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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

テーマ詩集:猫

あんたがどんなに馬鹿猫でも

作者: 歌川 詩季

 悔いは残したくないのです。

 たまに失敗したみたいで

 ソファにおしっこしちゃったり

 カリカリのキャットフードは残すくせに

 あたしのおかずを欲しがったり

 コップと花瓶を倒すのが

 趣味なんだか 得意技なんだか

 やけに誇らしい顔してみせるから

 障子張りの和室があたしんちにないことに

 いまはすごく安心してる


 あんたってほんとに馬鹿猫だよね

 びっくりするくらい賢いときもあるし

 あたしたちのつごうにあわないことをするたびに

 こんなふうに呼ばれることに

 あんただって異議を申し立てたいだろうけど

 猫から見たら人間ってば

 なんて馬鹿げたことやってんだろうって

 思えることばかりだろうからおたがいさまか



 だけど いくら馬鹿猫のあんたでも ひとつだけ

 まちがっても やっちゃいけない

 ゆるしてあげられないことがある


 猫は最期を迎えるときに その瞬間を見られないように

 姿を隠すだなんて言うけど

 あんたがそんなことしたら あたしは絶対にゆるさない


 呼吸をちいさくしながら 眠るように

 生命(いのち)を終えるあんたのそばに

 あたしのなかの水分が流れきって

 からだのなかが砂漠になるまで

 泣きながらいさせてほしいんだ


 それはあたしのわがままかもしれないし

 あんたの のぞむところじゃないかもしれないけど

 一秒を惜しむようにじゃなくて

 刹那を(いつく)しむように

 その瞬間が(おとず)れるまで あんたといたいんだってば

 悲しみ残しも 愛し残しも ひとつもないために


 だいじょうぶだよ

 砂漠になっちゃうほど泣くって言うけど

 それからも あんたのことを想い出すたび

 涙はきっと涸れないだろうし

 それでも(かわ)いちゃいそうなときは

 ペットボトルの2ℓのやつ 買って飲み干すもん

 ほんと 心配いらないから



 だから ひとりで最期を迎えるなんて

 馬鹿なことは考えないで

 ちゃんと最期の その瞬間まであたしといてね

 あたしの涙で背中を濡らしながら

 あたしのひざで息をひきとればいい

 たとえ それがあたしのわがままでも

 あんたにはつきあってもらうよ

 あんたは馬鹿猫に見えて 変なところ賢いんだから

 ちゃんと理解してくれたでしょ?



 ならしかたない

 今回のそそうは 見逃してあげる

 だから いい?

 あたしの言ったこと忘れるんじゃないわよ


 わかったら そんな気まずそうな顔してないで

 はやくこっちへおいで♡

 そしたら「それから」の涙は悲しいものではなくなるはず。

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― 新着の感想 ―
[一言] そうですよね。 看取ってあげたいですよね。どこか知らない場所でひっそり怖い思いをしながらいなくなるんじゃなくて、最期まで安心出来る場所で、夢を見るような感じで。 膝の上だったら、その毛を濡ら…
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