第58話 勇姿
財前から届く現場の誰かの視覚情報で
俺はバイコーンが吹き飛ぶ様子を確認した。
バイコーンの首もとに着弾したが、
上半身が殆ど吹き飛んだ。
「後、四頭。
次、座標抽出……。確定。
アルジ君、いける? いい?」
「いつでも。」
俺はそうミタニさんに返して、
弾を装填した。
“触手”と筋力を総動員し、弦を引く。
打ち出す反動も凄いが、
弦を引くときの方が力がいる。
巻き取り機で弦を引くのだが、
歯車で力を加算してなお全力で引かないと動かない。
「財前さん、次行きますよ。」
「今の爆発を見た人たち!
威力も見たよね?!
あれが来るよ!
モンスターから逃げてって!
次来るよー!」
どうやら一部のハンターがバイコーンたちを釘付けにするため、
ギリギリまで粘ってくれているらしい。
ありがたい。
その人たちに当たらないよう祈りながら、
俺はボウガンを構えた。
「次弾、発射。」
「皆、伏せてー!」
俺が次を放った。
弾はまっすぐ霧の中へ吸い込まれていき、
発射音の残響だけが残る。
財前が必死に微調節してるのが“同調”越しに分かる。
次の標的に着弾した。
「今のはなかなか良かったかな。
残り二頭。
ガーネットちゃんの“弾性”スキルで反動が軽減されて、
私と私たちの計算誤差が小さくて済むし。
狙いどおり飛ぶと、見てて気持ちいいわ。」
バイコーンの角付近に着弾した弾は、
近くのもう一頭も巻き込んで爆ぜたようだ。
ちぎれかけた頭で動く残りの一頭は、
すぐさま現地のハンターが仕留める。
ミタニさんが言うとおり、
まっすぐ的に当たるとなかなか快感だ。
今まで飛び道具とは縁がなかったが、
今後はこれらも練習していこう。
「手が空いてる人から、
被害状況の確認と怪我人の救護を!
余裕がある人たちは五人一組で組んで、
壁の中にアタックする用意して!」
財前が現場へどんどん指示を送る。
現場は“同調”のお陰もあり、スムーズに動き出した。
俺は次を用意して注意を促す。
「次弾、行きますよ。」
「オーケー、アルジ君。
座標よし。風向きよし。
皆、用意はいい?」
「はい、皆、伏せて!」
俺はまた次を放つ。
弾は霧の中に飲まれていった。
弾を見送った俺は装填作業を開始する。
残り一頭。
俺は着弾報告を確認して構えをとる。
「通信、失礼します。
藤堂です。
自衛隊からF-35借りたんだけど、
ホントに良かったの?」
無線から聞こえた少し困っている幼馴染みの声。
F-35は自衛隊の主力戦闘機だった気がする。
そこより、それを運転できる藤堂がすごいと思うが。
「財前です。
藤堂さん、早く来て!
櫻葉さんのボウガンが強すぎて、怖い!」
「はぁ、わかりました。
逃げたモンスターの場所を教えてください。」
見上げると、
黒っぽい戦闘機が霧に向かって一直線に飛んでいった。
多分、あれが藤堂の乗ってる機体だ。
「じゃ、狙撃は中断して、私は壁の内側へ向かいます。
藤堂、残り一頭は任せた。」
「応。任せろ。
無理するなよ、櫻葉。」
まったく、心強い限りだ。
俺は財前が掴んでいる触手をどこかに引っかけないよう注意しながら、
身体を固定していた“触手”を引っ込めてヘリポートから飛び降りた。
同時に身体の“触手”をミタニさんと“賢者”が指示する通りに広げる。
それは、黒い大きな翼だった。
滑空だが、十分な浮力と早さがある。
「走って、飛んで。
とくれば、次は水っスね!」
「地中も捨てがたいぞ?
我輩、土遁の術があれば修得したいな。」
「水中なら、銛だ!
ヤマ! 銛に火薬付けようぜ!」
「それは、魚雷だよ!
僕としては、機雷がおすすめ!」
研究所が騒がしいが、
これだけで終わらない。
「浮遊魔法発動。
アルジ様、このまま飛んでいきましょう。
ネル、いつでも行けるよう、
バフを盛ってください。」
「わかりました、ガーネット様。
アルジ様、ご無理はなさらず。」
俺は後頭部にいるガーネットと胸元にいるネルに礼を言って、ダンジョン災害へ向かって飛ぶ。




