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触手とダンジョン攻略  作者: 桃野産毛


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閑話“嫉妬”

 男が泥まみれで立ち上がり、叫ぶ。


「点呼!」

「一人やられた!」

「こっちは二人だ!

でも生きてる!」

「三人!

一人は骨折ですんでそう!」


 バイコーンとの激闘を終えた“大和桜”のハンターたち。

急いで現状を確認する。


「あの攻撃で骨折だけって、この装備ヤバい。」

「本当にこの装備に助けられた。」

「死亡した三人は、空からの攻撃か。

あれは無理だな。」


 乾いた地面に集められた三つの死体は黒こげになっていた。

バイコーンの泥の投てきもかなりの速度と質量のため、

車に正面から跳ねられるくらいのダメージはある。

だが、ペガサスの攻撃は当たれば即死の高温熱波だ。

どの死体も特に上半身が燃え尽きている。


「……コイツ……、俺をかばって……。」


 そのうちの一つは両腕を拡げた状態だった。

高温で焼かれた死体は本来肉が縮む。

それにより手足の関節が萎縮して、

ボクサーのファイティングポーズのような姿になるはずだ。

それなのに、

大きく両腕を左右に拡げた彼はどこか誇らしげだった。

 全員一時項垂れるも、すぐやるべきことをやる。


「三人の遺品と財前さんの槍を回収。

動けない者はおぶって、壁の穴へ急ごう。」


 財前と合流して、櫻葉のところへ連れていく。

櫻葉からの指示だ。

 ここにいた十三人は全員、

この前の魔王との件の“始めの”生き残りだった。

全員ガーネットとネルによる回復魔法で一命を取り留め、

櫻葉の研究所の簡易装備をもらって今も着ている。

バイコーンの攻撃でも怪我ですんだのは、

この装備があったからだ。


「無事なやつは、

財前さんを叩き起こしてここに連れてくるぞ!」


 空が突然明るくなった。

全員がペガサスが墜ちた方を見る。

 黒い巨人が、拳を振り抜くところが見えた。

あれは大丈夫だ。

 だが。


「……どう見ても、櫻葉さんが本調子じゃない。

急いで財前さんを連れてくるぞ!」


 ここにいる十人は知っている。

あの死闘を一番近い所から見ている。

例え魔法と言う超常の力があっても、

あの死闘の後だ。

彼の身体が万全ではないことは明白。

 先程の遠距離武器を使う彼の姿は、

以前の彼の姿より小さく見えた。


「畜生!

もっと俺たちが闘えれれば!」

「今言ってもどうにもならん!

急ぐぞ! 挽回するには、それしかない!」


 悔しい。口惜し。

なにより、

自分たちの力量不足が堪らなく腹立たしい。

 バイコーンのほとんどは瀕死だった。

無事な個体も、

泥に足をとられてろくに動けず矢の的になった。


 どれもこれも、

自分達の手柄だと胸を張れるようなものじゃない。


 三つの死体から遺品を回収して、

簡易的に弔う。

 彼らは財前の槍も探して拾った。


「急ごう!」


 ハンターたちは、駆け出した。

怪我人を背負い、軽傷者も走る。

嫉妬心で荒れ狂う胸中を抑えながら、

必死に、言い訳をするように。

自分たちの正当性を、維持するために駆ける。

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