9、王子の誕生日パーティー①
いい天候に恵まれて、王子の誕生日パーティーの日がやってきた。
外は夏になり汗ばむ陽気だが、王城の敷地に入った瞬間から適温になった。魔法で王城は1年を通して一定の温度に保たれているとのこと。
今日は水色のワンピースで、花の小さいコサージュがちらほら縫い付けられている。まだ子供なのもあってひざ下くらいの長さの、ガーデンパーティーだからなのか動きやすさもある軽やかなドレスになっている。髪は編み込んでハーフアップにして巻いてくれた。
アスターは淡いピンク色のワンピースで、大きなリボンがアクセントでついていて可愛い。髪型は高い位置でのツインテールにして白いリボンで結んでいる。
お父様とアスターとともに会場の庭園にはいると、一気に視線が集まる。
お父様は宰相だし、アスターは小説の主人公であることからして可愛い。視線が集まるのも致し方ない、と思いながら王子がいないか見渡す。
アスターを近づけるためにどうするか。いろいろ考えてはいたが、こんなに視線が集まるくらいなら何もしなくても王子のほうから見つけるだろう。私は関わりたくないから頃合いをみて端っこにフェードアウトしよう。
そんなことを考えていたら、国王陛下と王妃陛下の目の前に連れてこられた。
「クロード・ハーディング、国王陛下並びに王妃陛下にご挨拶申し上げます。こちら長女のシェリルと、次女のアスターです」
いかにも不服ですと言わんばかりの顔で私たちを紹介してくれたが、そんなに人前にだすのが嫌なのか。
国王陛下相手にそんな態度でいいのか疑問だが、ひとまず挨拶してカーテシーをする。
「ハーディング公爵家が長女シェリルと申します。よろしくお願いいたします」
「お、同じくハーディング公爵家の次女アスターです。よろしくお願いします」
アスターもつっかえつつも挨拶をすると、国王と王妃から嬉しそうに見つめられた。
「おお、クロード。そちらがお前の娘たちか。何回言っても連れてきてくれないから楽しみにしていた。聖属性との複属性なのにも驚いたが。アレクは少し遅れてくるので先に軽食をつまんでいてくれ」
「とてもかわいらしいわ。公爵が連れてきたがらないのも頷けるわね。2人とも息子ともどもこれからよろしくね」
「...2人とも、もう行きなさい」
第一王子は遅れてくるとの言葉に少しホッとする。
お父様にそう促され、素直にパーティー会場である庭園のほうに向かった。さすが王城の一画なだけあり、様々な花が咲き乱れてとてもきれいに整備されている。
同年代の子供たちはなにかと遠巻きにされている気がする。父親が宰相で公爵家ともなると近寄りがたいのか。親に仲良くするよう言われて様子を見ているのかもしれない。
「お姉さまはさすがですね。国王様と王妃様へのご挨拶、とても緊張しちゃいました...」
「ちゃんとできていたから大丈夫よ」
「そ、それなら、いいのですが...」
にっこり笑って答えると、アスターは顔を赤くしてもじもじ照れた。そのときに周囲がざわったしたのでちらっと見てみると、令息たちと一部の令嬢たちもが顔を赤くしてこちらをみていた。
(アスターの可愛さを目の当たりにしたらこうなるのね...)
主人公ってすごいんだなと改めて実感していると、3人の令嬢が近づいてきた。
先頭の女の子は碧眼で、きれいな金色の髪をアスターと同じく高い位置でツインテールにしてドリルのように巻いており、赤いリボンで結んでいる。リボンと同じ大きなリボンがついた赤いドレスを着ている。
アスターと髪型とドレスに大きなリボンというところがかぶっている。
その後ろには灰色の目をして茶色い髪を高い位置で片方に結っており、黄色いドレスを着ている子と、
もう一人は榛色の目に赤茶色の髪を巻いておろした髪型で、緑色のドレスを着ている。
ぱっと見だと、前世の記憶もあるせいか信号機を思い出してしまった。そんなことを考えていると、金髪碧眼の赤いドレスの子が、扇子をばっとひろげ、顔を半分隠しながら話しかけてきた。
「初めまして。ドレージュ公爵家のヴァネッサと申しますわ。こちらはサシェ侯爵家のミリアとジュード伯爵家のアマリア」
「...初めまして。ハーディング公爵家が長女シェリルと申します。こちらは妹のアスターです。どうぞよろしくお願いいたしますわ」
3人にとっても睨まれている。子供なのもあるからかそこまで怖くはないが、初対面でなんでこんなに睨まれなければならないのかわからない。困惑しつつも挨拶をする。
「ハーディング公爵家...宰相の。取り入るのが上手い家系なだけあるわね。庶子の妹と仲が良く見えるけど、平民の血が混ざった卑しい娘と仲良くするなんて。あなたのレベルもしれてるわね」
いきなり子供らしくない言葉で侮辱される。横でミリアとアマリアも頷きながらにやにや笑っている。
(なんなのこの子たち。いくら子供とはいえ初対面の人に言っていい言葉じゃない。)
アスターはその言葉に顔を真っ青にして震えている。
「...そうですか。それではご不快でしょうから私たちはあちらの方へ行きますわね。ご機嫌よう」
こういう人たちは基本こちらの話は聞かない。相手にしないことが一番、と前世の記憶からそう判断し、アスターの顔色も悪いのですぐにその場を離れることにした。
アスターの手を引いて歩き出そうとしたとき、行く手にヴァネッサが回り込んできた。




