43、ずっと近くにいたのは
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すると、ポイズナー大司教は頭をわしづかみにし顔を上向かせようとしたところで銀色の髪の鬘が取れた。
「もー!限界!!これ以上、お姉様について話さないで!!」
その言葉とともに、目を見開いて驚いているポイズナー大司教は顎下から強烈な一撃を受け、視界が真っ白になった。
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「アスターは大丈夫でしょうか…」
「アスターなら大丈夫だ。あの子は強い。ルカと互角に戦えるくらいだ」
「え…?そんなに…?」
そんなことをいわれても全く信用できない。
アレク様は何をもってアスターが強いと、大丈夫だといっているのか。
今私は王都郊外の木々に囲まれたログハウスのような小さな家を、木の影に隠れて様子を伺っている。
ハラハラしながら見ていると、2階の角部屋の窓から白い光が見えた。
「あ!合図がありました!」
それを確認したアレク様は騎士団に目配せする。騎士団長は頷き、叫んだ。
「総員、突撃!アスター・ハーディング公爵令嬢を救出せよ!」
騎士団長の掛け声で一斉に騎士たちがログハウスの中に突撃していく。
その様子をアスターを心配しながらはらはら見守る。
「シェリル。ドレージュ公爵は先ほど捕縛できたようだ」
少し離れて報告を聞いてきたアレク様は、そういって私の腰に手をまわしてくる。
こんな仕事のときも離さないのはいかがなものか。
しばらくすると顎がぼこっと腫れているポイズナー大司教と、若い司祭らしき人が騎士に両腕を拘束されて引きづられるように出てきた。
どうやらポイズナー大司教は気絶しているようだ。
あまりの顎の変形ぶりに、一瞬誰かわからなかった。
驚いてみていると、その少し後ろをアスターが歩いて出てきた。
「アスター!」
たまらず名前を呼んで駆け寄る。
「お姉様!こんなところまで来てくれたんですね!ありがとうございます!あっ足元気を付けてくださいね」
「心配したのよ。怪我はない?何もされなかった?」
思わず全身を確認してしまう。縛られたのか服に少し皺がある程度で他は問題なさそうだ。
「大丈夫です!心配おかけしてごめんなさい」
「それはいいのだけど…本当に、無事でよかった…」
私のすぐ横で様子を見ていたアレク様は会話が終わったことを確認すると問いかける。
「アスター、ご苦労だった。吐いたか?」
「全部、というわけではないと思いますが、大方はおそらく。もう途中で頭にきて手が出ちゃいました。でも間違いなく黒です!」
「じゃああとは魔法で…」
えへっという感じで報告するアスターをみて、驚く。
そんなことを話していると、大きな声が後方から聞こえる。
「この私を誰だと思っている!放さんか!この無礼者どもめ!」
ちょうどそこへ拘束されたドレージュ公爵も合流した。
ドレージュ公爵は私たちに気づいたことで悟ったのか静かにはなったが、私のことを熱のこもった目で見つめている。
初めて感じる常軌を逸したその視線にぞわぞわと鳥肌が立つ。
すかざずアレク様が公爵から見えないよう私を抱き寄せ、今すぐにでも殺したいとでも言わんばかりの形相でドレージュ公爵を睨みつける。
「ドレージュ公爵…我が婚約者をどうしようとしていたのか…白状してもらうぞ」
ドレージュ公爵はぎりぎりと音がしそうなほど歯を食いしばりアレク様を睨みつけている。
そしてドレージュ公爵はすでに魔力封じの手錠がされている。
アレク様はアスターに私を託し、家の検分と、公爵や大司教らの捕縛と連行などを指示をしに行った。
ドレージュ公爵が拘束できた段階で公爵家の方にはもう騎士を差し向けている。
「アスター、本当に怪我はないのね?」
大丈夫だと先ほども聞いたが、心配でつい同じことを聞いてしまう。
「もう、大丈夫よお姉様。私、ヴァネッサに会った殿下の誕生日パーティーからずっと鍛えているんだから」
「そんなの初耳よ。なんでそんなこと…」
「お姉様を守るために決まっているじゃない!誕生日パーティーのとき、私、何もできなかったから…」
「それでいいのよ。あなたは私の妹なのよ?私が守るのは当然だわ」
「…それじゃあ、だめなの。私…私が、お姉様を守って、幸せにしてあげなきゃ…」
「アスター…?」
思い詰めたようにそうこぼしたアスターを不思議に思い見つめる。
「今度こそ、お姉様を幸せにするって決めてたの」
「…今度こそ…?」
「ん?今度こそ?…なんか、自然とでてきたけど…。とりあえず!お姉様の幸せのためなら何でもするって決めてたの!ずっとずっと前から。私の幸せは、お姉様の幸せだから!」
そう言って頬を赤く染めて笑ったアスターをみて、前世の妹、紫苑の顔を重なった。
『私の幸せのためには、まずお姉ちゃんが幸せにならないと!』
前世、紫苑によく言われた言葉だった。
(なんで、忘れていたんだろう…)
それを思い出した私は、目から涙が溢れて止まらなくなった。
「え?!お姉様?大丈夫?何かあった?え?え?」
アスターはおろおろと私の周りで右往左往している。
(なんで、気づかなかったんだろう…こんなに近くにいたのね…)
こちらの様子に気づいたアレク様が飛んでくる。
「シェリル、どうした。アスター、一体何を…!」
「私!?やっぱり私なのかな。私はなにも…」
「じゃあなんでシェリルが泣いているんだ!」
そんな話を聞いていても、涙は一向に収まらないい。
この言葉にできない気持ちはなんだろう。
その衝動のまま、2人に勢いよく抱き着いてぎゅっと抱きしめた。
「「!?」」
2人はいきなり私がこんな行動をしたからか、驚いて固まった。
「…2人とも、大好きよ」
そんな2人に、今胸に溢れたその気持ちを言葉にして伝えた。
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