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触手とダンジョン攻略  作者: 桃野産毛


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閑話“損害”

 黒川と財前は、去っていく巨漢の背を見送った。


「……被害報告は?」

「あ……。うん。

確認する。」


 財前に指示され、黒川は足早に確認作業を始めた。


「それでは、私も失礼しましょう。」


 原口がそう言った。

周囲は誰もが彼女を取り殺さんとにらみ付けた。


「一人で帰れますか?」

「まさか。

そこでのびてる三人を起こして行きます。」

「行かせるとでも?」

「おやおや、財前吾朗ともあろう御方が、

女性一人で危ないダンジョンを歩いて帰れと?」

「少なくとも、我々は貴女を見逃しませんよ?」


 原口と財前がにらみ合う。

財前は“話をたくさんする人見知り”だ。

さっきは初対面の櫻葉がいたのでじょう舌だったが、

見知った人の前ではむしろ口数は少ない。


「さっきも言ったでしょう?

あなた達の家族や家の安全を考えるなら、

変なことはしない方がいい。」

「ここはダンジョンだ。

不慮の事故もありえる。

違いますか?」


 周囲からの殺気が濃密になっていく。

だが、それにさらされているはずの原口は涼しい顔で話し出した。


「私が今日ダンジョンから出ることがなければ、

あなた達の家族は少なくとも職を失います。

そう言う風に手筈していますからね。」

「証拠は?」

「ありません。試しますか?」


 この期に及んで、挑発する原口。

一色触発。誰かが切りかかってもおかしくない。


「貴女のせいで、仲間が死んだ。」

「殺したのは櫻葉涼治ですよ。」

「そう仕向けといて、よく言いますね。」

「そうでしょうか?

今、あなた達の誰一人として、私を殺さない。

でも、彼は逡巡もなく殺した。

この違いは大きいかと。」


 膨れ上がった風船かと思ったが、

男性用避妊具のように延び続ける緊張。

 それこそが、現代日本人ならではの“暴力への忌避感”。

だが、櫻葉にはそれがまったくなかった。


「当たり前だ。

大和桜のようなクランは無縁だが、

本来のダンジョンは無法地帯。

 モンスターより人間が一番の敵だ。

僕自身、体験したこともある。

 あれが基準なら、

櫻葉さんの行動はむしろとても良心的だ。」


 新人狩り、クランぐるみでの詐欺。

辻斬り、強盗、強姦が専門のクラン。

パーティーメンバーを裏切ることも、

置き去り囮にすることも日常茶飯事。

 悪鬼羅刹なんて可愛く思えるような人間達が

ダンジョンにはひしめいている。

ダンジョン内で出会ったらば、

相手が人でもモンスターでも等しく敵だ。

そう教える講習会もある。


「あぁ、なるほど。

そう言う違いは、確かにありますね。

 でも、私からすればどちらも同じですよ。

斬った張ったで生きてるなんて、

まったく度しがたい。

 社会不適合者が武器を持って町を闊歩してるなんて、

まったくもって、耐えられない。

 死にたがりはお互い殺し合って滅んでください。

そして、無関係な我々には関わらないでください。」

「原口さん、貴女もハンターでしょ。

何我々、なんて自分は別の括りにしてるんです?

 しかも、貴女はとびきりだ。

とびきりの極悪人だ。しかも、その自覚がない。

大義があれば、許されると?

ふざけてる。」


 財前は櫻葉にも向けなかった自分の槍を原口に向けた。


「おっと、時間です。」


 原口がそう言うと、

通路から数十名のハンターらしい人影が

こちらへ近づいてきた。


「あれは委員会の用意したハンターです。

私の送迎用です。

 この三人は目を覚まさないので、要りません。

どうぞ、お好きにしてください。」


 そう言うと、原口はこちらへ近づいてきたハンターに駆け寄った。

よく見ると、ハンターらしき人影は皆一様に銃を構えている。


「……モンスターじゃない。

人間を想定した装備か。」


 原口は、笑い声を上げながら迎えに合流した。

保護されるように、丁寧に連れていかれる彼女。

大和桜に向けて銃口を構え、

警戒を露にする迎えのハンター。


「異界探索者管理委員会。

ただで済むと思うなよ?」


 財前はそう言って、去っていく一行をにらみつけた。



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