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触手とダンジョン攻略  作者: 桃野産毛


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第84話 黒丸

 目の前に立ちふさがるように現れた、

見知った顔。


「久しぶりだっ?!」


 彼はもろに不意打ちを食らう。

ガーネットの拳の魔法だ。

ボディブローが左レバー辺りに決まった。


「敵で良いですね。

躊躇いもなにも元々ありませんが。」


 ネルがそう呟いて追い討ちをかけて火球を放つ。

青く光るそれは“魔法使い”たちのものと桁違いの高温になっている。

これはもう飛来する溶解炉だ。


「うっそ!」


 そう言いながら空へ飛び上がって彼は逃げる。

もちろん、財前だ。

 見た目だけだと思われるが、財前だった。

そこらの建物から、

さっきの老人のものとおぼしき声が響く。


「お前ら、心はないのか?」

「死んだ人間をどうこうしても、

俺には意味がないぞ。

財前の死は確認済みだ。

 本人だろうが、敵なら殴るがな。」


 そう言いつつ、

俺は改良型のボウガンを放つ。

弾にはもちろん火薬が仕込んであり、

標的に触れなくても時限爆発する。

 逃げる財前の行く先に置くように撃った爆弾。

彼の目の前で壁のように破裂し、飛び散る鉄球。

それを霧を広げて受け止めた財前。

だが、その後ろには火球が迫っており、

財前の背中辺りに着弾した。

 悲鳴が聞こえるが、

藤堂がそこへ銃弾を打ち込む。

 老人の声がまた聞こえる。


「鬼畜か。」

「説明を聞くのもうんざりなんで。

櫻葉に至っては聞く気もないし。」


 俺は後ろに見えたマイクに手を振る。

彼女はかなりの速度で走っているが、まだ少し遠い。


「マイクが来るまでに仕留めよう。

藤堂、霧は広範囲に拡散できるが、

それ事態も身体の一部だ。

 弾丸は効果が薄いが、

爆弾なら爆風で霧が散って消耗する。」

「オッケー。

グレネードランチャーに切り替えよう。」


 俺たちは手加減なしで財前へ攻撃を浴びせかける。


「ちっ。

せっかく太平洋のダンジョンから連れてきたが。

無駄だったか。」

「なるほど。

倒してもボスモンスターは必ず復活する。

コイツ、“蜃”か。」

「その通り。

財前吾朗の死体が消えた、と言うのは事実だ。

 正確には消えた、と

言うよりダンジョンに戻って蘇っていた。

人格的な財前吾朗は死んだが、

腹の中のボスモンスターは財前吾朗を取り込んだ。」


 彼は藤堂の段幕から無傷で飛び出した。


「そうだ!

俺様は“蜃”!

財前吾朗の記憶と、

猿の魔王の力の一部を手に入れた!」


 そう言って蜃は手を空にかざす。

すると雷が蜃に降り注ぎ、

全身を帯電させ始める。


「なるほど。

べらぼうに面倒くさい。

 何番煎じだ?

ここまでだと、ただのお湯だ。

味も香りもない。」


 俺はため息をつきながら、

次の弾をこめて弓を引く。

 ふと、俺は気がついたことを小田さんに確認する。


「小田さん。

もしかして、

このアシストスーツのカメラの動画もネットに流してるのか?」

「あ、流しっぱなしっスよ?

視聴者数ヤバいっス!」


 あー、流してるのか。

藤堂が俺の顔を見た。

俺もたぶん藤堂が考えたことと同じことを考えている。

 俺は後ろのマイクに声をかける。


「マイク。

このままこの敵は無視して先に行こう。」

「はぁ?!

ふざけんなよ!

出番待ちしてたのに!」


 蜃が抗議するが、俺たちはため息だけで返す。


「……マジで何があるの?」


 不安になったのか、

蜃が財前の顔で困惑する。

 俺と藤堂は着けてない腕時計を見る素振りをした。


「後五秒か?」

「櫻葉、

話してる時間を抜いたら二秒とかだ。」

「マジで何があるの!?」


 突然、闇を切り裂くように笑い声が響き渡る。

ほら、来た。

俺たちは蜃から距離をとる。


「あの!

今から入れる保険あります……かっ?!」


 そう言って蜃は吹き飛ばされた。


「ほら! ほら!

ね? ね?

お前、ふざけんなよ!

 やっと見つけた。

どこほっつき歩いてたの?」


 相変わらず情緒不安定。

一言ごとに人格が違う。

最後の一言に至っては、

迷子のペットを見つけたようだった。

 黒川が蜃の上に乗っていた。

なぜかピエロのような白塗りメイクだ。

星や涙のマークまで書き込まれている。

 そのせいか、

やっぱりちくはぐに着ているあの服が今度はピエロの衣装に見えてくる。


「よし、富士山がすぐそこだ。

登るより回っていく方が早そうだ。」


 そこに、マイクが到着した。


「やっふぉあっふぁまっふぁ!」

「マイク。

ちょうど良い。

藤堂とマイクには無線でナビする。

ここからは障害物は避けていこう。」


 俺は追い付いたマイクに簡単に道筋を説明した。

蜃は黒川に捕まったので、もう放置でいいだろう。


「そうなるのか。

なんと言うか、予定とは違うが。

これはこれでいいか。」


 老人の声が響いた。

どうやらネットを使って近くの家の電子機器から声を出しているらしい。

 藤堂が老人に向かって言う。


「次の刺客は、

もっと俺たちに関係ないのを選んだ方が良いと思う。

なんか、これは盛り上がりに欠ける。」

「うるさいわ。

そんなものまで予測できるか。」


 満を持して現れた蜃がこれだ。

蜃は霧を広げて黒川に攻撃を仕掛けるが、

今の黒川に当たるわけがない。

 蜃は雷を放ったが、

黒川が走って身体に帯電している電気の電圧の方が強い。

雷は難なく打ち落とされる。


「田園調布まで後半分くらいだ。

走るぞ。」


 俺は蜃たちを余所目に走り出した。

藤堂とマイクはそれに着いてくる。


「助けてえ!」


 聞こえてきた蜃の声は無視する。

あいつも敵に助けを求めるなよ。

 先頭は俺。

後ろに藤堂がいて、その少し後ろにマイクがいる。

 新幹線の線路が見えた。

なにも走ってなさそうなので、

そこに降りて足場にする。


「ここ、

絵はがきでよく見る富士山の名所じゃない?」

「藤堂、そう言うのは昼間に言ってくれ。」

「うへ!」


 マイクがそう叫んだ。

上から卵型モンスターが複数降りてきている。


「餅は餅屋。

魔法なら、“魔王”に頼もう。」

「お任せください、アルジ様。」


 ガーネットがそう言いながら、角を生やす。

俺の頭から角が生えるのを見て、マイクが驚く。


「……ひんへん?」

「まぁ、半分は人間だよ。」

「それを言うとハンターは皆そうだろ?」

「藤堂様は初期状態から魔法でガードしているので、

ほとんど人間のままですよ?」

「マジか。

ネルちゃん、ありがとう。

ガーネットちゃんも、ミタニさんも。

ありがとうございます。」


 マイクが何となく申し訳なさそうにしている。


「気にするな。

元々人間離れしていたんで、

化物扱いは慣れっこだ。」


 俺はフォローのつもりでそう言ったが、

何故かマイクはもっと顔を曇らせる。


「では、行きますね。

やっちゃってください、バハムート!」


 ガーネットがそう叫ぶと、

俺たちの頭上に巨大な魔方陣が展開された。

なるほど、これがバハムートか。

俺が死んでいたときにガーネットが放った魔法。

田園調布一体が渓谷になった原因。

 少し斜め上に向けて巨大なトカゲの頭が魔方陣から出てくる。

これは確かに、でかい。

人間がゴマ粒ほどの大きさだろうか。

ガーネットの世界の魚だとか言っていたが、

これはドラゴンに見える。

 明らかに空を飛んでいたモンスターたちが怯えている。


「放て!」


 ガーネットの号令に合わせて、

バハムートは口を開いた。

刹那の瞬間に視界が真っ白になる。

後から轟音が聞こえ、すぅっと光が収まっていった。

 空を覆うほどのモンスターたちが、一つも見えない。

俺は振り替えって藤堂とマイクを見ると、

二人とも目を擦っている。

目以外は無事なようだ。


「これならしばらく邪魔されないだろう。」


 俺はそう言いながら、

ネルに藤堂とマイクを回復してもらった。


「やりすぎだ!」

「やひすひ!」


 俺は何故か二人に怒られた。

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