閑話“決意”
東京には、ハンターの姉ちゃんがいた。
あのポーション事件で死亡が確認されている。
姉ちゃんは、家に遺体で帰ってきた。
穴だらけの顔は、見知った姉ちゃんじゃなかった。
俺はなにもできなかった。
ただ、
流れてきたあの動画を見ていることしかできなかった。
焼け落ちる東京を見ていることしかできなかった。
いわきには、父さんがいた。
出張先だった。
魔王の襲撃で行方不明になった。
今も遺体は見つからない。
むき出しの荒野には、何も残っていなかった。
人がいた形跡すら見つからなかった。
また、なにもできなかった。
大阪に母さんが親戚の家に移り住む用意のため出掛けて行った。
その日にダンジョン災害が起きて、
母さんたちが巻き込まれた。
いくら探しても母さんの頭だけ見つからなかった。
親戚の皆は見つからなかった。
バラバラのパーツでは、誰が誰かすら分からなかった。
独りになった。
俺は独りになった。
力がなかった、と嘆くこともできない。
運だの何だのと言いたくない。
この怒りはどこへ向かえば良い?
この悲しみはどこへ向かえば良い?
“魔法使い”の適正が見つかったときは、
運命を感じた。
これを使って怒りをぶつけろ、と言われた気がした。
あの緑の頭にぶつけろと言われた気がした。
もっと早くお前が戦えば、
もっと早くお前が到着すれば、
俺は独りにならなかった。
父さんも、母さんも。
いや、姉ちゃんも助かっていた。
皆助かったはずた。
ヒーローなんだろ?
助けて当然だろ?
なにやってんだよ。
紅蓮の炎は、敵を焼くため。
紅蓮の炎はアイツを焼くため。
実際に対峙したあれは、
化物だった。
車椅子で現れて、
よたよた歩く姿のどこにも何も感じなかったが。
いざ、となった途端に豹変した。
勝ち目とかの話じゃない。
同じ場所にすらいなかった。
雑談する二人の視野にも入っていない。
でも、今は違う。
今度は違う。
俺は力を手に入れた。
灼熱の炎は俺の怒りだ。
悲しみだ。
苦しみだ。
力を付けて隊長の地位まで上がった。
次こそ、次こそ、アイツを焼き殺す。
復讐だ。
アイツを殺して、
俺こそヒーローになってやる。
そうだ。
俺こそがヒーローだ。




