第4話「悪いがスナイパーは2回目なんだ」
「時間がねーんだ! 速く7人の冒険者全員を召喚・集合させろ!」
「しかし、術式には結構な時間が……!」
「40秒で支度しな!」
「は! はい~~~~!!」
悪いがゴタクに付き合ってるヒマは無い、速攻であのスナイパー? を何とかしたい、今は王城の、窓の無い術式部屋だからいいものの、窓のある部屋に行ったらまた狙撃される恐怖をおっさんは刻まれた。
とにかく3人目だ、〈3人目の冒険者ケイサツ〉の元自衛隊サバイバルの知識がいる、ユルユルほのぼの世界だと思ったが、そんなことは無かった。
1週目で得た情報は以下の通りだ。
【テト歴108年4月1日16時00分。盗賊30人とマンモスゾウが門の前で街を襲う】
【テト歴108年4月1日18時00分。謎のスナイパーに窓から狙われ、ケイサツから「M24だ」と謎の単語を聞かされて、ケイサツとバクゴウが死んだ】
以上、正直他の情報はどうでも良い。
テト歴108年4月1日13時00分。
30分後、魔術師に急げと〈1人目の冒険者ループ〉に言われたので、急いで作業は終了した。
〈1人目の冒険者ループ〉、30代清掃員おっさん。
〈2人目の冒険者テンセイ〉、TS美少女転生。
〈3人目の冒険者ケイサツ〉、元自衛隊サバイバル。
〈4人目の冒険者バクゴウ〉、ロマン爆轟魔術師。
〈5人目の冒険者バケモノ〉、化物ギルドの受付嬢。
〈6人目の冒険者アクヤク〉、悪役令嬢錬金商人。
〈7人目の冒険者オタク〉、VRMMO実況配信掲示板オタク。
1週目より1時間30分速く全員を招集できた。
そして、事の深刻さを全員に説明する。そして大筋を話し終わった後、やはり最初に口火を切ったのはケイサツだった。
「M24と1週目の俺は確かに言ったんだな?」
「ああ、最後の言葉だ」
「マズいな……」
最後の言葉を聞き間違えるはずが無い、そしてその意味の深刻さを全員に共有させるためにケイサツは言う。
「M24は対人狙撃銃M24SWSの事だ、日本の自衛隊で採用されている。有効射程800M、弾倉式の容量5発。……俺の持ってる拳銃は自衛隊用9mm、SFP9だ、有効射程50Mだ。簡単に言うと今より16倍近づかないと敵を殺せる射程距離に入れない……この世界では弾丸は撃ち放題って言ってたな?」
「ああそうだ、異世界ファンタジー様々だぜ」
ループとケイサツは頭を働かせて情報交換する。
「てことは、敵のスナイパーも弾丸撃ち放題なはずだな」
「そうなる、もしかしたら。1週目、16時00分の盗賊団との戦闘で、最速飛び出したケイサツにビビってスナイパー引っ込めたのかもしれねえな」
「……可能性はある。そして1週目18時00分の宴会、隙を突いて俺は殺された、……か……」
「スナイパーの場所は特定出来たのか?」
「確定では無いが、窓から見えたのは時計台1つだけだ、それに時間が異なる。今も同じ場所に居て、こうして話してる時点で同じ行動取るか微妙だ」
「確証では無いのか……ううむ」
ケイサツは最速詰んでるこの盤面で、頭を働かせ続ける。
「他に情報は?」
「すまねえ、大きな事はそんだけだ。何せ初めてのループだったし半信半疑だったんだよ。他の6人とも一言二言ぐらいしか喋ってねえ、王様はスナイパーの存在知ってたみたいだが、隠してた。どういうことだ……」
なるほどと頷くケイサツ、どうやら現状整理の情報は出揃ったようだ。
とは言え、こちら側に出来る事は少ない。まだ手札が揃っていないか、情報が足りていない。
幸いなのは、相手スナイパーにこの情報がまた知られていない。こちらの王城に同じ銃を持った自衛隊が召喚された事が知られていない事だ。
おっさんが手詰まりか……、と諦めかけた瞬間。
「あのお~」
〈7人目の冒険者オタク〉、VRMMO実況配信掲示板オタクくんがループおっさんに話しかけてきた。
「対スナイパー対策なら。チャットG〇Tに聞いてみたらよくね? 調べよっか?」
オタクの手には、携帯型タブレット端末が握られている。どうやら充電は不要らしい。流石異世界。
「え、……まさかお前そのタブレット現実世界のネットと繋がってるのか?」
「え、あ、うん。調べるだけね、人に対してメッセージは送れなかった、あと解ってると思うけど配信も出来るよ、余談だけど〈6人目の冒険者アクヤク〉悪役令嬢錬金商人との電話も出来た」
と言うことで、オタクくんに。チャットG〇Tでロボット的な回答を待つ前に。
オタクから1つ要求される。
「えっと、入力する重要事項をまとめて教えくれない?」
ループが単的に答えた。
①ここは異世界、ハイファンタジーの世界。
②敵はスナイパー、対人狙撃銃M24SWS、有効射程800M。
③味方はケイサツ、拳銃は自衛隊用9mm、SFP9、有効射程50M。
④相手はループの情報により、スナイパーはこちらに自衛隊ケイサツが居ることをまだ知らない。
⑤スナイパーの位置は王城の窓から時計塔が見えてそこから狙っている可能性大。
⑥現在、呪術師の窓の無い部屋に居るので現在は安全だが、いつまで持つか解らない。
⑦王様が何かスナイパーの情報を知っているが教えてくれない。
「こんな所だな……」
ループがオタクに、検索内容を提示する。
「ザックリ回答言うぞ、かなり危険だという事は頭に入れてね」
①ケイサツとの連携を重視する。
②時計塔の周辺を重点的に監視する。
③窓の無い部屋に留まり。スナイパーの狙撃対象を困難化する。
④王様からの情報を得られるよう、ケイサツや他の味方との連携。
⑤スナイパーの銃器を無力化する方法を模索する。
⑥スナイパーの位置が特定され、安全な距離にいることが確認されたら、ケイサツと連携してスナイパーを排除するプランを実行しましょう。
〈5人目の冒険者バケモノ〉化物ギルドの受付嬢、がオタクに聞く。
「銃器を無力化する方法を模索、ってどういうこと?」
「じゃ、ジャミングみたいな感じじゃね?」
ジャミングとは、通信のための電波を、電波によって妨害することである。
無制限銃乱射出来る状態で、それが通じるのかは疑問だが、もしかしたらそんな魔法が1つや2つあるかもしれない。
ケイサツがそれぞれに指示を出す。
「とりあえず、テンセイとバケモノとアクヤクは窓の無いこの部屋で身の安全の確保を、ループと俺とバクゴウとオタクは王様と作戦会議だ」
そう、王様から情報を聞き出さねばこの話は何も進展しないのだ。その意味では、〈この部屋から出ない〉というオタクの検索力はナイスアイディアだった。
ループからしたらこの部屋から出て、全員で散策を開始して。ジ・エンドだったかもしれない……。
4人は王様のところへと聞き込み調査を開始した……。