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3.小テスト

 背中を突かれて、克巳は後ろを振り返った。


「ねえねえかっつん。小テストどうだった?」


 自分なんぞを人気者の女子があだ名で呼ぶだなんて半ば疑っていた。しかし実際に親しげに克巳を呼ぶ渚に、これが実行力のある陽キャなのかと彼は戦慄した。


「えっと……こんな感じ、だけど」


 つい先ほど行われた小テストを見せる。十問中八問正解した克巳。抜き打ちだったこともあり、まあまあの出来と言えた。


「かっつん間違えてるんだねー。ねえ、私がわかんなかったとこ教えてあげよっか?」

「教えるって……」


 そもそも人に教えられるほどにできているのか? 克巳の疑わしげな眼差しに気づいたわけではないのだろうが、渚は自信に満ちた顔で答案を見せてきた。


「え……」

「あー、何よかっつん。私が満点取れるだなんて嘘みたいって顔しちゃってさ」


 渚の言葉通り、彼女は小テストとはいえ満点だった。

 失礼ながら渚が勉強できないと思っていた克巳だった。陽キャはあまり勉強をしないのだろうと勝手に思い込んでいた。完全に偏見である。


「あ、いや、ごめんなさい……」

「ふふっ。別にいいよー。かっつんが驚くところが見れて面白かったし」


 楽しそうに笑う渚。彼女に対して勝手な思い込みをしていたことに克巳は反省する。


「で? 満点の私が教えましょうか? これでも教え方が上手だって好評なんだよねー」


 冗談っぽく胸を張る渚に、克巳は頭を下げた。


「教えてもらえると助かります」

「よろしい。この私に任せなさい」


 渚は後ろの席から身を乗り出して克巳が間違えた部分を説明してくれる。接近してきた可愛らしい顔にドキドキするのを無視して、克巳は勉強に集中した。


「ここはこの公式を使って……」


 耳元で渚の声が響く。克巳は気合いで勉強に集中した。全力で集中すれば煩悩に打ち勝てることを知った。


「なるほど。あっ、解けた」


 渚の教え方は自分で言うだけあって上手かった。おかげで克巳はわからなかったところもすぐ理解することができた。


「ありがとう篠原さん。わかりやすくて助かったよ」

「どういたしまして。私って数学は得意なんだよねー」

「そうなんだ」


 教え方から渚がどれほど勉強ができるかが伝わってきた。人に教えるのも勉強、と聞いたことのあった克巳だったが、確かに問題を理解しているからこそ教えられるのだろうと思えた。


「すごくわかりやすかった。篠原さんは教師に向いているのかもしれないね」

「それ言いすぎー」


 と、言いながらも満更ではない様子の渚だった。


「か、かっつんが良かったらさ……」

「うん?」

「また勉強を見てあげるよ」


 人懐っこい笑顔に克巳は目を細める。

 ぼっちの自分にも優しくしてくれる。こういう分け隔てのない優しさが、彼女が人気者である理由の一つなのだろうと克巳は思った。


「ありがとう。その時がきたらまたよろしくお願いします」

「なんで敬語なのよー」

「そういう空気かと」


 渚が楽しそうに笑うと、克巳もつられるように笑顔になっていた。



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