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触手とダンジョン攻略  作者: 桃野産毛


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第63話 義勇

 ホラー映画の中でも、

同じはずのチェイサー役が別シリーズでは違う動きをすることがある。

例えば、ゾンビが走れなかったり、走れたり。

監督とか演出家の違いもあるが、

恐ろしさを演出するためであることは変わりない。


「ちょ! 櫻葉!

それこの前のテレビでやってた映画のやつ!」


 俺は今、

身体のあちらこちらから手足を生やして駆け巡っている。

胴体の面積が足りないので、

蛇足からも手足を生やしている。

 地面やビルの壁、瓦礫の隙間を

たくさんの手足でかきむしるようにして這い進む。

声こそないが、

ケンタウルスの何もないはずの顔が

ムンクの“叫び”の絵のようになっている。

 俺は逃げるケンタウルスを追いかける。

回り込んでみたり、並走してみたりと近づく。

 最初は俺がケンタウルスの身体に

触れそうになったら消えていた。

今は、一定距離に入った瞬間、

ケンタウルスの姿が消えて逃げられる。


「明らかに怯えて逃げ惑ってるよ。

櫻葉、いつもそんな感じ?」

「久々の感じかな。」

「いつぞやはパニック映画の終盤みたいでしたね。

軍隊が怯えて逃げ惑うのは、圧巻でした。」


 ポーション事件の時以来のチェイサー役だ。

這い寄るモーションも、

恐怖を煽るように緩急をつける。

 ガーネットから念話が届く。

スタンバイが完了していつでも撃てるらしい。


「あの、魔方陣ヤバイんだけど。

僕遅刻した?」


 無線から財前の声がした。


「遅刻ギリギリでしたね。」

「なんか、勝手に飛び出してごめんね。」


 財前なりにさっきの暴挙は反省したらしい。

周囲がうっすら霧に包まれ出す。


「敵は瞬間移動します。

大体元居た場所から約五十メートル圏内に移動するので、

財前さんは“霧もや”で出現ポイントをおさえてください。」

「僕の“霧”が敵に近づいた。

押さえつけたら、また移動するかな?」

「移動しても、しなくても、

財前さんが押さえつけたらガーネットが魔法を発動します。

何が起きても、驚かないように。」

「無理!」


 俺は財前の“霧”に紛れてケンタウルスに詰め寄る。

まさにホラー映画だ。

 俺は蛇足を使ってケンタウルスをぐるりと囲むようにした。

ケンタウルスは前足を上げて急停止した。

 次の瞬間、ケンタウルスの姿が消える。

俺の背後で、固いものが割れる大きな音がした。

振り返ると、

ケンタウルスが財前の槍を人形の脇腹付近に突き立てられていた。


「ガーネット!」


 俺の声に応えて、魔方陣が光輝く。

魔方陣はビルの屋上に張り巡らされている。

 大きなそれは光を放ち、

中から巨大な牛の頭部が飛び出した。

勢いよく飛び出した牛の頭は、

その角を見えない壁に突き立て、

砕き、暴れて、木っ端微塵にしていく。

 財前は槍をケンタウルスが抜き、

ケンタウルスから目を離さず呟いた。


「バハムートの次は、牛?」

「ベヘモスです。

端的に言えば、でっかい牛です。

今は丁度繁殖期で、気が立っています。

なので、頭だけ喚び出せば勝手に暴れます。」


 あっという間に、壁がなくなる。

ベヘモスを戻したガーネットは、

俺たちのもとへ飛んできた。

 ケンタウルスは空を見上げて、

両手を空に突き上げている。

さっきと違い、俺たちに目もくれず。

ケンタウルスは、

一心不乱に空へ何かを求めて手を伸ばしていた。


「ねぇ、今気づいたんだけど。

皆、そのモンスターなんだと思ってる?」


 財前がケンタウルスから更に距離をとりながら、

何か言い出した。


「戦闘中に回りくどい聞き方はよしてください。」

「ごめんね。

多分、皆ケンタウルスだと思ってるよね。

 よく見たらさ、前足は人っぽいんだよ。

お尻から馬の後ろ足が生えてる。」


 俺は財前の言う通り、

ケンタウルスだと思っていたものをよく見る。

すると、前足には人間のような爪先がある。

後ろ足には、蹄しかない。


「コイツ、ケイローンだ。」


 空から砕けた壁の欠片が降ってきた。

光を反射し、

キラキラとダイヤモンドダストのようだ。

 それは一直線に目の前のモンスターに集まっていく。

砕けた壁を集めて、

モンスターの身体が徐々に光だした。


「退避!」


 俺はそう言いながらモンスターから距離をとる。

財前も大きく飛び退いて、

モンスターから距離をとった。

藤堂はバルカンを放つが、

すべて明後日の方へ反らされた。

 モンスターはその場を動かず、光を強めていく。

壁の欠片はどんどん集まっていく。

どう考えても、これはまずい。


「ガーネット、戻れ!

ミタニさん、二発目行きます!」


 俺はそう叫んだ。

ガーネットは俺の頭部に戻る。

“触手”でガーネットをくるんで、

俺は人の身体を再構築する。


「財前さん、離れて!」


 財前は“もや”を撒き散らして飛び上がる。

藤堂も戦闘機の高度を上げて遠ざかる。

 俺は足を四本に増やし、

右腕に“触手”を集める。

更に、余っている触手をアンカーのように周囲の建物に巻き付けて身体を固定する。

 モンスターの光がどんどん強くなる。

俺は左腕を引きながら、

右腕を捻りつつ思い切り突き出す。

拳の周囲の大気を焼ききり、

真空になった空間を拳が駆け抜ける。

グローブが白く光って、熱を発した。

周囲の大気が真空を飲み込む。

熱は燃料を得て、熱線になり放たれた。

 一直線に突き進む熱線は、モンスターに触れた。

モンスターと衝突した熱線は、

その身体を貫くことができず爆発した。

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