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触手とダンジョン攻略  作者: 桃野産毛


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第52話 勇義

 どういう風の吹きまわしなのか。

いや、順当に考えれば遅いのかもしれない。

 マスコミは一様に俺の特集を組み、

今までのアンチコメントがなかったかのようにハンターを称える。

 そして、何よりも問題なのが、

ここに来てあの学校のダンジョン災害の動画が大々的に流されていた。


「あの動画流出はこの布石か?」

「関係ない、とは言えないね。

おじさんも出遅れてしまった。

本当に申し訳ない。」

「表向き、“大和桜”のリーダー財前吾郎が死亡した。

黒川さんがリーダーになったが、

国民の不安が臨界点に達したらしい。

 そして、暴徒化するはずが、

偶然見つけてしまったんだ。

代替品を。」


 そう語るのは財前吾郎本人だ。

走って家ではなく研究所に逃げ込んだ俺と藤堂。

案の定、おじさんが待っていた。

そこになぜか財前が一人でいた。

彼は一人で研究所に来て、車椅子の上で話す。

俺は思わずぼやく。


「かつての“勇者”の件もなかったことにされてる。

精神安定剤として、次は“ヒーロー”を投薬した。

流れは分かったが、どうして俺だ?

黒川さんでも、行けたろう。」

「そこが、流出動画の件に繋がるようだ。

あの獅子奮迅の活躍と、

応援声援に応える姿が国民の求めていたモノにフィットしたらしい。

 おじさんも手を尽くして、

電脳研にも手を借りて動画を消してたんだけどね。

向こうの方が上手だった。」

「インドはノーマークだった。

本当に僕のせいだ。申し訳ない。」

「じゃぁ、解剖とか。」

「それは違うくない?」


 動画を撮影して流出させたのは、

インドの諜報員だった。

インドの作戦は、

俺を祭り上げてしがらみでがんじがらめにするものらしい。

 民衆の万雷の拍手によって暴力を封じ込める。

否定はせず、拒絶もしない。

受け入れながら油壺へ引きずり込む、

なかなかに陰湿な作戦だ。

 しかも、これがなかなか日本人の琴線に触れたようで、

一気呵成に話が広まっている。

あっという間に土台が仕立て上げられ、

後は見ているだけで事が済む。


「アメコミヒーローを参考にしてるっぽいな。

この感じ、良く見てたヤツに似てる。

櫻葉はどっちかと言うと、黒い方の社長なんだけどな。

赤い方とか、そっちに行ったか。」

「出版社違いだな。」

「僕的には、

同じメタルマスクでもヴィランの方が櫻葉さんっぽいと思うよ?」

「そこまで強くないです。」

「あれ、チートガン積みでも勝てないヴィランじゃん。

テーマソング流れてても負けるヤツだ。」

「いやぁ、こういう話できるのいいなぁ。

“大和桜”にアメコミファンいないから。」

「黒川さんもアメコミ詳しくなかった?」

「実写映画化したヤツだけな。」

「なんで二人の方が僕より黒川さんと仲良いの?

僕、泣くよ?

さめざめと泣くよ?」


 あの合体で俺たちは一部の記憶と経験を共有してしまった。

互いの過去も朧気に、感覚で知っている。

ただ、明確にどんなことがあったかは知らない。

あくまで、そのときの感覚と感情だけだ。


「あれっきり、黒川さん人が変わったみたいで。」

「あの人だけ、なんもなかったからですかね。

俺も櫻葉と比べると弱いけど、

黒川さんよりはそこそこ修羅場踏んでますし。」

「きっと彼女的には色々あったんだけど、

他の皆が凄すぎたんだよ。

後、僕も含めて他の人が誰も変わらなかったのがショックだったみたい。」


 あー、なるほど、と藤堂とハモってしまった。

自分だけすむ世界が違った。

自分がどれだけ恵まれていたか痛感した。

ぬるま湯どころか、温泉街付きの超高級旅館だった。

それで、今までやってきたつもりだった。

 俺はそれが悪いとは思わないし、

それはそれで人生なんだろうとも感じるが、

黒川自身はそう思えなかったんだろう。


「無理はしないようにお伝えください。」

「とんでもなくよそよそしいね、それ。」

「他人事ですし、口を挟む権利もないですね。」

「よそよそしいね、ホントに。」

「おじさん思いますに、

黒川さんが暴走するともっとこっちに来るよ、

民衆意識が。」

「前言を撤回します。

殴りましょう。」

「櫻葉さん、それはさすがにダメだ。」

「殴れば直るでしょ。」

「昔の家電でも君が殴れば壊れるからね。

 おじさん、

悔しいから各局マスコミとか国を揺すって来るよ。

手遅れかもだけど、少しましになれば良い。」


 そう言い残しておじさんは帰っていった。


「俺は装備の話を小田さんにしに行くかな。」

「分かった。

俺は呉羽さんに話を聞きに行こう。

財前さんは、どうしますか?」

「小田さんに足だけでも良いから、

作ってくれないか頼んでみる。

車椅子しんどい。」


 彼の車椅子は電動で、

口元にある小さなシリコンのスティックを咥えて口で操作する。

 もやの手足で操作すると、車椅子は壊れるらしい。

あくまで、もやはモンスターの蜃の身体だからだ。

ダンジョン仕様でなければ耐えられない。


「同じ車椅子でもダンジョン仕様なら、

少しは助けられるし。」

「ガーネットいわく、

もやが特殊すぎて難しいって聞きましたよ。

作るにせよ、解剖とセットだって言ってましたね。」

「困るなぁ、この身体。」


 ぐちりながらも彼は口で車椅子を操作し、

藤堂と小田さんのところへ向かった。

俺もガーネットとネルを喚び出してから、

呉羽さんのいる電脳研究部に向かう。

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