瑠璃は両親を一度に、そして祖母も亡くなり、紫苑にはより過保護になってしまっているようだ。
それは紫苑もわかっているみたいだが、それで瑠璃がそれで安心するならということで受け入れている。
逆に紫苑も瑠璃には過保護だ。
でもそれで俺たちが2人きりの時間をあまり取れてないと感じ取った時には声をかけてくれる。
『そもそも、お姉ちゃん過保護なんだよ!もう大学生なんだから1人でもできるよ!たまには旅行とかに行っておいで!』
旅費はとーまさんだしてくれるよね?と言ってこっちみているが。まぁそれは当然だすが。
ただ瑠璃が全部こちらがお金を出すと気にするから、瑠璃の誕生日近い土日などに、誕生日のお祝いでとか言って連れて行くことが多かった。
両親が亡くなってからは旅行にもいってなかったみたいで、とても楽しんでいたと思う。
俺も瑠璃とはいろいろと初めてだったこともあり、ただ年上だしその歳までシタことがないのも気持ち悪いとか思われたくなくて必死にいろいろ調べて余裕ぶった。でも最後はもうタガが外れて夢中で瑠璃を求めた。
うまく隠せたとは思う。
初めてキスしたときに、今まで手を繋ぐだけでもゾワゾワしてたのが嘘のように、もっと触れたいと強く思った。
昔助けてもらったときに見たあの笑顔に、すでに惚れていたのかもしれない。
だから他の誰でもだめだったのかも。
断じてロリコンではないが。
プライベートが充実していると、仕事のモチベーションもあがり、仕事でも成果をあげていくことができた。
そんな充実した日々が5年ほど過ぎた。
ついに紫苑は大学4年生になり、就職活動も始まった初夏。プロポーズを検討してもいいのではないかと思い始める。
もう最初からだが瑠璃との結婚しか考えられなかったため、虎視眈々とタイミングを見計らってきたのだ。
前に男避けのための指輪は渡したが、次はちゃんとしたのを選びたい。
ちなみに今はペアリングとして俺の分も買い、会社の人にバレたら困るから休みのときだけつけている。
瑠璃の家に遊びに行ったときのこと。たまたま瑠璃が席を外した時、スマホでプロポーズについて検索していた。すると紫苑が後ろから来たことに気づかず、見られてバレてしまった。
『とーまさんついにお姉ちゃんに!!??』
『しー!!!あぁ、まぁ、お前も落ち着いてくる頃合いかなと、思って、そろそろいいかなと…』
ちょっと恥ずかしさもありながら、紫苑には隠すことでもないかとしどろもどろになりながらも、プロポーズを考えていることを伝えた。
『いいね!!すごくいいと思う!!私はもう、いつするんだろうとヤキモキしてたんだから!あー...でも、斗真さん、その...1人で計画立てる予定だった…?』
聞きづらそうに聞いてくる。まぁ、そうなるか。今までは彼女が自分で行きたいところに行くのに付き合っていたが、瑠璃はリクエストをあまりしないため、俺が考えることが多かった。
選んだ場所は瑠璃は楽しんでくれていたように思うのだが、のちのち紫苑にダメだしされていた。
センスがひどく悪いらしい。友人にも確認したが驚かれた。
『あの....ちょっと失礼だけど、斗真さんのセンスあまり良くないからなぁ...私もちょっとだけアドバイスしていい?お姉ちゃんのために。お姉ちゃんはこれまで本当に、青春時代も捨てて、私第一に生きてきた人だから。これからは自分の幸せだけを考えてほしいんだ。その最初の一歩の手伝いをさせてほしいの』
ここまで言われて断ることは出来なかった。
それに、俺にセンスがないことは確かだった。
今まで女と付き合ったことはあったが、いつもあっちの要望通りに付き合ってただけだったから、いまいち女性が喜ぶようなことがわからず、ズレているらしい。
最初のデートも行き場所は当日のお楽しみにとサプライズにした。サプライズは喜ばれると誰かが言っていたから。
開放的なところに行きたいと言っていたから登山にした。瑠璃は楽しんでいたと思うが、紫苑にはドン引きされていたらしい。今でも話題に出される。
それからプロポーズに向けて紫苑に意見を聞きつつ、1回だけ瑠璃には内緒で紫苑も気になるという場所の下見にも一緒にいった。
指輪も用意したりして準備をして3か月ほど。
その間に紫苑も就職先を決め、計画も大詰めのとき、紫苑の誕生日と就職祝いのパーティーをすることになった。
その日はたまたま仕事もいつもより早く終わり、定時で帰ることができたので、準備を手伝えるかもと早めに瑠璃の家に向かった。
家に着くと紫苑は缶チューハイを飲んでおり、料理はあとはあっためるだけという状態だった。
『…手伝うことはなさそうだな』
『凝ったもの作ろうと思って早めに着手したけど、早すぎたみたい』
早い到着に驚きつつも家へと上げてくれた紫苑は、手持無沙汰になりとりあえず飲んでいたらしい。
それなら、とプロポーズ計画の最終確認をしようとソファーに座ってスマホをみた。
紫苑も何か勘づいたのか横に座りのぞき込もうとしたため、念のため確認しておく。
『…瑠璃にはバレてないよな?』
『ふふっバレてないよ。そんなへまするわけないでしょ』
『それならいいけど...紫苑って顔になんでも出るから心配なんだよな...』
『失礼な!それにお姉ちゃん、こういうのは鈍いから大丈夫でしょ!』
『鈍いって...まぁ、それもそうだな』
たしかに恋愛面に関しては殊更に鈍感な部分があるから否定はできない。それは置いておいて、瑠璃が喜んでくれるかが重要なので、紫苑にも最終確認をしてもらおう。
『じゃあ瑠璃が帰ってくる前に...』
『んっそうだね。ヤろっか。』
途端に缶チューハイを飲んでいたのをやめ、やる気満々な顔をして俺の手に持っているスマホを覗き込んだ。
そのときバン!!と勢いよくドアが開き、ビクっと肩がはねた。
思わず振り返ると、そこには今日会議で遅くなるかもと言っていた瑠璃が立っていた。
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