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触手とダンジョン攻略  作者: 桃野産毛


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閑話“怠惰”

 僕はげんなりしながら、でも迅速に用意を進める。

何をさせられるのか、

今から考えても仕方がないと自分へ言い聞かせながら。


「何故、櫻葉に連絡した?」


 右耳から声がする。

またか。


「お前には力がある!

スキルを使えば、お前だけで助けられる!」

「一番信用ならないのは、自分なんでね。

忙しいから、ちょっと黙っててよ。」


 不服だ、と右から雰囲気で伝わってくる。


「自分にこそ、自信を持てよ。」

「それであの日、あの時、

僕は幼馴染みを見殺しにした。」

「違う!

殺したのは、アイツらでお前じゃない!」

「同じだよ。」


 僕は言いきった。


「僕がユミを殺した。

アイツらをわざと殺さなかった、僕が全て悪い。

生きていれば更正してくれると。

僕の方が強いと、

おごってアイツらを一度見逃した。

僕が全て悪いに決まっている。」

「違う!」


 右耳から、叫びが聞こえる。


「お前はいつまで引きずってんだ!

前を見ろ!

顔を上げろ!

いつまでウジウジやるつもりだ!?

そんなんじゃ、ユミに怒鳴られるぞ」

「もう怒鳴ってくれるユミはいない!」


 右腕が現れ、自分の胸ぐらをつかんだ。


「だけどな!

お前がそうやって地面ばっかり見てるから!

今の仲間を見ないから!

黒川さんは、あんなことになったんだろ?!」


 ……分かっていた。

“大和桜”の皆が、黒川さんが不安にかられて、

おかしくなったのは僕のせいだ。

 自身の手足を失った不安もあるが、

何より作戦を失敗させてしまった負い目から

皆と距離をとるようになっていた。

僕のせいで大半の仲間を失ってしまった。


「だから、だから、櫻葉さんを呼んで……。」

「違う!

お前はお前の力を見せなきゃならなかったんだよ!

皆に、俺は元気だって!

皆に、俺は大丈夫だって!

皆に、俺は強いんだって!

 あの作戦だって、決して失敗じゃなかったろうが!

犠牲は少ない方がいいが、ゼロはありえないんだ!

それくらい、皆わかってんだよ!」


 右耳の声は語気を強める。


「ナマ言ってんじゃねぇ!

今のお前は強いと、言いきれよ!

お前は仲間を見捨てないために、

人間をやめたんだろ?!

なら、今こそこのスキルを使って、

皆を助けるんだよ!

他人に頼る前に!」

「うるさい!

なんにも知らないフリができたら、やってるんだよ!

もう、なんにも知らないフリは、できないんだよ!」


 泣き叫ぶような、

悲痛な声がこだました。


「お前(右側)も、僕だろ。

わかるだろ?

もう、手遅れだ。

何もかも、遅すぎた。

 やるなら、あそこだったんだ。

魔王が日本に上陸した、あそこだったんだ。

あそこなら、あんなに被害者はでなかったんだ。

仲間ももっとたくさん助かった。

 でも!

しなかった!

僕が! 力を! 魔王を!

手中に納めたいがために!

見捨てた! 見殺しにした!

だろ?!」


 そうだ。

分かってた。

日本に魔王が行けば、櫻葉さんが来る。

櫻葉さんが魔王と戦えば、魔王は確実に弱る。

そこを、僕は狙っていた。


 見える限りの人々と仲間を見殺しにして。

 魔王の力を手中にしたいがために。


 その結果、失敗した。

複数の魔王が現れ、櫻葉さんが押し負けそうになり。

真打ちが、ミタニさんが、

本当の復讐者たちがやってきた。


「あそこで、僕も死ねばよかった!

僕みたいな、罪人は!

死ねばよかったんだ!

それが、今、どの面下げて、

生きてんだよ!

なぁ!!」

「うるせぇ!

生きたんだ!

生きてんだよ、俺は!

生きてる限り、

状況は変わり続けるんだよ!

 そんなんが、

傍観して怠けてた理由になるわけねぇ!」


 僕は行かなきゃならない。

行かなきゃならないのに、

涙が止まらなかった。

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