表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
触手とダンジョン攻略  作者: 桃野産毛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/143

第60話 勇戦

 墜落する財前。

その腕には黒川を抱かれている。

しんがりの俺から彼らの落下地点まで、

かなりの距離がある。


「全員後退!」


 俺はそう叫んで“触手”のスーツを大きく拡げた。

地面から跳び上がり、ガーネットの魔法で飛ぶ。

 バイコーンの大群は、

器用に地面を角でえぐって石つぶてを作り、

財前たちへ投げ飛ばして追い討ちをかける。

ドローンたちは落下を続ける財前たちの周りを飛んで、

石つぶてを受け止める。

 俺は羽を拡げて、とにかく速度を出す。

間に合うか?


「間に合うよ。

回収して、回復を。

私と私たちで指示した場所にボウガンを撃って。

ネル、いける?」

「はい!

祝福を我らに!」


 ネルがそう叫ぶと、俺の身体が軽くなる。

速度が上がり、

地面に衝突する寸前だった二人をかっさらう。


「二人とも重傷です。

気を失っていますが、生きてます。

 回復処置、完了しました。

ガーネット様。」

「地形把握。

アルジ様、

私が合図したら思い切り地面にアタックです。

“賢者”さん、往きますよ!」


 俺は地面へ向けて急降下する。


「今です!」


 ガーネットの声にあわせて、

俺は地面へ全力の拳を叩き込む。

地面が割れて隆起し、水道管が破裂する。

大量の泥水が吹き出し、地面を覆う。

俺はそのまま着地して、ボウガンを構える。

 財前を追いかけて来たバイコーンの大群の脚を、

泥が絡んで止める。

泥が地面を覆って、

バイコーンたちが石つぶてを拾えなくなる。


「水はお借りしましたが、

泥を魔法で拡げました。

端から見ても魔法に見えないはずです。」


 ハンターたちは俺より後ろにいるため、

泥から離れている。

後、公園に向かって地面が緩やかに傾斜していたようだ。

水も泥もバイコーンを押し返すように流れていく。


「撃って!」


 ミタニさんの座標指示が念話で届く。

俺はそれに従って矢を放った。

 なにもないはずの空へ向かって飛ぶ矢が、

見えない何かに当たって爆発した。


「……なるほど。

あれに撃ち落とされて、財前が落ちたのか。」


 爆炎に煽られ、

それを覆っていた空色の幕が燃え落ち、剥がれる。

幕の下には巨大な天馬がいた。

 天馬と呼んで良いのか悩むが、

空飛ぶ馬のようなもので間違いない。

パッと見二十メートル以上ある巨体。

四本の脚に蹄。面長の顔。

 だが、バイコーンたちのように毛はない。

のっぺりした肌は銀をメインにしたマーブル模様。

顔のパーツもなく、五本の角が額から延びている。

 羽と、呼ぶべきか。

その天馬の背には、

水晶の結晶が翼のように二枚浮いている。

 ついでに言えば、飛ぶと言うより空に立っている。

なにもない空を蹄でかいて立っている。


「このダンジョンには、

SFか何かテーマでもあるのか?

 まぁ、あれを倒せばいいなら、

べらぼうに分かりやすくていい。」


 俺は気を引き締め、

空の天馬と、泥沼のバイコーンの群れを見た。

バイコーンは百頭近くいたが、

さっき財前の援護に矢を八発撃ち込んで数を減らした。

それでも脅威であることは変わりない。

 天馬はこちらを睨み付けている。

まだ動く気配はない。

巨体と言うだけでも脅威だが、

空の上と言う位置アドバンテージは恐ろしい。


「集合!

五人一組でこの二人を確保!

二組で一人運べ!

とにかく壁の穴の近くまで行け!」


 俺はそう叫んだ。

ミタニさんの指示だから、間違いない。

 ハンターたちはすぐ俺に駆け寄り、

二人の身体を抱えて五人一組で六組に別れた。

四組は気を失っている二人を抱えて来た道へ駆け出す。

残った二組と三人は全員“大和桜”のメンバーだ。


「足手まといにはなりません、

しんがりのお手伝いをします!

指示をください!」


 彼らの代表か、一人が叫んだ。

皆の顔は真剣だ。

なら、働いてもらおう。


「指示を出す。

俺のボウガンの矢が残り十二本。

全部撃ち込んでも空のヤツは多分落ちない。

 だから、この十二本をバイコーンの群れへ撃ち込む。

六十頭くらいいるが、

十二本撃ち込めば殆ど減るだろう。

あんたらにはその残ったバイコーンを頼む。

泥でぬかるんでるから、馬の機動力が落ちてる。

飛び道具をうまく使え。」


 ハンターたちは、

まだぬかるみに足止めされているバイコーンを見た。

俺は指示を追加する。


「俺は矢を撃ちきり次第、空のヤツを落とす。

残ったバイコーンを討伐し次第、

あんたらは五人一組で財前に合流しろ。

合流できたら、

財前を叩き起こして、ここに連れてきてくれ。」


 全員がそれぞれ了解の返事をした。


「後、死ぬな。

殺せ。」


 俺がその一言を追加したら、

何故かハンターたちは笑う。


「財前さんは、死ぬな、逃げろって言いますよ。」

「逃げるなら、さっきの時点で逃げるだろ?

ここに残ると決めたなら、敵を殺せ。

一頭でも多くだ。」


 ハンターたちは俺な言葉の意味をわかっていて笑う。

ここがレッドライン。

残るなら、死ぬか殺すかの二択。

途中で逃げようと敵に背を向けた途端、死ぬ。


「往くぞ!」


 俺はボウガンを構え、

ミタニさんと“賢者”の指示に従い矢を放つ。

泥まみれのバイコーンが爆ぜた。

 空の天馬は動かない。

この間に俺は矢を放つ。

他のハンターたちは五人一組で散り、

矢や飛び道具をバイコーンの群れへ放つ。

 やはり、弦が硬い。

バフ付きで引いてもかなりの時間がかかる。

連射できないが、

ミタニさんの的確な指示で

バイコーンの数をどんどん減らしていく。

 天馬はまだこちらを睨み付けるだけだ。

ハンターたちは爆発で瀕死のバイコーンを次々狩って行く。


 突然、ガラスを引っ掻いたような音が大音量でなり響く。


「全員、散開しろ!」


 俺はそう叫んで“触手”のスーツを編み直す。

ミタニさんの援助をもらいつつ、

下半身を蜘蛛のように四対六本の脚を拡げた。


「ネル、スピードバフ。

ガーネット、バリアを脚部へ展開。

走りながら撃つ。」


 俺の後頭部と胸部からハンドクラップが二つ聞こえる。

思考が加速し、周囲が少し遅く見える。

 多脚の利点は、

速度は出ないが上半身が安定することだ。

俺は六本の脚で駆け出しながらも、

バイコーンへ向けて矢を放つ。

 ハンターたちは五人一組を二つと三人一組を一つ作って、

散開しながらもバイコーンを矢で射る。


 空の天馬は、

背中の羽のような水晶が砕けて六つに別れていた。

さっきの音はあれが割れた音か?


「なにか来ます!」


 ガーネットの声に合わせて、

俺はその場を飛び退く。

すると、さっきまで俺がいた場所が爆ぜる。


「太陽光を集めてます!

あの水晶、虫眼鏡みたいに太陽光を集めて、

焦点をこちらに合わせています!」


 俺は移動速度を上げて、

不定期に曲がって爆発を回避する。

太陽光を集めて、と

言われるとレーザーのようなものかと思っていた。

実際は違った。

 チリッ、と音がしたらそこが爆ぜる。

多分水晶は俺に焦点を合わせようとしている。

俺がそれを回避すると、

焦点のあった所の空気が急激に熱されて膨張し爆ぜる。


「全員、止まるな!

動き続けろ!」


 六つの水晶が俺だけでなく、

ハンターたちも狙い撃つ。

五人組のハンターたちは、

さらに二人と三人に別れて散開した。

 バイコーンたちもただやられるだけではない。

泥を後ろ足で飛ばしてハンターたちに対抗する。

だが、バイコーンの群れは泥沼から抜け出せずみるみる内に数を減らす。

俺も最後の一本をそこへ撃ち込む。


「これが最後だ!

全員、バイコーンへ集中砲火!」

「待ってたっスよ!

この時を!

ドローン集合!」


 無線から小田さんの声が響いた。

ドローンたちは俺の周りに集まり、

その外装をパージして俺の目の前に落とした。

いろんな形の外装が目の前に積み重なる。


「それを取り込むっス!

裏はあの超反発のゴムでコーティングしてるっス!

盾にもガントレットにもできるっス!」


 俺は小田さんの言う通り、

ドローンの外装を取り込んだ。


「ミタニさん、

空中での戦闘を想定した形状より、

あれを撃ち落とせる形状を。」

「オッケー。

私と私たちに任せて。」


 俺は移動しながら、形状を再構築する。

ドローンの外装、ボウガン、俺と皆を取り込んだ。

 イメージは“撃ち落とす”。

だが、撃ち出すものはもうない。

なら、どうする?


「“俺を”撃ち込む。」


 地面へボウガンを突き立てて、固定。

ドローンの外装を身体に巻き付け、流線型に構築。

“触手”で地面からボウガンまでのレールを敷く。

向きは上向きだ。

 “触手”とパワーアシストスーツをバラして急ごしらえした弦をボウガンに張る。

端的に言えば俺を弾にしたパチンコだ。


「ガーネット、ネル。

浮遊魔法は弦で撃ち出してからだ。

 今からあの巨体にタックルする。

衝撃に備えろ。」


 天馬が俺へ向けて太陽光の攻撃を集中させる。

しかし、ガーネットのバリアがそれを防ぐ。


「弦を引け!

発射準備!」


 俺の合図で、弦を引く。

引いた所へ自分が乗り込む。

 天馬が慌てて移動を始める。


「もう遅い!

撃て!」


 俺は弦を弾き、空へ向かって吹き飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ