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前世、妹と恋人に裏切られた悪役令嬢は恋愛なしの穏便な道を平凡に生きていくはずだったのですが...  作者: はな


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26、予期せぬ爆弾投下



 確かに部屋の外にいる騎士の数が多いとは思ったけれど、事件後なのでこんなものかと気にしなかった。

 そして扉を開いてくれた人はよく考えなくても看護師的な感じではなかった。おそらく陛下の侍従だろう。


 内心自分の考えの浅さに嫌気がさしつつも、急いで臣下の礼をとる。


「国王陛下にご挨拶申し上げます。いらっしゃるとは知らず、大変失礼いたしました」

「シェリル嬢か。今は公の場ではない。そう畏まらずとも良い。クロードの見舞いにきたのだろう?こちらに座りなさい」

「…はい。ありがとうございます」


 陛下は壁に控えていた侍従に椅子の準備をするよう目配せし、すぐにお父様へと視線を戻した。


 お父様の顔色は倒れた時に比べると幾分かよくなってはいるが、相変わらず悪い。


 しばしの沈黙の後。


「こうしてゆっくり話すのは初めてだな…いつもアレクシスが世話になっている。シェリルと呼び捨てにしてもいいだろうか?」

「どうぞご随意に」

「ありがとう」


 そういうと陛下はまたしばらく黙ってお父様の顔を引き続き見つめていた。

 私も何を話せばいいのかわからず、陛下の横に用意された椅子に座りお父様の顔をじっと見つめていた。


 (…いつの間に、こんなにしわが増えていたんだろう)

 

 最後にちゃんとお父様の顔をみたのはいつだったか。お父様の顔をまじまじ見たこともなく、そもそも1月に一度くらいしか顔も合わせない。お父様と話した内容は覚ええているが、顔を思い出せなかった。

 記憶力がいいはずの私が思い出せないということは、見ていないのだろう。



 そう考えながら見つめていると、陛下はポツリポツリと話し始めた。


「…クロードはな…冷徹宰相などと言われ敏腕を振るい、今では私に…そしてこの国に欠かせない存在となってはいるが…」

「…はい」


 お父様が宰相で、国王陛下の右腕だという話はよく聞く。これから何を話されるかわからないままひとまず相槌を打つ。


「こやつはな…その仕事ぶりを見ているとわからないのだが...口下手でとても不器用なやつなんだ…」

「…」

「仕事の時は、まぁいい。どうでもいい人に対しても、まあいいとしよう。しかし本当に大切に想っている者への接し方がわからないような男だ」

「…それは、どういう…」

「私とクロードは同い年でな。王族と公爵家の関係からもわかるかもしれないが、それこそ物心つく前から交流があってね。所謂、幼馴染というやつだ。私はそんなころから一緒にいるからこやつの性格もわかっているのだが...大切な者の前ほど表情が硬く、眉間の皺が深くなるんだ…」


 陛下とは幼馴染なのはまぁそうなのだろうと思う。しかしいつも眉間にしわを寄せた顔しか見たことがない私にはなんともいえない。話が見えないが言葉を待つ。


「クロードは、頭が良すぎるんだ。頭の回転が恐ろしく速い。そのため幼少の時から子供らしからぬ子供で、同年代に混ざっても異質な存在だった。同年代で話が合うものはいなかったんだ。エリオット…クロードの兄はそんな弟でもとても可愛がっていて、クロードもそんな兄には心を許しているのかとても仲が良かった」

「お父様の…お兄様?」


 お父様にお兄様がいるのはなんとなく知っていた。だが仲がいいとは初耳だ。ハーディング公爵家では叔父様の話は禁句であったのだ。

 理由はわからずともみな触れてはならないとばかりに口をつぐむので聞くに聞けなかった。


「そのエリオットも…今はもうアスターを遺していなくなってしまったが…」

「…え?アスター、ですか?」


 なぜここでいきなりアスターがでてくるのか。今の言い方だとまるで…


 ──まるで、アスターは叔父様の子供ということではないか


「ん?…まさか、それも聞かされていないのか?」

「は、い…。アスターは私が5歳のとき、いきなり今日から私の妹だと紹介されて…。てっきり、外に愛人でもいてその人との子供なのだとばかり…。見た目も…髪色も瞳もお父様に似ていたので…」


 そう、お父様とアスターは髪も瞳も同じ色。ミルクティーのような明るい茶髪にも桃色の瞳である。私も桃色の瞳は同じだが髪色はお母様譲りのようで、私よりよっぽど親子に見える。



「!!愛人などっ!それはクロードに限ってありえない!…なんてことだ…言葉足らずにも程がある…」


 私の返答に驚いたのか陛下は驚愕の表情で顔を青くした。信じられないという顔で私の顔とお父様を見比べた。


 再びしばし沈黙が流れた。


 私もいきなりアスターとは腹違いの姉妹ではなく従姉妹だった。ということをカミングアウトされ、言葉が発せない。


 しばらくして整理をつけたのか、陛下が私を見て言った。


「ここまでとは想定外だったが…クロードのことを考えると納得もしている…。私の知っている範囲にはなるが、クロードのことを話してもいいだろうか。こやつが悪いのはその通りなのだが…。こんな状況になっても愛する娘に誤解されたままなのは、長年の幼馴染としても同じ親としてもいたたまれない…」

「…愛する、娘?…誤解?」

「!そこまでか…シェリル、少し時間をもらってもいいだろうか。少しあちらでお茶をしながら私の話を聞いてほしい。…あまりにもクロードが不憫で…」

「は、い…わかりました…」


 陛下は泣きそうな顔になりながらもお父様を擁護しようとする。為政者がこんなに表情にでていのかとも思うが、先ほど公の場ではないと言っていたからそのせいか、など思考が現実逃避する。


 そして愛する娘と言われてもなにもピンとこないが、時間もあるし断ることでもない。


 部屋は変えないまでも、テーブルセットの方に移動して陛下はお茶の用意を命じた。


 少しして運ばれてきた香りのいいお茶と美味しそうなお菓子を前に人払いした陛下は、どこから話そうか…といいつつもゆっくり話し出した。



 それはお父様や陛下が幼いころまで時を遡るーー


読んでいただきありがとうございました。

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