第27話 無理矢理
埼玉に設置された臨時政府の臨時対策会。
会場は埼玉県庁を流用している。
AHUは市民や警察に暴動を起こされないよう
破壊活動を隣県に見つからないように工夫していた。
そのお陰でライフラインは無事。
また、隣県にも被害はなかった。
ただ、黒い柱が爆発した影響は広範囲に及ぶ。
ダンジョンから半径約20キロは爆発で吹き飛んだ。
近くの埼玉県へも爆風で飛ばされた瓦礫や
爆発の揺れでかなりの被害がでたそうだ。
爆破後隣接する都市でも一斉に避難勧告が出されていたため、
ガーネットの暴走による人的被害はほぼゼロ。
今は多摩川台公園から千葉県千葉市の手前まで渓谷になった。
ヘリの中であらましをミミコさんに伝えた。
財前と二人で別々に伝えて、
三人で話を統合して貰い本部へ伝えて貰う。
財前は約束を守って、ガーネットのことは話さなかった。
ミミコさんはガーネットを知っているので、
後で話をし直すことになった。
対策会では、
俺たちの話を踏まえて会議が行われている。
会議の結果臨時で決定したことは
即時実施される流れだ。
俺たちは手当てしてもらい、
県庁内に作られたテントで一泊した。
俺は生まれ変わったが疲労はあったようで、
ベッドに潜り込んだ途端に眠気に襲われて
そのまま寝落ちた。
翌日、財前たちと聞いた話は耳を疑った。
まず、核は日本へ発射されることはないそうだ。
あの後、原子力潜水艦はすぐハワイにある基地へ戻ったらしい。
その原因が、例の光の柱から飛び出したモンスターが大暴れしているためとのこと。
そういえば、
通信でタカミさんが爆発したときに
光がいくつも飛び出したとか言っていた。
光は全部で16個。
アメリカの西部、カナダとアラスカの国境付近、
チリの南端、ブラジル西部、
オーストラリア大陸中央付近、ロシア北部と西部、
モンゴルと中国の国境付近、インドとタイの国境付近、
イラン南部、コンゴ共和国北部、
スペイン南部、英国北部、フィンランド南部、
グリーンランド中央付近、南極大陸別中央付近、
太平洋沖。
ほぼ均等に世界中に飛び散り、
猛威を振るっているそうだ。
そのお陰で無政府状態の日本は捨て置かれ、
臨時政府発足まで何事もなく進むことができたそうだ。
「あの爆発からもうすぐ12時間経つけど、
どの国も甚大な被害が出てるみたい。
あの議長、五体満足で母国へ送ったらどうなるのかしらね。」
ミミコさんがそう言うと、
後ろにいたスーツの人が何人か青ざめる。
議長を引き取りに来た大使館の人たちらしい。
昨晩の動画がネットで拡散したため、
すべての原因は国連がポーション欲しさに暴走したことが明るみに出てしまった。
隠蔽も誤魔化しも効かないように、
しっかり裏付け資料まで見つかり公開されている。
安全保障理事会の議長は確実に切り捨てられる。
暗殺か死刑か、
もしくは国民が私刑に走る可能性もある。
彼の家族の無事すら危うい。
俺個人としてはなんとも思わないが、
原口(頭のおかしい人物)に権限と免罪符の束を与えた
責任はとってもらいたい。
俺たちは一旦G県へ帰ることになった。
色々あったが、おじさんが一言言うと全員否定できなかった。
「これはおかしい。
何もしなかった人たちが、
後から来て知らん顔して説明責任だ、と。
お腹がよじれるかと思いました。
先ず始めに、
ご自身がこの数日間何をしていたのか説明するべきでは?」
また臨時議会で、
異界探索者管理委員会が善良なハンターに対し
虚偽の罪で身柄を拘束、殺害していた事実を
認めた手前、おいそれと俺たちを拘束できないのだろう。
おじさんが運転するハイエースに全員乗っている。
タカミさんは藤堂と留守番してるらしい。
ここにいる全員にバレているので、
ガーネットは姿を消さずに俺の膝の上にいる。
「お疲れ様。
とりあえず、情報のすり合わせだね。
議会で話した適当なのじゃない、
ちゃんとした話を聞かせて欲しい。」
「その前にガーネット、防音を頼む。」
「はい、完了しました。」
「え。防音の魔法?
大和桜から通信機器を使えなくする
ジャマー装置持ってきたんだけど。」
「あら、うちの車に標準装備されてるのよ、それ。」
財前の持っている機械を指差して言うミミコさん。
「さて、とりあえず魔王に攻撃して、
涼治君が攻撃されたところまでは
ドローンでも追えたんだ。
その後ドローンが全滅してしまってね。
何があったか教えて欲しい。」
俺はそこで死んだので、財前に話を頼んだ。
ガーネットが何故か土下座待機してる。
とりあえず、俺が死んだくだりで困惑する。
「臨死体験とか、比喩表現とか?」
「いいえ、僕が確認しました。
呼吸も脈もなかった。
心臓の辺りを胸から背中まで貫通。
完全に死亡です。」
俺の方をミミコさんが見るので、
着ているスーツの胸に空いた穴を見せた。
「それで、呪怨の魔王が毒を撒き散らし僕らは前後不覚になりました。」
「それもヤバいんじゃ……。」
「死にかけました。
でも、助かりました。
彼女に助けられて。」
財前がガーネットを見る。
ガーネットは車の座席の下で完全に土下座していた。
「大変、大変、大変っ申し訳ございません。」
「いや、助かりました。
それに、貴女がしたことも言ったことも、
どれも正当ですよ。」
そこで、ガーネットが暴走した話を聞いた。
思っていたより、理性的に暴走したらしい。
ただ、あの渓谷を作ったのはドラゴンの一撃と言うのが気になった。
「ドラゴン?」
「そう。空一面に幾何学模様の光が走って、
大きな頭がぬーって出てきて、
ビカッ! って光ってどーん!
凄かったよ、あれは。
僕はファンタジー作品が好きなんだけど、
あんなの創作でも見たことない。」
「……一番派手でダメージの大きいのを撃ちました。」
「ドラゴンを呼び出して?」
「ドラゴンと言いますか、
あれはバハムートと言う魚でして……。」
黒川がぎょっとした顔で聞く。
「魚なの?
あんな大きいのに。」
「むしろ海くらい広くないと、
あそこまで大きな生き物が生息できませんよ。」
そろそろ俺の転生の話になったので、
財前から話を引き継ぐ。
死後の世界での話をしていると、
ガーネットの顔が萎れていく。
「……アルジ様を甦らせる方法をさがして、
あの世界をクラッキングしたんですが。
まさか、転生とは。」
転生後、魔王を従魔契約して、
ガーネットも再契約したと伝える。
「つまり、魔王と魔王を凌駕する
ガーネットさんの二人を従えた、と。」
「それを言う場合、
アルジ様も魔王よりお強くなってますから。
いざと言うときは、
アルジ様だけの実力で押さえられますよ。」
「あの紙、似たようなの何枚かあったけど、
全部研究所に送ったなー。
もったいなかったのかー。
フルネーム書いてて気持ち悪かったんだけどなー。」
財前は頭を抱えて唸る。
「名前が書いてある人の家とか
パーソナルスペースから外に出て
一定時間が経つと契約書自体が消失しますよ。」
「嘘っ!
研究所からなんも連絡ないよ!?」
「消えたのに気づいてないか、隠蔽したか。
どっちでしょうか。」
財前が頭をかきむしって悔しがる。
「んー。
ちょーっと信じられないかなー。
おじさん、弁護士ですし。
証拠とかある?」
「私の死体がまだありますよ。
後でお見せします。」
「うわー、それ本当っぽい。
健治になんて話そうか。」
「あなた、正直にお話ししましょうよ。」
とりあえず、
情報の共有は終わった。
財前と黒川の二人は、
この話をクラン内でもしないことを約束してくれた。
「秘密にするからさ、たまに僕も呼んでよ!」
「吾朗、落ち着いて。
それじゃぁ、秘密にする意味ないから。」
「絶対楽しそうじゃいか!
もう、大和桜辞めて櫻葉さんのとこに入りたい!」
「絶対他のメンバーにはそれ言わないで!」
ごねにごねた財前。
一番困っているのは黒川。
「大和桜には入りません。」
「じゃ、やっぱり僕がそっちに……。」
「いい加減にしなさい!」
「では、共同研究はいかがですか?」
ガーネットの提案は、
今どことも契約してない黒川を
うちの研究所のテスターとして契約すると言うもの。
「定期的に報告会に来てもらって、
何かあったら情報を共有する。
こちらとしても、
秘密を守ってるかどうかも確認できます。
そちらにも、特殊な装備と情報を得られます。」
「私、装備は見た目もこだわりたいから、
契約してなかったんだけどな。」
「それなら、うちの研究員へデザインを渡して下さい。
テストしてもらうのは素材、
マテリアルテストなので見た目は自由ですよ。」
「マジで!?
自分でデザインしてもいいの?」
「技術的に可能な限り、お応えできます。」
いつかの俺の時と似たプレゼンだ。
サイズがない俺とこだわりが強い黒川では
過程が違う気がするが、結果は共通するらしい。
「契約して!
お願いします、黒川さん!」
「なんで吾朗が懇願してんの?
もぅ、仕方ない。
ただし、デザインはこだわるからね?」
小田さんたちに後で連絡して、
契約書を用意してもらうことになった。




