20、困惑...だけじゃない?
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言葉を受け、驚きとショックが大きくて固まってしまった私に対して、アレク様は言葉を続けた。
「今までも、言葉にはしてなくても態度で示してきたつもりだった…が、その様子だと未だに何も伝わっていなかったんだな」
「そ、それは…」
「俺が悪いんだ。最初、契約のようなことを言ってしまった負い目もあって言葉にはしていなかったから」
「負い目…」
「それとも、俺以外で好きなやつでもいるのか?」
普段はきれいな黄金色の瞳が、どろりと濁った気がした。冷ややかな冷気も感じられ、無意識に冷や汗が背中に流れる。
「そ、そんな人はいませんが…」
「そう、それならよかった」
理解が追いついていないが、話がどんどん変わっていくことにあまり深く考えずに返事をしてしまう。
アレク様はにっこり笑って、いつもの雰囲気に戻った。嘘を言ったわけではないがほっとする。
「でも、私はだれとも結婚する気はないって、最初お話ししましたよね。恋愛もする気はないんです…」
「知っている。だけど、俺は真剣だ。ずっとシェリルと一緒にいたい。ずっと俺のそばにいてほしい。俺はシェリルがいれば他は何もいらないんだ」
「どうして、そこまで....」
たくさんの熱烈な言葉をかけられるが、どうしてここまで私のことが好きなのかわからない。
確かに友人のような関係を築いてはきたが、何がどうしたらここまでになるのか。
混乱してる頭で考えても何も答えはでてこない。
「.....シェリル」
再び固まってしまったが、名前を呼ばれて顔を上げると、私をまっすぐに見つめるアレク様と目が合った。
溶け出しそうなくらい熱を浴びた黄金色の瞳から、視線が逸らせなくなる。
「俺はシェリルが思っているよりもおそらくずっと、シェリルのことが好きなんだ」
「…っ」
「俺の世界を彩って、変えてくれた君をとても愛おしく思っている」
そんなことを言われても特に何もした記憶はない。いい距離感を保っていたはずだった。
アレク様は視線は逸らさず、片膝をついて私の手の甲に唇を押し当て上目遣いのまま言葉を続けた。
「これからは遠慮しない。存分に俺の気持ちを伝えさせてもらうから、そのつもりでいてほしい」
そのつもりもなにも、もう頭が理解を放棄している。それなのに悔しいくらい胸が高鳴ってしまう。
アレク様は返事さえ返せなくなった私の手を引いて馬車に戻った。
馬車の中で会話はなかったけれど、こんな状況なのに不思議と気まずさを感じない。
隣に座るアレク様からの視線を感じてはいたが、私はずっと流れていく窓の外の景色を眺めていた。
キャパオーバーになった頭の中は混沌と化していたが、理解はできずとも少しずつ頭は冷えてきた。
やがてハーディング公爵邸に到着し、アレク様のエスコートで馬車から降りる。
「あ...」
先ほどまでアレク様の方を見ないようにしていたのに、つい差し出された手を当たり前のように取ってしまった。長年の習慣とは怖い。
そんな私を見て嬉しそうに笑ったアレク様にどきりと心臓が跳ねて落ち着かなくなる。
玄関先の少し離れたところでアスターが出迎えにでてきているのが見える。
馬車を降り、手を握られたまま向かい合う。これでアレク様とはお別れだと思うと、不思議と寂しくなった。
挨拶のため目線を上げてアレク様の顔を見たとき、アレク様はずっと私を見ていたのかすぐに目があった。
「シェリー、今日は時間をくれてありがとう。約束を反故にした件は許してもらうために何でもするから要望があれば言って欲しい。いきなり混乱させて申し訳なかった。...ゆっくり休んで」
上目遣いで優しく最後に私の髪を一房とり、唇を落としてから馬車に乗り帰っていった。
それを見たアスターが何か騒いでいるが、何も耳に入らずふらふらと自室に戻った。
ドアが閉まるのと同時にその場にずるずるとしゃがみ込み、胸の辺りをぎゅっと抑える。
心臓が早鐘を打っている。
これは...平穏な人生を目指していたけれど、そううまくはいかないのかもしれない。
アスターとアレクシスの物語のはずが、悪役令嬢である私にアレクシスが告白している時点で物語はもう破綻している。
たしかに、最近はスキンシップが多いなとか思うことは多々あったけれど。
気のせいかと思って気にしないようにしていた。
アレク様の婚約者になってから、程よい距離感を保ちつつ友好関係を築けていたと思っていたのは私だけだったのか。
でもこれまでのアレクシスの態度などなら納得している自分もいて。
明日も王太子妃教育があるため王宮に行かなければならない。
ひとまず思うのは、そのときにまたお茶会があるだろうからそこで話し合わなければ、ということ。
告白されてから確実にアレク様のことを意識してしまっている。
ただこれまでの心地いいと思っていた関係が変わることへの恐ろしさもある。
ぐちゃぐちゃの考えの中、どうすればいいのかわからず途方に暮れた。
そしてこれから気持ちを伝えていくと言っていたのはどういうことなのか。
何の答えも解決策も浮かばないまま朝を迎えることになる。
読んでいただきありがとうございます。




