閑話“虚栄”
僕はハンターたちを引き連れて廃墟を走る。
“もや”の足だと走ると言うより低空飛行だ。
「周囲を警戒!
人影を見たら、武器は構えたままで声をかけろ!」
僕は声を張り、指示を飛ばす。
まるでリーダーのように。
「リーダーでいいんだよ。
こまけぇな。」
今は止めてくれ。
右耳にそう念じる。
「物陰や建物内まで見て回る余裕がない!
皆、静かに走って、何か聞こえたら報告!」
崩れかけている建物から距離をとりつつ、
黒川さんや取り残された人を探す。
「少し開けてきた?
地元の人、ここから先は何がある?!」
「もう少し先に公園があります!」
公園か。
その辺りに向かっていくと、
周りの建物が念入りに破壊されていた。
破壊跡には蹄の跡がたくさん見てとれる。
ダンジョン災害の中心はその辺りか?
視界が開けてきた。
公園だったとおぼしき踏み荒らされた平地が広がる。
「なっ?!」
笑い声がする。
人の声だ。
老若男女が楽しそうに笑っている。
目の前にはバイコーンの大群がいた。
一様に上を見上げて、何かを打ち上げている。
イルカショーのボールのように、
たくさんの何かを角で打ち上げて笑っている。
打ち上げていたそれは、人間のパーツだった。
頭、腕、脚、胴体。
引きちぎられた人間の破片を、
楽しそうに打ち上げて笑っている。
その中に、黒川さんが見えた。
彼女は唯一全身が残っていた。
だが、虚ろな目で打ち上げられている。
刹那、バイコーンの中心に爆発が起きた。
僕はいつの間にか飛び上がり、
黒川さんの身体を空中で受け止めていた。
「他は死体だ!
黒川をつれて離脱しろ!」
櫻葉さんが無線越しにそう叫ぶ。
黒川さんが生きてるのか?!
僕は急いで自分の心臓と肺を彼女のものと“同調”する。
僕の胸に激痛が走る。
あの日の仲間たちにしたように、
黒川さんに延命処置をする。
自分の意識を保つことに注力しながら、
急いで皆のところへ飛ぶ。
さっきの爆発は僕が1人で飛び込んだから、
櫻葉さんが打ち込んでくれたらしい。
爆発はいくつも続く。
僕は必死に飛んで、櫻葉さんたちのところへ向かう。
下から石つぶてが飛んできた。
バイコーンたちが僕を追って攻撃してきたらしい。
弓持ちのハンターが、一斉に矢を放つ。
それはバイコーンではなく、
僕へ向かってきた石つぶてを打ち落としてくれる。
「だから!
黒川さんの“スキル”を使え!」
僕は耳障りな右側の声を無視して必死に飛ぶ。
ドローンが、飛んできた。
櫻葉さんの研究所のものだ。
ドローンはその硬い外装で僕の盾になって、
石つぶてを受け止める。
ミサイル型や四羽型、
球体などのドローンがせわしなく僕の周囲を飛んで盾になっている。
「“スキル”を使うんだ!」
次の瞬間、何が起きたか僕には理解できなかった。
激痛が身体を駆け抜け、地面へ墜落する。




