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2.今世のいもうと



「シェリルお嬢様!目が覚めたのですね!!!」

「おはよう、サラ。私は何日くらい寝てたのかしら?」

「3日です。ご体調はいかがですか?大丈夫そうでしたら、朝食をお待ちします。そのあとお医者様をお呼び致しますが...」

「そう、3日も...。体調は大丈夫よ。朝食をお願いするわ。心配かけてごめんなさいね。ありがとう」


 サラは目を見開き、とてもびっくりした顔をして口をあんぐりとあけた。


「シェリルお嬢様が...ごめんなさい、と、ありがとう...ですって...!?」


 思わずジト目で見てしまった。


「ひっ!そ、それでは、い、一度失礼いたします!!」


 サラは青い顔をして勢いよく、でも物音はあまり立てずに出ていった。失礼な心の声がたまに漏れる小心者だが、仕事はできる。

 サラは赤茶色の髪を三つ編みにして、そばかすがあるが愛嬌のある顔をしたシェリルの専属メイドだ。


 そんなに驚くこと?謝罪とお礼を言っただけなのに...言ったこと、なかったかしら...?

 ......思い返すも言った記憶がない。たしかにすでに態度も7歳とは思えないほど偉そうだったかも。まあ実質地位は高いのだけれど。


  でも幸いまだ7歳ということもあり、家族以外の人と関わることもなく、特に悪いことなどはしていないようなので一安心。


  このままだと処刑されてしまうとわかっていて、物語通りに生きていくという選択肢はない。

 前世も30歳にもなれずに死んでしまったのだ。今世はやりたいことをやってから死にたい。せっかく公爵令嬢という、資金面の心配がないところに生まれたわけだし。


 それにここは科学の代わりに魔法が発達した世界。


(前世は魔法がなかったせいか、魔法には興味があるのよね。)


 ラスボス的な悪役令嬢は頭の出来が違うのか、なんでも1回で覚えてしまう。

今後は恋愛も結婚もする気はないし、自立するなら家を出て、のんびりした田舎でのんびり魔法を使った仕事を何かして生きていこう。まだ魔法を使う仕事は何があるかわからないからそこは要検討。


 今後について真剣に考えていたため、そっと開いたドアの隙間からこちらを見ている人影に気づくのが遅れてしまった。

 視線を感じて見てみると、ドアの隙間から私と同じ桃色の瞳に、明るめの茶色の髪をした可愛らしい女の子がこちらをそっと覗いている。


(あ、あれはアスター?やっぱり小説のヒロインだけあって可愛いわね)


 小説の世界と認識したせいか、改めてみると今までとは少し見方が変わった。


 腹違いの妹ってだけで嫌悪感がすごかったけど、悪いのはあの子じゃなくてお父様だ。

 アスターだって母親が亡くなって、1人で寂しいからずっと私の近くを彷徨いていたのだろう。


 もともと腹違いの妹がいたことに嫌悪感があったが、それをよくわからないがアスターに向けていた。妹は2年ほど前の私が5歳のときにこの屋敷にきた。


 浮気された過去を思い出したせいで、より一層嫌悪感が強くなる。でもそれはお父様に対して向けるべきものだ。この政略結婚もあるこの貴族の世界では、男女ともに愛人とか庶子とか珍しいことではない。

 そして、子供ができるのに悪いのは、どう考えても親だ。なのに親ではなく子供が虐げられることが多い。でもそれは間違ってる。子供は親を選べないのだから。


 今からでもアスターと仲良くなって、良好な関係を築いたら、もし物語の強制力とかあって何かが起きても、私がやっていなかったら冤罪だと信じてもらえるかもしれない。今の私には虐める気は毛頭ないのだから。


 今後の方針を決め、今までは無視していたが、思い切って声をかける。


「あの、アスターどうし「ご、ごめんなさい!!お姉様が心配で、つい...!!お邪魔しました!」」

「...え?」


 びっくりしたのかピョンっと飛び跳ねて、言葉の途中で謝ってきたと思ったら、すごい勢いで慌てて去っていった。


 ポカンと去っていった様子をみて、首を傾げる。


(私、何かしたかしら。たしかに以前、私に関わるな。と言ったけど...)


 たしか1年半ほど前。うちに来て半年くらいしたときに、嫌悪感があって関わりたくないから無視してた。それでもめげずに近くに寄ってきて、話しかけてくるからイライラして『私の周りをウロチョロと。私の視界に入らず、関わらないでちょうだい。いい加減目障りなのよ。邪魔』とキレたことがある。


(あれを覚えているのかしら…?)


 何はともあれ、今後は無視せず、気長に関係を作っていこう。まずは謝らないと始まらない。


 そのときちょうど、サラが朝食を運んできた。いい匂いがしてくぅ、とお腹が鳴る。


(3日も食べてないならお腹はすくわよね)


 まだ7歳だし、小説が始まるのはアスターが15歳になる年だからあと9年もある。


 それに、妹に裏切られたという気持ちも前世を思い出したことにより、シェリルの心に影をおとす。急には無理だから、自分の心にも猶予を与えたい。


 ひとまずは腹ごしらえ!と切り替えて、ご飯を食べることにした。


 お医者様にはしばらく安静にしていれば大丈夫でしょうと言われ、それから1週間ほどベッドの住人となったが、無事回復した。


 その間、お父様は見舞いには来なかった。


(まぁ、今更なにも期待していないけど)


 愛人だかなんだか知らないが、過去でも現在でも不倫している段階で家族を大切にしている人ではないのだろう。思い返しても、無表情であまり話した記憶はない。


 そんな私の性格は前世を思い出したことによって、シェリルと瑠璃の性格が統合されたのか。もとの瑠璃の性格のようにおとなしくもないが、小説のシェリルのように傲慢な感じではない、と思う。


 再び、普段マナーや一般教養の授業も始まったため、魔法に関しては寝る前の時間に本を読むことから始めることにした。

 サラに聞いた話だと、この国では本来は魔力が安定する10歳から魔法を学ぶものらしい。そもそも魔力を持っていても、魔法として使えるほど魔力が多いのはやはり貴族に偏っているとのこと。


 この国の成り立ちからも、魔法が使える人たちが国を纏めていったそうだから、それが関係しているんだろう。

 その頂点にたつ王族は、やっぱり魔力が多いらしい。王族と縁づくことも多い高位貴族になるにつれて多くなる。平民は操れるほどの魔力はないが、魔道具とかは使えるようで、火を出したり水を出したりはできないそうだ。

 まだ初歩的な本を読んだり、サラから話を聞いただけだけど、わくわくしてくる。


(早く10歳になりたいなぁ...)


 自然に触れることも、空気中にある魔力、いわゆる魔素を感じるために大切なことらしい。ということで運動も兼ねて昼食後は庭を散歩することを日課にした。

読んでいただきありがとうございます。

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