第2話「7人の冒険者」
まずおっさんが気にしたのは土地勘だ。
王城の外はどうなっているのか? 荒れ地か豊かか、それにより食料の有り無しが変わってくるからだ。
……結論から言うと、ちょっと豊かな王城という感じで、今すぐ餓死や食料で困るという事は無さそうだった。
とはいえ、こんな所にいきなり異世界召喚されて、いつご飯にありつけるか解ったものじゃ無い、用心に用心を重ね、ループは王城内になる食料用のパンを食べるのだった、ついでにトイレの場所とかの把握もした。
外の情報も気になるが、まずは王城内の情報だ。
テト歴108年4月1日14時30分。
〈1人目の冒険者ループ〉が異世界召喚されてから2時間後。
〈2人目の冒険者テンセイ〉、TS美少女転生。
〈3人目の冒険者ケイサツ〉、元自衛隊サバイバル。
〈4人目の冒険者バクゴウ〉、ロマン爆轟魔術師。
〈5人目の冒険者バケモノ〉、化物ギルドの受付嬢。
〈6人目の冒険者アクヤク〉、悪役令嬢錬金商人。
〈7人目の冒険者オタク〉、VRMMO実況配信掲示板オタク。
が順番に異世界召喚されるのをおっさんループは見守った。
6人でザワザワと何やら話をしている。が、おっさんはその会話の輪の中には入らない。人間観察である。
30代特有の頭の回転を働かせる。
敵になるか味方になるかは解らないが、とにかくおっさんは1日1回だけループ出来ることが神様によって確定保証されている。
何も起きなければそのまま次の日を迎えれば良いが……。
何が引き金になってヤバイルートに入っるのかが解らない。
とどの所、彼にとっては情報が鍵となるのだ。
よって共に戦う仲間の情報を最初早々から得たいという願望から、7人全員の召喚を〈待つ〉事にしたのだ。
王様が言う7人に対して言う。
「さて、積る話もあるじゃろうが。まずお主らギルドチームの名を決めよう。ズバリ! ギルド『7人の冒険者』じゃ! 今後は7人のチームで冒険に挑むように」
そもそもこの王様の目的は何なんだ? おっさんは、無口に言う通りにしているがこれには理由がある。下手な地雷を踏んで食料とおさらばしたくないからだ。兵隊に頼んで見せて貰ったが、この世界の通貨は〈円〉では無かった。
つまり現在、無一文で王様とテトに嫌われたら生きるための食料補給機関が無くなる……それは避けたい。
ので、まだあまり素性も知れない残り6人とも、仲良く社交的にしようと思っている……まぁ、相手がその気ならばの話だが……。
幸い時間はある、ゆっくり一人づつ各々の事情を聞いていこうとおっさんは思った。
『そう固い表情しなさんなよ! 死に戻りじゃ無いんだからさ~』
そういうのは遊戯の神様テトだった。
「……じゃあ質問1。俺自身の情報をもっともらおう、テトが見えるのは俺以外は王様の2人だけって認識で良いのか? 7人の冒険者中6名も含めて?」
『そうだね、王様は王族、神々の眷属としての血縁が脈々と受け継がれているから見えるんだ』
ということは、王族と血縁関係の人物だとテトは見える訳だ。
「質問2、俺は両手に何も持ってない手ぶらだが。武器とか持っても良いんだよな? 護身用の剣とか」
『問題無いよ、あ、でも副業は皆選べるから、そこは色々制限あるかも』
「副業? 何だそりゃ? サブジョブみたいなものか?」
『うん、そんな感じ~今度話すよ~』
頭に直接語りかけるような響きに、ループはまだ慣れない……。
出来れば今話して欲しいが、別にタイムリミットとかそんなのがあるわけでもない。ここは従っておこう。
「質問3、1日限定ループは過去に使った事がある人間は居るか?」
『いたよ、でもこの世界にはいない。何人かにチャレンジしてもらったんだけど、結局制御が難しくって、制限かけまくって今の形に落ち着いたかな。1日複数回のループは人間には精神的にキツかったみたい』
そりゃそうだ、人間はそこまで頭が良くないからな。何となくで選んだ人間じゃ何かあったら精神が持たないだろう。
と言うところで、7人全員は。王様からお食事会に招待された。
「さて、これで7人との交流会へと洒落込みますか」
まだ、合計7人のポテンシャルや性格が解らない、良い奴なのか悪い奴なのか。
それはこれから始まるお食事会で解る、……と思う。
テト歴108年4月1日15時00分。
〈1人目の冒険者ループ〉の場合。
「俺はループ。30代のただのおっさんだ、ただし1日1回1度きりのループ能力持ち。話を続けてくれ。俺はお前らの情報をもっと知りたい」
〈2人目の冒険者テンセイ〉の場合。
「私の名はテンセイ、現実世界の地球で男ニートやっていたが事故死、その後なぜか美少女に転生した形で異世界召喚された、心は男、体は美少女だ。以上!」
〈3人目の冒険者ケイサツ〉の場合。
「私の名はケイサツ、元自衛隊の兵隊だ。日本国、米国、韓国との合同演習中に異世界召喚された。……それと、さっき王城の庭で試したんだが。拳銃の弾の数が無制限になっている、マズイモンスターとか出たら俺に言ってくれ、小型や中型のモンスターまでなら力になれるだろう」
〈4人目の冒険者バクゴウ〉の場合。
「逆に私は超大型のモンスターに対して超弩級の爆轟魔法を使えますね! 詳細はまだ不明ですが空爆をやるレベルの力にはなれると思います!」
〈5人目の冒険者バケモノ〉の場合。
「私は受付嬢を前からやってたから、それで生計を立てるつもりです。何かあったらギルド広場まで来て下さい、事務処理ならお手の物ですので、ので」
〈6人目の冒険者アクヤク〉の場合。
「私は悪役になった覚えはありませんが、貴金属の錬金術や物々交換の商業をやろうと思っております、故に邪魔しないで下さいまし」
〈7人目の冒険者オタク〉の場合。
「お、俺オタク。スマホは何故か現実世界で配信可能で、ネットも使いたい放題、掲示板も使えるし。充電しなくても良い。現代知識が欲しかったら俺に言ってくれ、すぐにググれるから~、生放送もお手の物!」
ループは3時の食事を食べながら思った。
(おおっと……? 中々に濃ゆいメンツが集まっているぞ……?)