閑話“強欲”
僕の伸ばした“霧もや”から、
櫻葉さんがあべのハルカスから飛び立ったことを感知する。
彼はとうとう空を飛ぶんだ。
羨ましい。
今の僕なら飛べなくないが、
あそこまで自由自在には無理だ。
蝶々程度が限界。
「それでも十分すごいだろ。
自分を卑下するのは呼吸と同じか?」
右耳から聞こえる声。
藤堂さんが、
戦闘機の機銃で最後のバイコーンを討伐した。
こちらもさすがだ。
「“同調”すれば、あのスキルも使える。」
そうだろうけど、
僕は戦闘機の操縦ができない。
あんなに沢山の重火器の扱い方もわからない。
彼はそれらを自分の力で扱っている。
その上に“スキル”がある。
「今なら、
壁の周りのハンターたちから“スキル”を借り受けられる。
無限のスキルをもって、壁の中へ突っ込むんだ。」
そのスキルを即座に理解して使いこなせなきゃ、
なんの意味もないよ。
そういえば、
お前は櫻葉さんのスキルは同調しようとしないな。
「……。」
わかるよ。
“同調”したから、わかるよ。
櫻葉さんが弱ってるのが。
あの時の合体時も弱ってた。
でも、今の櫻葉さんはポーション事件の時より弱い。
「……。」
僕のせいだ。
「……。」
ほら、こればっかりはお前も否定しない。
僕が魔王と戦わなかったから、
櫻葉さんが追い詰められて。
連戦を強いられ、でも、戦った。
「……。」
役者が違うよ。
彼と僕とでは。
だって彼は今、
今まで積み重ねた反復訓練だけで身体を動かしてる。
うまく動かない身体を、感覚とのズレを、
億千万を越える鍛練で補ってる。
“同調”してるから、
魔法による補助が微々たるものだとよく分かる。
むしろ、あの三人は弱ってる彼にあわせて、
魔法も弱めにしてるみたいだ。
「確かに、アイツは弱ってる。
だが、それは戦ったからだ。
そして、今も戦ってる。
お前は、逃げてる。
逃げて言い訳してるだけだ。」
……痛い所を突いてくるね。
「本当にお前は、
行動しないくせに欲しがるんだな。
欲しいなら、行動しろよ。
今のはお前には力があるんだ。」
欲しがるってなんだよ。
羨むのはいいだろ。
「お前は諦めたフリをしてるだけだ。
本当に諦めたんだったら、
大暴れしてるはずだ。
分かるよ、お前は俺だからな。」
うるさい。
暴れないよ。
僕は“大和桜”を背負ってる。
まだ下ろす気はない。
だから、今も頭を下げてできることをしてる。
黒川さんは僕の采配が原因で、こうなったんだ。
ケジメは僕でつけなきゃ。
「それがダメなんだよ!
今必要なのは、ケジメじゃねぇだろ!
なあ?!
助けに行けよ!
お前がよ!」
右耳から聞こえる怒号が、いつもより痛かった。




