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今回は切りの良い所までで少し短めです。

次話から本格的にエピソードが始まります!

家を出ると空はすっかり朱色に染まっていた。幼馴染だと知ったからだろうか、なんとなく前にも二人でこんな空を見たことがある気がする。


「家ってこの近く?」


家を出た頃にはすっかり柏木さんとの会話も幼馴染らしい雰囲気になっていた。


「うん、親が海外に転勤になってこの近くで一人暮らしすることになったの」

「そりゃ大変そうだな」


それにしても、高校生で親と離れ一人暮らしというのはさぞ大変だろう。親に寄生し自堕落な生活をしている俺の想像を遥かに上回る苦労があるんだろうなと感心しているとふと疑問が浮かんだ。

親が海外へ転勤になっただけならわざわざ高校を変える必要は無いんじゃないか?

転校なんて面倒な事はせず、そのまま実家にいればいい気もするが。


「というか、わざわざ転校してきたのには理由でもあんの?」

「うん、……一応ね」


歯切れ悪く短くそう答えた。家庭の事情なんて人それぞれだしまずい事聞いたかもな。というか俺にはそれ以外にも反省するべき所があるし。反省する事ばっかりでほんと猿の調教師に反省の芸でも仕込んでもらった方が良いかもな。猿よりは上手に芸をする自信があるぞ。


数秒の沈黙の後、勇気を振り絞り切り出した。


「あのさ、俺、全然柏木さんの事覚えてなくてそれに関してはほんとごめん」

「それは確かにショックだったかも。てか、そんなにはっきり言うかな〜」


柏木さんは腕を組みふんっとそっぽを向く。


「やっぱり……」


これは怒られても仕方ない。実際人の事忘れるなんてかなり失礼な事だと自分でも思う。小学生の頃なんか家に消しゴムを忘れただけで先生にはそこそこ怒られたもんだ。人の事を忘れるなんてとんでもない重罪なんだろう。


「でもお願いを一つ聞いてくれたら許してあげてもいいよ」


柏木さんは顔の横にぴんと人差し指を立て悪戯な笑顔を浮かべた。


「お願い?俺が出来る事ならするけど金ならないぞ?」


思いがけない提案に対し俺はそう答えた。


「ふふっ、そんな事じゃないよ。というか宗太は私にどんなイメージを抱いてんのよ。そうじゃなくて私の事呼ぶときは柏木さんじゃなくて昔みたいに名前で呼んでくれたら許してあげる」

「えっ?そんな事?」


意外なお願いに呆気に取られた。というか、昔は名前で呼んでたのね、マジで覚えてないわ……。プレイボーイ時代の俺。


「私にとってはそんな事でも大事なの」

「分かったよ。今度から名前で呼ぶよ」

「今、練習で呼んでみてよ。ほ、ほら、練習しとかないとまた咄嗟に柏木さんて呼んじゃうかもしれないし」


何故か慌てた様子で理由を説明する柏木さん。

従う必要なんか全く無いのだろうが、しかし真っ直ぐ大きな瞳にお願いされると思わず首を縦に振ってしまう。


「分かったよ」


俺は軽く喉を鳴らして緊張を払うようにしてから


「さ、彩加さん」

「昔はちゃんだったよ」


勇気を振り絞った俺の言葉はあっさりと過去の自分との違いを指摘される。


「……さ、彩加ちゃん」

「ふふ、宗太ありがとう」


なんとか言われた通り呟くと彩加ちゃんは俺が今日見た中で一番眩しい笑顔で返事をした。転校の挨拶の時より、クラスメイトと会話をしている時よりそれは一層明るい笑顔だった。

そんな無邪気な彩加ちゃんを見ると沈んでいく夕日のように自分の顔が赤くなるのを感じた。

最後まで読んで頂きありがとうございます!


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