プロローグ
初めて連載してみます。優しく見守っていただけると幸いです。
「シェリー…君を愛してる。愛してるんだ…」
「な、なにを...んっ!」
雨の中、言葉の途中で腕を引かれ、ぎゅっと抱きしめられた。アレクシス様の手は震えている。
雨のにおいが混ざっても損なわれない、アレク様の良い香りと、優しい体温に包まれ、鼓動が速くなっていく。
「もう、俺を1人にしないで...シェリルがいないとダメなんだ...生きていけない...」
抱きしめられながら、耳元で震えて少しかすれた低い声に囁かれ、心臓が大きく跳ねた。
「わ、私は...んっ……」
顎を掴まれたかと思うと、上を向かされ、至近距離で私を切望する黄金色の瞳と視線が絡んだ瞬間、唇を塞がれた。
「ずっと俺のそばにいて…」
「アレク、様...」
唇が離れた後、耳元で囁かれる。甘く切ない懇願するような言葉に目眩がした。再びきつく抱きしめられる。
(認めたくないけれど...もう手遅れなのかもしれない)
私は今世、恋愛も結婚もするつもりはなかったのに。彼に惹かれている自分がいることも確かで。
雨に濡れて冷えてきた体に互いの体温が溶け合っていく。
認めたくない自分と、もう諦めて受け入れている自分と。
内心ぐちゃぐちゃで抱きしめ返すこともできず、ただただ雨の中抱きしめられていた。
読んでいただきありがとうございます。